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「体験型」商業施設の進化

column vol.810

本日はとある商業施設で集客イベントの運営がありました。

顧客に「ここにしかない体験」を味わっていただくことで、来館する目的をつくる。

小売業はこぞって「感動体験」の提供を心がけていますが、最近ではますます先鋭化している事例も見られます。

その1つとなるのが、埼玉県発のスーパー「ベルク」ではないでしょうか。

Z世代を虜にする「斬新体験」

1959年、秩父市「主婦の店秩父店」として誕生した「ベルク」

地域の住民に寄り添った経営で着実に店舗数を伸ばし、現在は埼玉、群馬を中心に関東圏で129店舗を持つまでに成長しています。

特徴的なのは、Z世代を中心とした新規顧客獲得へ斬新な施策

例えば、“霊視体験招待”の販促キャンペーンを行なっています。

〈ORICON NEWS / 2022年10月17日〉

これは、レシート画像を送付すると、抽選で“生霊が見える芸人”による霊視体験ができるというもの。

他にも、女性アイドルとのコラボ人気声優が店内ナレーションを担当する企画など、ディープなファンに刺さる企画で、今までスーパーに足を運ばなかった層へもアプローチしています。

さらには、メタバース分野にも積極的にチャレンジ。

こういった攻めた企画を展開することで、注目を集め、集客に繋げているのです。

さらに、惹きつけるのはお客さまだけではありません。

「ベルクで働きたい」と思う人も増えています。

好きなものやコトをどうアピールするかを考えて実行することは、与えられて毎日作業をするより大きな喜びを得ることができます。採用でも、イベントをきっかけに知ってくれた若者の応募が増えたりと、変化を感じています。

と、同店は語ります。

これは昨日、「うそやん?」と人々が驚くほど、衝撃と感動を与えることの重要性に触れましたが、まさにそのことの好事例。

こういったチャレンジングな姿勢が、成功の秘訣になるということがよく分かります。

体験を通じて「コミュニティ」が生まれる

ベルクは埼玉・「群馬」に展開していますが、群馬にはもつ1つ紹介したい小売企業があります。

「桐生にこの店あり」と知られた個店セレクトショップ「エスティーカンパニー(ST COMPANY)」です。

〈WWD Japan / 2022年10月5日〉

こちらも1978年創業の老舗

2018年に移転増床してから、ユニークでモダンな店づくりや、ここでしか体験できないさまざまなポップアップイベント家族のようなアットホームな接客で、ますます存在感を強めています。

ECでなんでも買える時代にわざわざ行きたくなる店

のまさに好事例。

例えば、先日「東京ファッションアワード」を受賞したニューヨークを拠点にするブランド「タナカ」のポップアップイベントでも、普通のポップアップイベントとはひと味違う体験ができます。

普通はVMDを組み、デザイナーが店頭に立って接客する、という感じになりますが、ここでは「ニューヨークの空気を感じてもらう」ことと、「購入した商品をその場で職人がカスタマイズする」2軸でイベントを設計。

「ニューヨークの空気」編では、2階のカフェでタナカさんがニューヨークで出会ったというジャズミュージシャン3人の即興演奏が始まったり、人気のタコス店「キタデ タコス」の屋台が出ていたり、イベントに合わせてオーガニックワインも豊富に揃えたそうです。

また、「カスタマイズ」編では、お客さまが購入したアイテムに即興でペインティング

そうして、「エスティーカンパニー」「タナカ」「顧客」が1つの空間で特別な体験を享受し、そこで強い感動を共有したコミュニティが形成されているのです。

同店では県外からの来店も多く、まさにこの店のために桐生を訪れるという“デスティネーションストア”になっている、その要因になっています。

働く人「エスティーカンパニーが大好き」という空気が充満しており、ベルク同様にお客さまに愛される店は、従業員にも愛されるという典型だと思います。

「体験型」店舗は世界共通のキーワード

ニューヨークで思い出すのは、フォーブスジャパン【米ショッピングモール、「体験型」施設で客足回復 5つの成功例】という記事です。

〈Forbes JAPAN / 2022年9月10日〉

アメリカ「体験型」施設の好事例が載っている記事なのですが、例えば、カリフォルニア州サンタアナにある「メイン・プレイス・モール」では、「アメリカン・ニンジャ・ウォーリアーズ」が今年7月にオープン。

これは、TVの人気スポーツエンターテインメント番組の出場者たちと同じ「アメリカン・ニンジャ・ウォーリアーズ」の障害物に挑戦できる屋内アドベンチャーパーク。

日本で言えば「SASUKE」を体験できるゾーンといった感じでしょうか。

非常にスケールが大きい話です。

これにより、月間来店者数はパンデミックの発生前、2019年の同月と比べ、18%増加しているとのこと。

また、ペンシルベニア州ヨークにある「ヨーク・ガレリア・モール」でも面積およそ7430平方メートルのスペースに昨年8月、スロット500台、ゲームテーブル24卓などを備えたハリウッド・カジノを開業。

パンデミック前と比べ、客足の減少が続いて同モールでしたが、カジノがオープンした月の来店客数は、2018年同月と比べて31.4%の大幅な増加

客入りはその後も好調とのことです。

中国でも体験型は同様に重視されておりまして、ビジネス+IT【始まった「ショッピングモール消滅」のカウントダウン、挽回企業は何をした?】という記事の中でも、「北京SKP」の成功事例が紹介。

〈ビジネス+IT / 2022年9月27日〉※無料登録で閲覧可能

2019年12月にオープンした新館「SKP-S」で、人類が火星に移住したという想定の宇宙農場を表現。

現代アートの空間展示のようで、北京SKPが持っている強いブランド力の強化に繋がっており、子ども用のTシャツ(2,000元/約4万円)などが飛ぶように売れているそうです。

今やメタバースなどオンラインの世界での新鮮な体験が高度化する中で、いかにリアルもそれ以上の感動体験ができるかが、今後の実店舗の明暗を握っているのではないでしょうか?

「体験価値」を築くために、単にお金をかければ良い話ではなく、知恵を絞ることで、ブレイクスルーのきっかけを掴みたい。

そんな企業を今後も応援していきたいと思う、今日一日でした。


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