「浮体式」という希望
column vol.1179
イーロン・マスクさんがXで
と投稿したことで、電力消費問題が一気に注目を集めています。
実際、国際エネルギー機関(IEA)は26年の世界の電力消費量が22年の2倍超に膨らむと試算。
日本も例外ではなく、電力シンクタンクの電力中央研究所は、21年に9240億kW時だった電力消費が50年に最大で37%増えると予測しています。
他にも、地球環境産業技術研究機構も最大で50年に19年比30%程度増えると試算。
その大きな要因と言われているのが生成AIなのです。
〈日本経済新聞 / 2024年4月10日〉
生成AIによる「電力爆食」の課題
生成AIは膨大なデータ計算が必要ですので、その分、電力を食うわけです。
そして、昨年より利用拡大が進んでおり、消費量が急増。
ちなみにですが、アメリカの「ニューヨーカー」の記事によれば、ChatGPTだけでも1日当たり50万kWh超の電力量を消費しているそうです。
〈BUSINESS INSIDER JAPAN / 2024年3月12日〉
アメリカの平均的な家庭の電力消費量は1日当たり約29kWh。
つまり、ChatGPTは平均的な家庭1万7000世帯以上の電力を消費していることになるわけです…(汗)
さらに驚きなのが…、オランダ中央銀行のデータサイエンティスト、アレックス・デ・フリースさんが
と仰っていること…
…生成AIによる電力の爆食はすさまじいものがありますね…
そこで、日本でもデータセンターの拡充が進んでいます。
例えば、マイクロソフトは日本でデータセンターを拡充するために2年間で29億ドルを投じる方針を発表。
北海道苫小牧市でソフトバンク、北九州市でアメリカの不動産投資・開発のアジア・パシフィック・ランドグループも建設を予定しているのです。
そうした中、NTTは消費電力を100分の1に抑える次世代通信技術を開発。
日本企業の技術革新が急がれています。
「浮体式洋上風力発電」は希望の星
…いずれにせよ、2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている中、再生可能エネルギーの導入拡大や原子力発電所の再稼働だけで、安定的に電力をまかなえるかが難しくなっています…
電力中央研究所・主任研究員の間瀬貴之さんは
と指摘。
電力の安定供給に対しての暗雲が、こうしたお話からも伝わってきます…
一方、そんな中、再エネの光となっているのが「浮体式洋上風力発電」です。
10日の日米首脳共同声明で連携を表明したこともニュースになりました。
〈産経新聞 / 2024年4月11日〉
日本は海に囲まれている国とはいえ、浅瀬が少なく、着床式だと簡単には建設できない状況でした。
しかし浮体式なら、水深が深い海域でも利用しやすいわけです。
そこで、政府は排他的経済水域にも風車を設置できるよう改正法案を今国会に提出。
民間では浮体式の技術確立に向けて研究組織が発足しており「風車拡大」の機運が高まっています。
そもそも、日本では洋上風力の発電能力を2030年までに1000万kW、2040年までに原発45基分にあたる最大4500万kWに高めようと長期的に計画。
上述の研究組織とは「浮体式洋上風力技術研究組合」のことで、大手電力会社、三菱商事や丸紅など大手商社、NTTアノードエナジーなど14社が手を結んでいます。
そして、各社の知見を持ち寄り、業界の指標となる設計基準や規格、大量生産の技術、海底の深い場所での係留技術、遠洋での風の状況観測などの開発で連携。
他国に先行して開発できれば、日本の電力安定供給に寄与するだけではなく、海外展開や国際競争力の向上も見込まれているのです。
北の国から「安定供給」の光
そして「浮体式」ということで今大注目なのが「北海道」です。
まず、この北の大地は、太陽光や風力など日本の再生可能エネルギーの潜在量の3〜4割があると言われています。
浮体式洋上風力発電についても、2040年までに道内で最大1500万kW級の洋上風力設備の整備を目指しているとのこと。
〈日本経済新聞 / 2024年3月14日〉
そして、北海道でつくった電力を本州に送電する仕組みを強化しております。
北海道と本州の間には容量60万kWの「北本連系線」が備わっているのですが、90万kWに増強。
さらに、28年春までの完了を目指し、再増強工事を進めています。
…とはいえ、これだけだと120万kWに過ぎず…、本州への送電の主力として海底送電ケーブルの整備が重要なカギを握っております。
国は今後6〜10年をかけ、北海道と本州間の日本海側に200万kW級の海底ケーブルを敷設し、将来は600万kWまで増強。
これに合わせ、古河電気工業は海底送電ケーブルを増産しています。
27〜28年度を目処に海底ケーブルの生産能力を2倍程度に引き上げることを目指しているのです。
他にも、住友電気工業が、国内で海底ケーブルの生産体制増強に意欲を表明。
もちろん、北海道から本州への大量送電は難問だらけなのですが、北海道電力を中心に国内企業が協力し合い、プロジェクトXに挑んでいるのです。
さらに言えば、日本の電力問題は、これからもたくさんの壁に直面することでしょうが…、
先ほどもお話ししたように、こうした日本が課題解決に向けて積み上げた知見は、海外展開や日本の国際競争力の向上につながっていくはずです。
そうしたことに期待しながら、久しぶりの本投稿を締め括りたいと思います😊
本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。