「アート」がもたらす新しい価値
column vol.450
コロナ禍での密かな楽しみの1つがアート鑑賞になっていますが、カナダやベルギーで行われている「美術館鑑賞セラピー」に注目が集まっています。
〈NewSphere / 2021年10月6日〉
医師がアートを処方するという制度は、カナダのケベック州ではすでに2018年から開始されており、ベルギーの首都ブリュッセル市でも医師が「無料美術館鑑賞」を処方していくようです。
これは、パンデミックによって低迷しがちなアートに光を当てるとともに、心身をともにケアする医療を目指す狙いがあるそうです。
芸術が与える心身の健康
「芸術は心身の健康に有益だ」と考えるウーバ副市長は、自らが理事を務めるブルーグマン病院の精神科と、文化担当市会議員として責任を負う市内5つの美術館を提携させ、まず試験的に数ヵ月間、美術館見学を治療に取り込むことに決めました。
美術鑑賞を処方された患者は、付き添い人とともに無料で提携先美術館を見学できます。
先んじるカナダのケベック州では、概ねポジティブなフィードバックがあるそうで、患者1人につき、大人1人子供2人までの同伴者が認められることもあり、美術作品を通して育まれるコミュニケーションや、感動の共有がセラピー効果を生み出しているようです。
これまでアートセラピーといえば、自らがクリエイティブワークをすることで得られていましたが、鑑賞するだけでも一定の効果が見られるとのこと。
この受け身なアートの関わり方が心身に好影響をもたらすことは、世界保健機関(WHO)も認めています。
実際、ヨーロッパの病院やクリニックでは、待合室の壁に絵画を掛け、心を落ち着かせるようなBGMを流しているところが少なくないとのこと。
患者の不安を軽減させ、血圧などを落ち着かせるのに一役買っていることが予想されています。
私の妻はテキスタイルが好きで、家中にテキスタイルアートを散りばめています。
確かに観賞植物とともにテレワーク中の癒しになっていると感じます。アートのもたらす可能性はまだまだ掘り下げられそうです。
企業が3Dプリンターでアートに参加
私の主戦場は小売業のマーケティングですが、アートを取り入れている商業施設も多くあります。
その1つが東京ミッドタウンですが、同館では「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」が現在開催されています。
〈美術手帖 / 2021年10月16日〉
「デザインを五感で楽しむ」をコンセプトに、今年で第14回目の開催となりますが、今回のキーワードは「デザインの裏」。
誰もが正解のない問題に向き合わなければならない日々が続く中、様々なデザインコンテンツを通してそのヒントに出会える体験を目指しています。
私が今回紹介したいのが、コチラの作品です。
YKK AP株式会社+鈴木啓太《未来をひらく窓―Gaudi Meets 3D Printing》の展示風景より、手前は「太陽と月の窓」
館内B1階のアトリウムには数々の「窓」が出現。
これは、YKK AP株式会社とデザイナー・鈴木啓太さんが提案し、3Dプリンタによって実現した《未来をひらく窓―Gaudi Meets 3D Printing》です。
スペインの建築家アントニ・ガウディの窓に学び、自然環境と呼応する様々な機能や素材、造形をもった未来の窓のプロトタイプ。
本展では、ガウディの窓に見られる「光」「風」「音」の要素に着目した3つのタイプが展開されています。
例えば、「太陽と月の窓」は、ガウディの「コロニア・グエル教会」の窓で採用した開閉機構から着想を得たもので、窓の透過部は、光の強さに応じて色が変化するそうです。
最近、建物の中で窓が果たす意義を非常に強く感じています。
光の入り方、草木や空の見え方など、窓一つで居住感覚が劇的に変わる。
いつか窓にこだわった家に住んでみたい。ちょっと遠い夢ですが、密かにそんなことを考えています。
ビージネスパーソンに必要な「美意識」の磨き方
企業のアートということで言えば、最近はビジネスパーソンにも「美意識の育成」が必須と言われています。
美意識が創造と革新を生むためのエンジンとなる。
とはいえ、感性は先天的なもので、どう磨いてよいか分からないという声もよく聞かれます。
そこで具体的なトレーニングのメソッドとして有効なのは千利休さんが伝えた「守破離」です。
〈DIAMOND online / 2021年10月2日〉
西陣織の老舗「細尾」12代目経営者の細尾真孝さんの著書、『日本の美意識で世界初に挑む』が先月発売されましたが、美意識は鍛え、育てることができると示唆されています。
その方策が茶道、花道など「道」と名の付くものに示されています。
それが「守破離」なのです。
「学ぶ」は「真似る」から来ていると言われていますが、まずは徹底的に先人の真似をする。
先人が突き詰めていった美意識を身体化することによって、自らの美意識を拡張していく営みと言えます。
そして型ができ定着したら、次は壊し(破)、自分の流儀を作り上げていく(離)。
このプロセスを踏むことで美意識は育まれるとのこと。
私もコピーライター時代は、徹底的に名作コピーを見て紙に写したことを覚えています。
その時の努力が花開いたとは言えませんが、日々の仕事やnoteの執筆に活きていることは実感します。
アートがもたらすことは大きいので、心身の健康のために、クリエイティブな仕事をするために、上手く活用していけたら良いですね。
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