「100年企業」の真髄とは?
column vol.671
ありがたいことに今期始まって早々、超大型案件のコンペの機会があり、先週末にクライアントから嬉しい結果報告をいただくことができました。
コロナで苦しい時期が続きましたが、2期ぶりに精神的には楽な状況で今期の運営ができそうです。
とはいえ、油断は禁物です…(汗)
そして、多少精神的にゆとりが出てきたからこそ、長期的視点に立たねばなりません。
当社は一人の天才社長が40年間引っ張ってきた会社ですが、今後は凡人集団がどのように会社のDNAを引き継ぎ、さらに発展していくかが問われます。
ということで、当社が100年企業と呼ばれるその日を夢見て、何を見つめるべきかを考えつつ、皆さまのヒントに繋がる話を本日はしたいと思います。
自社の強み・商品に「1万時間」向き変えるか?
長寿企業の秘訣
というと「顧客主義」「現場主義」というキーワードをよく耳にしますが、20年もの間ブームを維持している「魔法のフライパン」を開発した錦見鋳造の錦見泰郎社長は、いかに顧客を通じ、商品に向き合うかということを説かれています。
〈日経ビジネス / 2022年5月17日〉
時間で言えば、最低1万時間。
魔法のフライパンは、鉄鋳物の短所である重さを薄型にすることで軽量化。さらに薄くしたことで熱伝導が伝わりやすくなり、「使いやすさ」と「美味しさ」を両立。
まさに料理をする人にとって「魔法」のようなアイテムを生み出すことができたのです。
しかし、ヒットしてからも20年間、マイナーチェンジを繰り返し、初代が原石だとすると、現在は宝石になるまで、顧客の声を通じて研磨をし続けてきました。
商品の強みと顧客の声に向き合い続け、一日3時間、10年で1万時間、最低このぐらいの時間をかけないと納得できるものになっていかないと、錦見社長は悟ったとのこと。
このお考えを後押しするのが、LayerX代表取締役CEO・福島良典さんの「100社ヒアリング」という哲学です。
〈日経ビジネス / 2022年5月19日〉
福島さんと言えば、グノシー創業者と言った方が馴染みがあるかもしれませんが、2016年、Forbes Asiaより、アジアを代表する「30歳未満」に選出された日本を代表する若手起業家の一人です。
LayerXを立ち上げ、クラウド上で請求書処理ができる「LayerX インボイス(現・バクラク請求書)」を開発した際に、100社にヒアリングし、ダメ出しされまくりながら、商品を研磨していったそうです。
二人のヒットメーカーから感じるのは「顧客主義」「現場主義」は決してキレイごとではないということ。
この顧客との対話(厳しい指摘)からどれだけ逃げないかが、顧客に愛される商品づくり、企業づくりの肝となるということが記事がヒシヒシと伝わってきます。
「裏ニーズ」まで読み解けるか?
さらに、福島さんはこのように記事で語っております。
一方で「顧客の声を聞きすぎてはいけない説」があります。これは、ユーザーの声を聞き入れすぎてサービスが複雑化し、本来の方向性とズレてしまうことを懸念しています。
一瞬、頭が「???」となってしまうかと思います。
顧客の声に真摯に耳を傾けるのが、顧客主義なのではないのかと?
福島さんは、このように答えます。
LayerXでは「裏のニーズ」と言っているのですが、ユーザーの声を聞くことは絶対。ただし、言う通りそのままにはつくらないポリシーがあります。
「裏のニーズ」。
例えば、「申請を逆順にソートできる機能が欲しい」と言われたとします。
しかし、そのまま受け取らず、一度「その機能で何をしたいのか?」と問うてみる。
ヒアリングを重ねていくと「ソートがしたい」わけではなく「稟議書の抜け漏れをなくすための検索機能として欲しい」という「裏のニーズ」を探り当てることができるたら、これこそが「真のニーズ」なのです。
夫婦関係でもよくあるかと思います。
例えば、連日忙しい妻が「ちょっと、何でこれ(家事A)をやっていないの!?」と夫に怒ったとします。
反省して次の日は、家事Aをやったとしても、相変わらず機嫌が悪く、そのやり方だったり、別の家事で怒られるという場面を想像できるでしょうか?
この場合は、家事という行為ではなく「連日忙しい私をなぜ気遣えないのか?」という思いが「裏のニーズ」である可能性があります。
もしも、これが正解だったら、いくら家事という行為を行っても、気遣えていなければ、きっと怒られ続けてしまうでしょう。
大切なのはパートナーも、顧客も、意外と人間は自分の真のニーズを言語化できていなかったり、そもそも気づいていない場合が多いのです。
トヨタの「なぜを5回繰り返す」が良きお手本ですが、顧客の声の深堀をすることが非常に重要だということでしょう。
「一流の経営者」とは何か?
「現場主義」「顧客主義」において、経営者としてどのように社員と向き合うかということについて、とても好事例だと思った記事がありますので共有させていただきます。
現代ビジネスの【頭でっかちのエリートが会社を滅ぼす…日本企業をダメにする欧米流経営の大問題】です。
〈現代ビジネス / 2022年5月17日〉
国際投資アナリストで、人間経済科学研究所・執行パートナーの大原浩さんの記事なのですが、前提として欧米流経営とは、例えばイーロン・マスクさんのような突出したエリート経営者がトップダウン式に組織運営する形。
一方、日本ではそもそもそんなに突出した経営者はいなく、経営陣と中間管理職、一般従業員の資質の差が欧米ほど大きくはないと指摘しています。
であれば、経営の主軸は現場にある方が良い。
そして、現場の最前線で顧客接点を持っている社員を活かしたボトムアップ式がポイントになるのです。
この話を見た時、30代の頃、ある企業の社長さんに言われたことを思い出しました。
三流はグイグイ引っ張ろうとする経営者。二流は丸投げする経営者。
そして、一流は「何もしてないように見えて、その人がいると何か上手くいく」と感じさせる経営者。
社員に主体性を促し、社内の風通しを良くし、さまざまな意見を吸い上げ、最適な環境を整えられるリーダーシップであるということです。
社員こそが会社の資産、そして、社員が一生懸命顧客に向き合える風土をつくり上げることができるかが腕の見せ所になります。
もちろん、いろいろなリーダーシップがあっても良いとは思いますが、私のような凡人にはボトムアップ型が向いていそうです。
100年企業を目指して。社員の成長、会社全体の成長を考えていくことが、次の自分の成長になっていく。
ちなみに、当社の社長は我々からするとスゴい人ですが、「社員一人ひとりを主役に」という気持ちが強いと感じます。
当社の経営のDNAは、やはり「現場主義」であり、「ボトムアップ式」にあると信じたいところです。
残り60年、次のリーダーを育てることも含め、考えていかないといけませんね。
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