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「事業承継」に光を当てるエトセトラ
column vol.530
落語家、桂文枝さんが、テレビ朝日系トーク番組「新婚さんいらっしゃい!」から勇退されるそうです。
〈サンスポ / 2022年1月8日〉
1971年1月にスタートし、3月27日の放送回までで何と…51年2ヵ月…。私の人生よりも長く同番組で司会を務めてこられました。
しかし、78歳の年齢に鑑みて、残念ながらの卒業となりました。
この記事を読んで、日本の「事業承継」について想いを馳せました。
2020年には国内約94万社を対象にした調査で、社長の平均年齢が初めて60歳を超えており、ご存知の通りこの問題は年々深刻化しております。
ということで本日は「事業承継」について光はないか?そんなことを探っていきたいと思います。
6割が黒字会社…でも廃業しないといけない日本
中小企業庁の『事業承継マニュアル』によれば、廃業を予定している中小企業のうち、約3割は廃業の理由に「後継者の確保が難しい」を挙げています。
〈幻冬舎 GOLD ONLINE / 2021年12月27日〉
廃業予定企業の4割超は「今後10年の事業の将来性はある」と答えているにも関わらず、廃業を選択するしかない現状が浮き彫りとなりました。
さらに、東京商工リサーチの調査によると休廃業・解散に至った中小企業の経営状況は、6割は黒字(売上高当期純利益率がプラス)です。
利益率が5%以上の企業も25%あり、これは東京の中小企業が対象ですが、恐らく全国的にも同様の傾向があると予想されています。
そして、2025年には経営者の何と6割が70歳を超え、多くの中小企業が廃業する結果、約650万人の雇用が失われるとの分析もあります。
実際、事業者数は年間10万者程度のペースで減少しつつあり、足下では358万者まで減少しているそうです。
実はもっと深刻なデータもありまして…、『日本政策金融公庫論集』の第47号には、自分の代で事業をやめる予定である「廃業予定企業」が52.6%、200.2万件に上るというデータが掲載されています。
実際に廃業することによる影響として、「従業者数704.3万人、付加価値額25.1兆円、売上高110.3兆円が失われる」との推計を提示。
日本の2020年の実質GDPは529兆円でしたが、中小企業の廃業によってその5%近くが失われることになってしまうのです…。
想像以上にシビアですね…(汗)
事業承継マッチングのさまざまなカタチ
そんな現状もあり、日本政策金融公庫の国民生活事業が実施している事業承継支援事業が活発しています。
〈大阪日日新聞 / 2021年12月16日〉
本年度4~9月の申込件数は約1,800件と昨年比約5倍。
中でも大阪府は400件以上と同約17倍と大きな伸びを見せています。
同公庫では「経営者の高齢化による小規模事業者からは譲渡、新型コロナウイルス禍で事業転換を希望する事業者からは譲受の申し込みが増えている」と話しています。
さらには、事業承継をオンラインでより気軽に行えるためのマッチングサービスが活性化しています。
〈産経新聞 / 2021年11月8日〉
「サクシード」や、「トランビ」、「バトンズ」などの事業承継のマッチングプラットフォームは続々と誕生し、敷居を下げていると言えます。
通常のM&Aは、売り手、買い手双方が交渉の代理や助言を行う会社と契約するケースが多く、成功報酬や手付金などを支払います。
オンラインではサイトに登録した売り手、買い手を運営会社が引き合わせて直接交渉してもらうのが一般的で、早期の成約例が多いのが特徴です。
初期手続きもサイトへの無料登録が多く、比較的参画しやすいとされています。
ちなみに、バトンズでは、この5年で売り手の登録者数は5,528件と約26倍、買い手は11万5,162件と約212倍に増加。
成約件数も1,251件と約13倍になりオンライン経由の企業買収が増えていることがよく分かります。
一方で、その手軽さゆえ、参加企業が増えるほどトラブルの危険性はどうしても高まってしまいます。
また、調査不足で売り手の隠れた債務を見過ごし、予想外の負債をかかえるリスクもあり、一部では保険サービスも設けられている状況です。
とはいえ、選択肢が増えていくことは、事業承継の活性化に大きく寄与することは間違いないでしょう。
地元限定のマッチングサービスも誕生
さらに、注目したいのが地方の事業承継サービスです。
〈函館新聞 / 2021年12月17日〉
例えば、函館出身の起業家らでつくるベンチャー企業「アノニギワイ」が函館に特化した事業承継マッチングサイト「いさり灯(び)」を開設。
対象は函館市、北斗市、七飯町、鹿部町、木古内町、森町に限定し、後継者を探す探し手と事業を継ぎたい担い手をマッチングします。
応募者には、函館在住のライター3人がインタビューを行い、事業者の思いなどを記事として掲載。
探し手が無料で利用できるプランなど、ニーズに沿って多くの掲載方法を用意しています。
同社によると、掲載可能例は後継者不足に伴う中小企業の事業承継、個人事業主の看板・のれんを残す事業譲渡、一部事業の譲渡・売却、商品のブランド譲渡、店舗の次世代を担う店長求人、廃業後の施設・設備の売却・賃貸、空き家活用を目的とした売却・賃貸、一次産業(漁業、農業)のなり手募集などとなります。
同じ地域というのは絆意識もあるでしょうし、事業者側も、担い手側にとっても安心感や共感も高まりやすい状況なので、日本全国でこのような取り組みが広がれば良いですね。
事業承継には課題も多いですが…
とはいえ、事業承継というのは、なかなか難しいものがあるとは思います。
よく言われている難しい理由が
①自社で後継者や幹部を育てる余裕やノウハウがない
②自社株評価が高く、後継者に資金力が必要
③社長に引退への意欲がない
と言われています。
①は中小企業はほとんどそうなのではないでしょうか?
そして、③が本当に難しい…。
よく「生涯現役でがんばります!」と高らかに宣言する創業社長は多いですが、だいたいこのケースは事業承継に混乱をきたします。
老いは必ずしも緩やかでない…。ついこないだまで元気だった社長が突然ガクンとくることも多々あります。
それほど、老いは不確かで、残酷なほど突然くっきりと体に現れるものだと感じています。
生涯現役を志す社長は、それはそれで素晴らしいですし、その理想を叶える意欲は大切にして欲しいものの、どこかで「いつ何か自分にあったら」と不測の事態に備えるのが、経営者としての誠意でしょう。
ちなみに、帝国データバンクによると、平成30年以降の事業承継動向では同族への承継が最多ですが、年々低下傾向にあるそうです。
一方、同族以外の従業員に引き継ぐ内部昇格が高まっており、昨年は34・1%と同族への承継(34・2%)に迫っています。
普通の人の心理からすると同族を優先したいでしょうが、一方、会社とは経営者だけのものでもないと思います。
一番最適な事業継承を選択する器を経営者が持っているかどうか。それが信じて付いてきた従業員の幸せに繋がることは間違いないでしょう。
とはいえ、親族同士の相続ですら骨肉の争いになるので、なかなかそれは理想ではあるのですが…。
いずれにせよ、事業承継は難しい問題ですが、日本全体の経済を守るためにも社会全体で自分事して考えないといけないですね。
取り急ぎ、桂文枝さんの「新婚さんいらっしゃい!」での勇姿を最後まで目に焼き付けたいと思っています。
文枝さん、本当にお疲れ様でした。
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