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「会いに行ける」が価値になる

column vol.654

コロナ禍で人の交流が制限される日々が続きましたが、最近は新たな交流が生まれてきていると実感します。

その一つが「ワーケーション」でしょう。

今までは「行きたい土地」という「場所」にスポットが当たっていましたが、最近は「会いたい人に会いに行く」という「人」にも注目が集まっています。

そこで、ワーケーションのみならず、新しい交流の生まれ方をテーマに本日はお話しさせていただきたいと思います。

旅先の交流から新しい仕事が生まれる

人と人を繋がる旅の形を提供する定額の多拠点居住サービスがあります。

その名は「ADDress(アドレス)」

〈日経ビジネス / 2022年4月21日〉

ADDressが運営する宿泊先には「家守」と呼ばれる管理人が存在。

施設の清潔さを保ち、滞在者に居心地のよさを提供することはもちろんのこと、滞在者と地域の人を繋げるパイプ役としてのコミュニティマネージャーという役割を担っています。

そして、このコミュニティマネージャーを通じて生まれた交流を通して新しい仕事が生まれているのです。

例えば、山梨県北杜市にある清里の家では、会員である映像作家が地元の自然ガイドと出会い、ガイドの映像制作の仕事を受注。

新潟県十日町の家では、企業のCSR(社会的責任)のコンサルティングを本業としている会社員女性が、宿泊客地域住民を対象に「SDGs勉強会」を開催しているようです。

つまり、新しい出会いが新しいビジネスチャンスに繋がっている

それを上手に仕掛けてくれるコミュニティマネージャーがいたら、確かに会いに行きたくなりますね。

また、本業じゃなくても、自分にふさわしい副業を見つける機会にもなります。

京都のゲストハウス「FUJITAYA BnB」では、とある男性が「豆から挽いて淹れるコーヒーを他のゲストに振る舞うのが好きなんです」と話したところ『コーヒーの淹れ方の講習会』を依頼されたとのこと。

今では全国で講習会のみならず喫茶イベントも開催するようになったそうです。

このきっかけをつくったのも、同ゲストハウスのオーナー

今後、ワーケーション先の重要な差別力は場所ではなく、仕事を繋いでくれる「コミュニティマネージャー」になるような気がしますね。

「関係人口」を超えた「共創人口」

ワーケーションを入口にその土地との関係が深まり、持続されると、その人は「関係人口」となっていきます。

関係人口とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。

その土地に関わる人が増えることで地域が活性化される。

人口減少に頭を抱える地方の町ほど、それを望む声は大きいでしょう。

この課題解決に向け、好事例の一つに挙げたいのが長野県辰野町です。

同町では、民泊サイトの「Airbnb」とパートナーシップを締結。

空き家バンクと連携した「空き家・古民家リノベーション事業」による宿泊施設の開業、同町が進める「たつのWORK TRIP」との協業による企業移転ワーケーションの誘致を進めています。

〈トラベルボイス / 2022年4月29日〉

双方で補助金を設定しており、空き家再生による宿泊施設開業では3件企業移転などでは4件が採択。

人口1万8000人あまりの辰野町で本格的な活動を始めています。

例えば、東京調布市に本社を置く空間デザイン会社「ファーストアイデアジャパン」では、空間デザイン空き家アートを組み合わせる企画を考案。

アーティストに空き家をアトリエとして提供し、町全体でアーティストを応援する仕組みを作り、ここで制作されたアートを世界に発信していくというのが、同社社長の内山敏琪さんの夢です。

この新鮮な考え方精力的な活動「共創人口」という新たな概念を生み出し、地方創生の可能性を広げているのです。

オンラインからリアルに変わった商店街

最後は小売業の話題から。

「アーケードトーキョー」というユニークなオンライン商店街に注目が集まっています。

〈日刊ゲンダイDIGITAL / 2022年5月2日〉

〈アーケードトーキョーWebサイト〉

人と人が積極的に対面で交われない時代、「この状況を楽しんでいこう」と飲食店経営者らが参画し、2020年9月に開設しました。

同プロジェクトは東京・中野を中心に日本酒バルなどを経営する「青二才」と、イベント企画やコンサルティングなどを手掛ける会社など3社で運営。

単なるネットショップの集まりでなく、空間や距離を超えて店同士、客同士の感性が交わり、“コト”を起こす活動を目指しています。

「青二才」では全国の酒蔵とのネットワークを生かし、旅行気分を楽しめる日本酒と食品が毎月届く「酒ツーリズム」を提供。

自由に旅ができないコロナ禍で評判になりました。

ここまでならよくある話なのですが、このアーケードトーキョーは今年4月、東京・中野に実店舗の旗艦店をオープンしたのです。

それも中野駅や新井薬師前駅近くにある「薬師あいロード商店街」という地元で愛される“リアル商店街”の一角に出店。

ウィズコロナが定着したとはいえ、まだまだ自粛ムードが残る中、それでも実店舗に挑戦した理由を同プロジェクトのプロデューサー・佐々木晋さんはこのように語ります。

「外食の機会はどうしても減っています。ならば限られた機会をより楽しんでもらえるよう、他にはない体験ができる場にしたい」

この言葉を聞いて非常に気持ちが奮い立ちました。

やはり、人が人と触れ合って、喜びだったり、楽しさが広がっていき、人生が豊かになっていく

幸せの源泉は人にある。

やはり、コロナがあっても負けずに交流を生み出していくことが大切だなと思う本日の事例記事でした。

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