「えっ?」 「その、先生はどうして源氏物語を書いたのですか?」 「そうねえ」 紫式部は持っていた筆を止めてしばし考え込んだ。 「まあ、色々あるけど、やっぱり、旦那さ…
一 前夜 赤江環(たまき)は、廊下を歩いていた。下を向いてのろのろと進む環の背中を、後から来た児童数人が追い越してゆく。 双馬藩立児童養護施設「双善園」の…
鋼鉄天使 一 深夜。カリーネウ軍は拠点としているカルミウス製鉄所から密かに出撃した。前方に広がる集合住宅の群れの彼方には、シアスール軍が陣取っている。今は暗…
Tatsuya
2024年5月5日 20:36
2024年5月2日 16:53
2024年5月2日 16:52
2024年5月2日 16:51
2024年2月26日 11:43
2024年1月7日 13:50
「えっ?」「その、先生はどうして源氏物語を書いたのですか?」「そうねえ」紫式部は持っていた筆を止めてしばし考え込んだ。「まあ、色々あるけど、やっぱり、旦那さんが死んじゃったからかな。」「え」飲み込めない弟子が紫式部を覗き込む。「ん、まあ、話せば長くなるけどね。私のひいお爺さん、結構偉い人だったんよ。学者肌でね。で、だいぶ羽ぶりが良くて、要するにお金持ちだったわけ。でもね、おじいちゃん
2023年11月6日 22:06
一 前夜 赤江環(たまき)は、廊下を歩いていた。下を向いてのろのろと進む環の背中を、後から来た児童数人が追い越してゆく。 双馬藩立児童養護施設「双善園」の大食堂に児童生徒たちが三々五々、集まってくる。列に並び、上面がざらついた茶色の合成樹脂製トレーを取って、厨房の窓口から配膳を受ける。環も列に加わり、順番を待った。 五月。暦が変わって、日が浅い。園庭の木々の間からこぼれる陽光は、心を
2023年10月8日 00:59
2023年9月21日 16:58
2023年6月8日 23:43
2023年5月4日 11:47
2023年5月4日 11:40
鋼鉄天使一 深夜。カリーネウ軍は拠点としているカルミウス製鉄所から密かに出撃した。前方に広がる集合住宅の群れの彼方には、シアスール軍が陣取っている。今は暗闇で見えないが、昼間になれば炎に焼かれ、穴が空き、外壁が崩れた住宅たちがその骸のような姿を晒す。それが果てもなく続く。死の街。色が消え、骸骨のようになった街。焼けて煤けた、単色の、灰色の街。夜の闇は束の間、その遺骸に覆いを掛けてくれる。
2022年9月12日 18:31
2022年9月5日 23:31
2022年8月18日 17:38
2020年10月5日 22:11