七尾旅人

シンガーソングライター 公式HP http://tavito.net/

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最近の記事

ご心配をおかけした症状と、今後のライブ演奏について。

いま久しぶりのライブ出演のため兵庫県に向かっています。 体調不良で公演中止となってしまった8月4日以来、なかなか書き込みもできずにいましたが、新幹線の車窓を流れゆく土地土地の姿を見ていて、明日からのことを何か少し書かせて頂けたらと思いました。 子供時代から時々、肋骨の周辺(胸や背中)が痛くなり呼吸が苦しくなることがありましたが、当時は一晩寝れば治っていました。 それが今月は、20日以上続いています。痛みのピークは8月4日からの3日間ほどで、その後は低減しつつも日によって揺

    • 【公演中止のお報せと、お詫び】

      本日8/4のワンマン、自分の体調不良により、開催中止となりました。 背中と肋骨周辺の痛みで動くことができず、肺が近いためか呼吸がままならず、色々な姿勢を試しましたが、どうしても歌詞を1、2文字程度しか発声できません。 昨日まで計画的にコンディションは維持できていたので、なぜ今朝になって、このような状態に陥ってしまったのか、これから診察なども受けながら、省みたいと思います。 Shingo Suzuki、小川翔、山本達久、TAIHEI、瀬尾高志。 素晴らしいバンドメンバーに

      • パレスチナに関する新曲「密航者を壁の向こうへ」

        明日、歌おうと思ってるパレスチナに関する新しい曲「密航者を壁の向こうへ」 春ごろに作って以来、まだステージでは一度しか演奏できていないものです。 苗場では持ち時間が限られているので、この曲に関してMCだけではしっかり説明できないかもしれないため、ここに歌詞を載せておく事にしました。 最終的にバンド編成できちんとレコーディングしたいと思っていて、8月4日リキッドルームでのワンマンでは、メンバーたちと一緒に演奏してみるつもりです。 年明け以来、ライブ現場でたびたび演奏して

        • 難民のユーモアはどんな風だろう? スタンダップ・コメディが可能にする、もう1つの物語。 重度知的障害の白岩次郎にいざなわれ、新しい笑いを知る

          白岩佳子さんから、愛息である次郎くんの誕生会に誘っていただいた。 日頃、表へ出かける用事といえば仕事がほとんど。振り返ってみれば子供時代から、私的な集まりに呼ばれる機会が少なかったため、思いがけない申し出に、静かな喜びがこみあげてきた。 誰が俺に、「誕生会においでよ」と言ってくれた?まったく記憶にない。それ以来、今日に至るまで仕事に人生を賭けてきたが、誕生会、なんという甘美な響きだろうか。 白岩家のちゃぶ台で、嬉しそうな顔をした次郎くんがロウソクの火を吹き消し、バースデイ

        ご心配をおかけした症状と、今後のライブ演奏について。

        • 【公演中止のお報せと、お詫び】

        • パレスチナに関する新曲「密航者を壁の向こうへ」

        • 難民のユーモアはどんな風だろう? スタンダップ・コメディが可能にする、もう1つの物語。 重度知的障害の白岩次郎にいざなわれ、新しい笑いを知る

          サーカスの夜

          ここ7年ほど暮らしてきた、横須賀市の外れ、後期高齢者の世帯がそのほとんどを占める谷戸の集落で、唯一の同世代であったアダチさん。 2軒隣に住むこの陶芸家夫妻のもとに、初めての赤ちゃんがやってくる、ほんの少し前に引っ越して来た我が家は、この子の成長を庭越しにずっと眺めていられる、幸せな時間を過ごした。 小さな男の子の登場は、ゆるやかに減衰し終わりに向かってゆくかのようなこのエリアのお年寄りたちにも、仄かな希望を与えていた。 最初はとても内気で、犬の散歩中などすれ違うたびに挨

          サーカスの夜

          「現代詩手帖 2024.5 特集 パレスチナ詩アンソロジー 抵抗の声を聴く」について。

          「現代詩手帖 2024.5 特集 パレスチナ詩アンソロジー 抵抗の声を聴く」 忙殺されなかなか探しに赴けず歯痒かったけれど、少々プレミアのついた値段でなんとか手に入れた。素晴らしい内容です。 昨年の暮れにイスラエル軍の爆撃によって惜しくも殺されてしまったリフアト・アルアライールの詩と生命が、彼の教え子であるアリア・カッサーブに引き継がれる冒頭から特集の末尾まで、一息もつかずに読み進めた。 出版の世界のことはよく解らないが、重版して頂けたら有難いなと思う。 全国の本屋の書

          「現代詩手帖 2024.5 特集 パレスチナ詩アンソロジー 抵抗の声を聴く」について。

          失明した妹犬が、再び泳ぎ始めるまで。

          昨年の暮れに失明して以来、もういちど安全に散歩を楽しめるようになるためのトレーニングを重ねてきた妹犬だが、散歩どころか、なんとまた海で泳ぐようになった。 信じがたいことだ。 この子は泳ぎが得意で、海中から生きた魚を捕まえて来てしまう俊敏な犬だったが、急性の網膜変性症によって一夜にして光を失ってからは、普通に歩行するのもやっとだったのだ。 年齢的にもけして若くはない。 最初のうちは、長年のあいだ無意識に行ってきた歩き方の癖が抜けず、慣れ親しんできたはずの散歩道も、思わぬ危険

          失明した妹犬が、再び泳ぎ始めるまで。

          2024.5.18「不可視の道をあらわにすること」 友部正人、ギリヤーク尼ヶ崎、相羽崇巨の大道

          5月18日、横浜市の六角橋商店街で1997年から定期開催されているという異色の投げ銭イベント、ドッキリヤミ市場へ。 『大道芸人』という名曲がある友部正人さんが、齢93歳にして現役を貫く伝説の大道芸人、ギリヤーク尼ヶ崎さんと共演する。 3月に石巻でご一緒した際、友部さんの公私に渡るパートナーであるユミさんからお誘い頂き、必ず観に伺おうと決めていた。 早めに自宅を出たつもりだったが、横浜横須賀道路が珍しく渋滞していて少し焦った。会場がスーパー裏手の駐車場であるという子供同士の

          2024.5.18「不可視の道をあらわにすること」 友部正人、ギリヤーク尼ヶ崎、相羽崇巨の大道

          失明した妹犬を連れて、視覚の専門医のもとへ。 青い光を探す旅。🐕

          失明した妹犬を連れて、眼科へ。 犬の視覚の専門医のもとで診察を受けて来た。 生まれつき白内障でほとんど目が見えなかった兄犬が、16年ほど前に手術をしてもらった病院だ。 動物の治療費は高くつくものが多いけれど眼科は特に高額で、本来なら100万円ほど必要な手術費用を、当時の院長が半分に抑えてくれたのだと妻から聞いていた。 安定した仕事でなく、その日暮らしに近かった当時の妻がよく他人からとつぜん押し付けられた捨て犬のためにその金を工面したなと思う。 兄犬の手術は成功し、それ

          失明した妹犬を連れて、視覚の専門医のもとへ。 青い光を探す旅。🐕

          妹犬が、失明してしまった。🐕 光を失ってしまったこの子が、これからの我が家のいちばん大きな光になると思った。

          1月26日、妹犬を連れて、F市の獣医大へ。 これまでずっとお世話になって来た町医者の金子先生の紹介で、脳神経学の最前線にいる専門医に診てもらえることになり、3週間ほど予約待ちして、ようやく迎えた日だった。 ベテランの金子先生はいつでも犬目線に立ってくれる優しいおじいちゃん医師で、普通の病院ならそっけなく5分程度の診察で済まされてしまうような軽微な症状でも、細やかに30分くらいかけて説明してくれる。 レコーディングやライブなど複数の仕事で追われている時期には内心で「冗長だな

          妹犬が、失明してしまった。🐕 光を失ってしまったこの子が、これからの我が家のいちばん大きな光になると思った。

          瀬尾夏美 「声の地層: 災禍と痛みを語ること」

          ツアーが終わり、11月に瀬尾夏美さんから届いていた新刊「声の地層: 災禍と痛みを語ること」をようやく読むことができた。 能登半島地震の渦中にある今、ぜひ手に取って頂きたいことと、内容が素晴らしくて140文字では足りないので、微力ながらこちらに書評めいたものを残しておきます。 瀬尾夏美さんとは2011年、東日本大震災の年に、東北で出会った。 彼女は、創作上のパートナーで学校の同級生でもある映像作家の小森はるかさんと二人で、僕の目の前に現れた。 おそらくそれは演奏現場だったと思

          瀬尾夏美 「声の地層: 災禍と痛みを語ること」

          七尾旅人「帰り道」2011.3.11東北__2024.1.1北陸

          七尾旅人「帰り道」2011.3.11東北__2024.1.1北陸 この歌は2011年3月11日に発生した東日本大震災の翌日に、混乱した路上で作曲したものです。その後、東北に通って様々な方とお会いする過程で、主に作詞面での拙さを感じて演奏する機会がなくなっていましたが、今年2024年の年明けに、石川県を中心とする北陸地方を襲った能登半島地震に際して、現地の友人と連絡を取り合っているうちに、もういちど歌ってみたくなり、Long Voyageツアーファイナルの、最後の1曲として演

          七尾旅人「帰り道」2011.3.11東北__2024.1.1北陸

          呼吸器シンガー相羽崇巨くんが遺したオミブレスのライブに参加して。 これまで誰も書きえなかった彼の新曲歌詞「筋ジストロフィー」

          1月14日、名古屋の金山で1971年から愛される老舗喫茶店、ブラジルコーヒーで開催された音楽イベント「オミブレスの逆襲」へ。 12月20日に惜しくも急逝した相羽崇巨くんが遺したバンド、オミブレス(The Omi Breath)のライブ演奏をどうしても見逃したくなくて、高知県須崎市の現場から直行することを決めていたが、バンドの皆さんのご厚意で、僕も最後に1曲参加させて頂けることになっていた。 舞台のセンターには、相羽くんが生前愛用した電動車椅子が配置されると聞いていたが、介

          呼吸器シンガー相羽崇巨くんが遺したオミブレスのライブに参加して。 これまで誰も書きえなかった彼の新曲歌詞「筋ジストロフィー」

          呼吸器シンガー、相羽崇巨くんとの、これから。

          筋ジストロフィーの詩人、呼吸器シンガー、相羽崇巨くんが12月20日に、29歳で逝去されました。 元々は朗読詩人だった彼との出会いは、2019年、愛知県の岡崎で開催されたフェス会場。 演奏中、客席に、とても目を引く青年を見つけました。電動車椅子に身体を預け、呼吸器によって命を繋ぎながらも、誰より瞳を輝かせ音楽を楽しむその姿に惹かれて声をかけて以来、彼は僕にとってかけがえのない友達になりました。 彼の素晴らしい詩と朗読のパフォーマンスに心を揺さぶられ、「相羽くん、歌も作って

          呼吸器シンガー、相羽崇巨くんとの、これから。

          君がいなくなった世界で

          青葉市子とのライブを終えた。市子には特別思い入れがあって、実の妹のような存在です。 本音でやりとりできる。 なので、昨夜、作ったばかりの曲なんかも演奏した。 大事な友人が急逝して、4日たった。 ホテルでなかなか寝付けず、ギターを抱えていると、クリスマスソングのようなものが出来た。 亡くなった友人に、そしてパレスチナの人々に捧げた曲です。 作曲時にスマホで録った簡易なボイスメモですが、今夜のライブに来られなかった方へ、贈ります。今年もありがとう。良いクリスマスを。

          君がいなくなった世界で

          パレスチナについての新曲「Two Palestinians」

          パレスチナについての新曲「Two Palestinians」を、先月から少しずつ書き進めて来ましたが、12/24のライブか1/8の横浜ワンマンで初演奏できそうなので、ここに歌詞だけ掲載しておきます。 イスラエルの攻撃はどんどんエスカレートし、2万5千人を超える死者が出ています。報復の域を遥かに超えて、病院や国連関連の避難施設に爆弾の雨を降らせ、事前申告のうえ指示に従って救援活動を行なっていた国境なき医師団の車列や、自国の人質までも攻撃し、殺しています。 ガザだけでなく、ヨル

          パレスチナについての新曲「Two Palestinians」