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ごご茶
2022年3月28日 23:21
高校生活最後の文化祭。俺はベタながらお化け屋敷をやりたかった。男子はほとんど俺の味方をしてくれたけど、女子の大半が「メイドカフェをやりたい」と譲らない。「文化祭と言ったらお化け屋敷だろ!」「そんな暗いしキモチワルイの絶対イヤ!」「メイドカフェ、一回くらいやってみたいし!」「そんなもん女子しか盛り上がんねーだろ!」意見は平行線で、出し物は永遠に決まらず、明日、改めて仕切り直すことになっ
2021年9月12日 00:47
編集との打ち合わせが長引いてしまった。深夜、帰り着いた自宅マンションのホールでぼーっとエレベーターを待っていると、後ろから急に声がする。「アンタ、自分の書いた小説の主人公を全部覚えてるか?」 振り返ると、薄汚れた作業着姿の中年男が立っていた。いつの間に現れたのだろう。ヒョロリと背が高く、無精髭の生えた頬はこけ、目だけがやたらギラついている。ジャック・バウアーからガタイの良さを抜き取ったよ
2021年2月6日 23:13
俺は母親の顔を知らない。俺が1歳の時、男と駆け落ちして出て行った。だから俺はずっと親父と祖母の3人暮らしだった。 高校の時、祖母が死んだ。母親代わりに優しく見守ってくれた存在がいなくなったのだ。俺は表向き気丈に振る舞ったが、心中は散々だった。そんな俺を気づかってか、それとも逆に1ミリも気づかっていないからか、ほどなく親父は会社の部下だった若い女と再婚した。 10歳ほどしか歳の変わらぬ新し
2021年1月31日 23:52
僕の町には言い伝えがある。「子供の名前に“子”をつけると、子供好きな露利根山の神様にさらわれる」露利根山ってふざけた名前だけど、本当に町の西側にあるんだよね。ちょっとしたハイキングできるレベルの、しょぼい山。そもそもこの言い伝え自体馬鹿げてると思わない?でも実際、昔々に優子とか正子とかいう名前の子が行方不明になった…って。長老クラスのご老人はみんな口を揃えて言ってる。“名前に子がつ