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テクパンの私的博物誌

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自然や様々な生物に関するお話
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#エッセイ

ベンジャミン・フランクリンに嫌われた鳥

ベンジャミン・フランクリンに嫌われた鳥

【国鳥】と言う概念がある。文字通り、その国を象徴する鳥の事である。
例を列挙すると、日本の国鳥はニホンキジ、中国の国鳥はタンチョウヅル、インドの国鳥はインドクジャク、スリランカ(セイロン)の国鳥はセイロンヤケイ、フランスの国鳥は(家禽の)ニワトリ、南アフリカ共和国の国鳥はハゴロモヅル、グァテマラの国鳥はケツアール(カザリキヌバネドリ)、トリニダード・トバゴの国鳥はショウジョウトキ、ニュージーランド

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ゾンビサーモン

ゾンビサーモン

(ヘッダー画像はウィキメディア・コモンズより。種類はベニザケ)

敢えて引用は避けるが、今年の2月頃にXでとあるポストが炎上の種になった。

川を遡上し、産卵を終えて死ぬ間際の鮭(ポスト発信者の言によるとアトランティックサーモン)の写真を紹介したもので、そのポストには【産卵を終え精魂尽き果てた鮭は生きながら様々なウイルスに感染し、徐々に生き腐れになりながら死んで行く。これをゾンビサーモンと言う】と

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動物園行脚の日々

動物園行脚の日々

以前にもカムアウトした事があるのだが、ワタクシは多趣味な人間で、インドアな趣味(クラフト製作、テキスト執筆)の他にもアウトドアな趣味として寺社巡りや動物園巡りを含めたウォーキングを嗜んでいた。

人間は、その一生の内に最低4回は動物園に行く機会がある、と言われる。
幼い頃に親に連れられて1回、若い頃に恋人とのデートに1回、結婚し家族で1回、そして孫を連れて1回。

ワタクシはアセクシュアル故に結婚

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未来の動物園

未来の動物園

YouTubeで興味深い動画を観た。

最先端の技術を駆使し、電脳世界の"動物"を現実世界に顕現させる試み。VTuberやVChat等、電脳世界を【もうひとつの現実世界】と捉える考え方が巷間に浸透して久しいが、遂に此処まで出来る様になったかと思うと感慨深いものがある。

この技術がもっと一般化し、世界のあちこちで行われるようになったら、恐らく【見世物としての機能しか持たない動物園】はこの世から完全

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並行進化

並行進化

異なった系統の動物が同じ生態的地位についた結果、肉体的特徴に相似が生じる現象を【収斂進化】と言うが、これに類した語で、比較的系統が近い動物が異なった分布域や環境で似たような生態的地位についた結果、肉体的特徴に相似が生じる現象を【並行進化】(または"平行進化"とも表記する)と言う。

一例を挙げると…。
先ず、アフリカに棲むイタチの仲間・ゾリラと、アメリカ大陸に棲むスカンクの仲間が挙げられる。スカン

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放生会

放生会

神社や仏閣で、追善供養の一環として行われる習わしのひとつに【放生会】(ほうしょうえ)と言うものがある。仏閣に構えられた池に魚を放したり、或いは捕らえられていた鳥を野に放つと言った内容である。

日本ではあまり聞かないが、タイ等の東南アジアではかなり盛んなようで、門前に放生会用の鳥が売られて居たりする。

放生会の事を書こうとしたら、うっかり20年程前の記憶を思い出してしまい、本来書こうと思っていた

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クジャクとシチメンチョウ

クジャクとシチメンチョウ

(ヘッダー画像及び文中の画像は全てウィキメディア・コモンズより拝借しました)

沖縄県の石垣島を始め、南西諸島の各地に近頃インドクジャクが定着して問題になっていると言う。
インドクジャクはその名の通り、インドを中心とした東南アジア各地を原産とする大型のキジの仲間である。昔から飼い鳥として名高く、鳥インフルエンザが蔓延する前までは学校で【生きた教材】として飼育される事も多かった。
石垣島のクジャクは

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ワイバーン今昔

ワイバーン今昔

(ヘッダー画像及び文中の画像は全てウィキメディア・コモンズより拝借しました)

近年、ファンタジーの世界にも【リアル指向】の波が押し寄せているらしい。
ドラゴン、グリフィン、ペリュトン(鹿の頭と身体に翼を持つ凶暴なアトランティスの幻獣)と言った、背中に翼を持つ空想上の生き物の復元が従来の【四肢+翼】と言ったスタイルから【翼と化した前脚+発達した後脚】と言った風に変わってきているのだ。例外はペガサス

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不死鳥料理

不死鳥料理

(ヘッダー画像及び文中の画像は全てウィキメディア・コモンズより拝借しました)

古代ローマ帝国の第23代皇帝で、セウェルス朝の第3代当主であったヘリオガバルス帝は、異常な程奔放な性生活と様々な内容の過激な逸話で有名な人物である。
本名はウァリウス・アウィトゥス・バッシアヌス。

ヘリオガバルス帝は、ローマ史上は愚か世界史の全てに置いても稀に見る程の、特異で破天荒な為政者であったと言われている。
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優雅な"猛禽"

優雅な"猛禽"

(ヘッダー画像及び文中の画像は全てウィキメディア・コモンズより拝借しました)

goo辞書によると【猛禽】の定義は以下の通りになるそうである。

近年であればこれに更にハヤブサ目が加わる事になるだろう。ハヤブサの仲間はつい最近まではタカ目に含まれていたが、遺伝子的見地から寧ろスズメ目やオウム目に近い鳥だと判り、独自の目を立てられるようになった。以下、タカ目・フクロウ目・ハヤブサ目の鳥の括りには猛禽

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そこのけそこのけオオバン通る

そこのけそこのけオオバン通る

(ヘッダー画像及び文中の画像はウィキメディア・コモンズよりお借りしました)

近頃、近所の船着き場でオオバン(大鷭)の姿を頻繁に見かけるようになった。

オオバンは鳥綱ツル目クイナ科に属する水鳥である。馴染みの無い方の為にその外観を軽く説明すると、全長は32〜40cm、翼開張(翼を広げた端から端までの長さ)が70〜80cmとコールダック位のサイズ感である。頭部や頸部は黒い羽毛、胴体は灰黒色の羽毛で

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北の【ヤマドリ】

北の【ヤマドリ】

北海道と本州以南は、生物相特に哺乳類や鳥類の種類に大幅な相違がある事で知られる。例えば日本に於いてヒグマは北海道にしか棲息しない代わりに、ツキノワグマは本州以南(九州で絶滅した為に南限は四国・中国エリアと言う事になろうか)にしか棲息しない…と言う風に。
【ブラキストン線】と言う概念が存在する。北海道の動物相が寧ろ極北アジアのそれと相似する事を根拠に、津軽海峡を境界線として動物相を隔てるラインが存在

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小さな猛獣

小さな猛獣

(ヘッダー画像はウィキメディア・コモンズより借用)

今泉忠明博士は自著で、イヌの事を【人為的猛獣】と呼んでいる。オオカミの一種を祖先に改良されたイヌは、今や世界のあちこちに存在し、それぞれの地域で野生化して問題になっている。
例えば中国では最近、大型犬のティベタン・マスティフが野生化してブルーシープやヤク等の野生動物にとっての脅威になっているばかりか、同じ生態的地位にあるユキヒョウの生存をも脅か

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都会のカワセミ

都会のカワセミ

我が家の近所に小さな川がある。
川と言っても、生活排水由来の人工的な川であり(昔は大きな川から流れが通じる船着き場だったらしい)、途中で海からの水と交わり半ば汽水と化している。
鳥類保護区を内包する公園の外周を流れる川で、河岸にはそれなりに緑が多い。

いつの頃からか、この人工的な川の淡水域にカワセミが棲むようになった。
カワセミと言う鳥はその美しい緑青色の羽毛から非常に人気が高い鳥であり、バーダ

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