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“驚き”の戦略

column vol.737

「答えがない時代」と言われて久しいですが、だからこそ、時に大胆な一手を打つ必要もあります。

最近、気持ちが上がったユニークな「戦略」がいくつかあるので、今日はそちらをご紹介させていただきます。

ロングセラーのイメージを変える大胆戦略

まずは、キリンビールの人気缶酎ハイ「氷結」シリーズについて。

最近、売れ行きが好調のようです。

〈産経新聞 / 2022年7月8日〉

この好調に導いたのが、とあるマーケティング戦略なのです。

それは、商品名を伏せた「ミステリー缶」をキャンペーンで配布したこと。

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キリンホールディングス

写真を見ていただけると分かる通り、氷結であることは一切分かりません

しかし、「『完璧』を目指したチューハイを飲んでみないか。」というメッセージが妙に心をくすぐります。

なぜ、キリンビールはこんな仕掛けを行ったのか?

それは、氷結の旧来のイメージを打ち砕くためです。

氷結は約20年前2001年に発売されたロングセラーですが、長くある商品であることから「昔の味」のイメージがつきまとってしまう…。

これでは品質を向上させたとしても、そのイメージから商品に手を伸ばしてもらえない可能性があります。

そこで、キリンビールは氷結であることを隠し、ミステリー缶として商業施設などで100万缶配布

後に、5月16日に情報を解禁して、「あっ、氷結だったんだ!」と消費者を驚かせたのです。

実際、リニューアルした「シチリア産レモン」「グレープフルーツ」「シャルドネスパークリング」の3缶は、果実のみずみずしくクリアな味わいを引き立てるとともに、雑味のないスッキリとした後口を実現。

狙い通り、飲んだ方のこれまでのイメージを払拭できたとのこと。

特にシチリア産レモンの購入率は、リニューアル前と比べて約1.8倍に増えたそうです。

商品名を隠して従来のイメージを作新する。

このニュースを目にした時、最近、私はレモンと言えばレモンサワーの檸檬堂一色だったのですが、久しぶりに氷結を買ってみました

ミステリー缶を手にできなかった人も、このパブリシティ効果で再び買い求めた人は多いのではないでしょうか?

なかなか魅力的な奇策ですね。

バス会社なのにバスの仕事を避ける社員

続いては新規事業創造についての驚きの取り組みについてご紹介いたします。

引退したバスを改造したサウナ「サバス」が話題となっています。

〈ITmedia ビジネスオンライン / 2022年7月29日〉

仕掛けたのは、神姫バスから独立したリバース代表の松原安理佐さん。

2015年に入社した際から「何か新しいことをしたい」という思いが人一倍強かったとのこと。

そのため、何と松原さん、入社にあたり配属希望を聞かれた際も「バス事業以外が良いです」と答えて「バス会社の新卒なのに!?」と周囲を驚かせたそうです…(驚)

ひと昔前なら、なかなか受け入れられない考え方ですが、これがイノベーションを求められる時代に必要な多様性です。

実際、今回の挑戦はそういったマインドから生まれています。

サバスは当初800万円の資金が必要ということで、社内から猛反対をもらったそうですが、このアイデアは他には無いと自分を信じ、経産省「出向起業等創出支援事業」に目をつけ、独立出向という形で挑戦を継続。

雇用契約はそのままに自ら設立した新会社へ出向して、資金集めを行いました。

そして、開業資金の40万円弱を自ら用意し、出向起業等創出支援事業の補助金を取得

さらに、神姫バスが出資しているコーポレートベンチャーキャピタルの融資がおり、1000万円を調達できたことで実施の下地ができました。

最後に、神姫バスの社長に直談判し、夢を実現。

ここまで熱意をもって取り組んだ松原さんも凄いですが、その熱意を受け入れた社長を尊敬いたします。

苦しいバス事業の希望の光に

結局、1000万~1500万円のお金をかけ、サバスは完成。

22年3月に営業を開始すると、初めて一般の利用者を募ったイベントでは、15社以上のメディアが現地に集まったそうです。

しかも、中には海外のメディアもあったとのこと。

「サバス」は30万円程度で施設に貸し出し、施設は利用者からサウナ料金を取るという形で運営しているそうですが、話題が広がっていることで、これまで宣伝に費用を掛けなくても、週末は予定が入っていることが多いそうです。

想定していた温浴施設キャンプ場などのアウトドア施設の他にも、スポーツチームからのホームゲームの際に使いたいといった問い合わせや、ミュージックビデオの撮影に使わせて欲しいといった依頼も。

コロナで厳しいバス事業において、サバスは明るい話題を提供しています。

車内には休憩スペースサウナ室を設けており、サウナ室には薪ストーブが。

降車ボタンを押すと蒸気が発生する「ロウリュ」が楽しめるなど、本格的なサウナが体験できるそうなので、非常に興味が湧いてきます。

しかし、本当に熱いのは自らのお金を使い、さまざまな困難を乗り越え、サバスを実現した松原さんでしょう。

そして、彼女の挑戦を許容した神姫バスの社長さんです。

非常に心が熱くなる挑戦でした。

奇想天外!"0星ホテル"で勝負する

最後は、…ちょっと…、私の頭脳では理解できない挑戦を共有させていただきます。

スイス「ヌル・シュテルン(Null Stern)」という名のホテルがオープン。

〈TABI LABO / 2022年7月16日〉

このホテル名の意味は"星なし"

旅行者が5つ星に憧れる中、"0星ホテル"で勝負をかけるというわけです。

このホテル、何と屋外にある床の上に、ダブルベッド1台ランプ付きのベッドサイドテーブルがあるだけというもの。

ちなみに、ホテルはガソリンスタンドの隣ぶどう畑の中丘の中腹などにあります。

図2

図1

©CopyrightAtelierfürSonderaufgaben

壁も天井もドアも、そしてもちろんプライバシーもない客室。

こんな状況で眠れるわけありません…(汗)

しかし、それこそが当ホテルを運営するリクリン兄弟の狙い。「ポイントは睡眠ではなく、眠れない夜に気候変動や戦争などの世界情勢について考え、行動につなげること」としているのです。

宿泊料金は325スイスフラン(約46000円)

皆さんは、このホテルに泊まってみたいと思うでしょうか…??

私はまだ勇気が出ませんが、こういったチャレンジングな企画もきっと今の時代には必要なのでしょう。

これはこれで刺激になりました〜。

いずれにせよ、答えがない時代には自分の常識を超えた発想が必要になります。

自分に無い常識とどれほど出会えるのか?

今後はその辺がキーポイントとなりそうです。



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