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2/12 【植田和男氏次期日銀総裁へ】

●日銀次期総裁は植田和男氏へ

2/10(金)に複数の報道機関は日銀次期総裁に植田和男氏を起用すると報道した。政府は日銀の人事案について、2/14(火)に国会へ提出し国会の同意後に内閣が任命を行う。また副総裁候補には、氷見野良三前金融庁長官、内田真一日銀理事の起用が併せて報じられた。

日銀総裁は従来日銀もしくは財務省出身者で占められてきており、学者出身の総裁となれば史上初。ただし、世界的に見ればFRBのバーナンキ元議長やイェレン前議長、ECBのドラギ元総裁など学者出身の中銀総裁は少なくない。

植田氏は1998年4月から7年間、日銀審議委員を務めており2000年における速水総裁(当時)がゼロ金利政策解除を行った際には反対票を投じた。

また2022年7月には、日経新聞に「日本、拙速な引締め避けよ」との記事を寄稿し、インフレ率2%の持続的な達成には程遠いと指摘したうえで、円安回避のための利上げは景気悪化を招くとの見方を示した。

日銀次期総裁については、従来から雨宮現副総裁もしくは中曽元副総裁が有力とする見方が有力で植田氏の起用はサプライズとなった形。

市場関係者は、「これまでのクリエイティブな金融緩和に強く否定的なわけでもないだろう。人選としては極めてニュートラルだと見ている」(シティグループ証券高島氏)との声や「それほど金融緩和に否定的だとは言い切れない」(大和証券末広氏)と見る。

●副総裁は日銀理事の内田氏と、元金融庁長官の氷見野氏

植田氏を副総裁として支える副総裁は、日銀理事の内田氏及び元金融庁長官の氷見野氏と報じられている。

内田氏は黒田総裁の下でも企画局長や理事として政策の立案に関わっており、近年の金融政策をリードしてきた人物だ。また氷見野氏は財務省出身で、2016年から4年間国際金融審議官として金融規制などグローバルな場で活躍してきた。また2020-2021年には金融庁長官を務めている。

2人の新たな副総裁を含めたバランスの取れた布陣からは、政策の継続性と市場の安定確保を図りつつ、過度な緩和策からの修正を慎重に進めたい岸田政権の意図が感じられる。

(出所:Bloomberg)

●日銀 今後の注目点

植田氏総裁就任後にまず注目されるのは2月下旬(予定)の所信聴取だ。物価安定目標や財政政策との関係を含む政策スタンスに加えて、黒田総裁体制との違いを探ることになる。

モルガン・スタンレーMUFG証券の山口氏は、「2023年中に短期政策金利の利上げサイクルに日銀が入ることはないが、YCCの修正・撤廃はあり得る」とみる。

また政府と日銀の共同声明の行方にも関心が集まる。2/10、鈴木財務相は共同声明の取り扱いについて、次期日銀総裁と「議論する必要がある」との考えを示した。但し「共同声明の見直しについて具体的に申し上げることは、今の時点では少し早過ぎる」と語った。

黒田体制下の大規模緩和に関与していない植田氏がかじ取りを担うことで、金融政策の点検や検証に対するハードルが下がる可能性もある。新体制で初めて臨む4/27~28の金融政策決定会合は、近年にないほどの高い注目が世界中から集まるだろう。

●FRB高官発言 タカ・ハト入り混じる

2/7にワシントン経済クラブの対談イベントに登壇したFRBパウエル議長は、先週発表された1月雇用統計について「誰も想定していない強さだった」と振り返った。またパウエル氏は「ディスインフレのプロセスは始まっているが、先はまだ長い」と指摘。

全体的にパウエル氏の発言は、想定より金融引締めに対してタカ派ではないと受け止められたことから、堅調な1月の米雇用統計を受けてFRBが金融引き締めを継続するとの観測が後退し、主要株価指数は上昇した。

ウィリアムズニューヨーク連銀総裁は、2/9にニューヨークで開催された米紙ウォールストリート・ジャーナルのイベントで、「需給バランスを取り戻し、インフレを低下させるために今年すべき行動という点で、依然非常に妥当な見解に思われる」と述べた。

ターミナルレートは5~5.25%が妥当で、今後の利上げ幅については0.25%が当面の最良の選択肢とした。ここ数週間、FRB高官から読み解くターミナルレートは5.00~5.25%であったものの、市場はそれよりやや低い水準でみており乖離があった。

ウィリアムズ総裁の上記発言に加えて、カシュカリミネアポリス連銀総裁も「金利は5%を超えて上昇し、さらに上昇する可能性がある」や「長い間金利を維持する」と発言。ターミナルレートにおける市場とFRBの認識相違について、市場がようやく5%を織り込んだ形。

(市場の政策金利見通し、出所:CME Fed Watch)



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