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「自分の見ている世界」を疑う

column vol.306

若い頃の私の口癖が「曲がっていることが大嫌い」だったのですが、ある日、彼女(今は妻)に「そう言う人って大抵自己中だと思う」と言われてハッ!としました。

類語としては「これって常識じゃん」もそうですね。

確かに、曲がっていないこと常識について、世界共通のバイブルはまだ見たことはありません。

人は知らず識らずのうちに自分の頭の中が基準になってしまいます。そして、自分の基準を愛すると、周りはそういう人として表層的に繕った付き合いしかしてくれなくなります。

地位が高くなればなるほどその傾向は強まり、いつしか「裸の王様」になってしまうのです…。そんな悪循環を繰り返す人たちを見る度に、襟を正しています。

今のマネージャーの重要な役割とは?

「英語が話せれば、もっとやりたい仕事ができたのに」
「定時に帰ったら、上司から悪く思われるに違いない」
「もっと接待しなければ、きっと取引を止められてしまう」

『「疑う」からはじめる。 これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』の著者、澤円さんは私たちの生活の中にさまざまな思い込みが存在していると指摘しています。

〈lifehacker / 2021年5月14日〉

澤さんは「日本はマネージメント後進国」であると本の中で語っており、特に「上司=権威(偉い人)」という図式(認識)こそがチームワークを妨げると警鐘を鳴らしています。

本来、上司は「決断をすること」が仕事。そして、デキるマネージャーについてこのように定義しています。

デキるマネージャーは、結果的に指示や命令をしているように見えても、それはあくまでもリソースを最適に配置したうえで、いわば「開始ボタンを押しているだけ」ということ。

部下を自分の自由に動かす(命令)するなんてもっての他だということでしょう。

そもそも、プレイヤーとして自分よりも優秀な部下はいるでしょうし、総合力では上司の方が優っていても、部分部分(各分野)では部下の方が優秀であることは当たり前です。

それを自分で全てコントロールしようとすれば、部下のモチベーションは上がらず成果も上がらないというのは当然の流れですね。

上司はただの役割の1つ「偉い」というバイアスはどうやら捨てた方が良さそうです。

中間層が革新の阻害にならないために

日常業務だけではなく、イノベーションについても同じです。

イノベーションには「起業家精神」が不可欠ですが、神戸大学大学院の栗木契教授は「中間マネジメント層に意識改革を求めるだけでは、状況の大きな改善は望めない。組織全体での取り組みが必要だ」と指摘します。

〈PRESIDENT Online / 2021年5月14日〉

イノベーションを起こす上で、「他の人々に知られていない」新しい組み立てや組み合わせ、そして思いもよらない展開が必要だということは皆分かっていながらも、ついついリアルな仕事の場で部下が枠組みを外れた提案をしてきた時に柔軟に受け止められるかというと…、どうでしょう。

ここでも通常業務(既存ビジネス概念)の延長線上で判断してしまうことは多いのではないでしょうか?

中間管理職はそこまでの権限は無いわけで、当然、リスクを恐れてしまう気持ちが根本に存在することもあるでしょう。

とはいえ、自分が「ひよっている」と認識はしたくない。そういった心理的葛藤が歪んだバイアスを生み出し、新しい芽が育まれることを抑制してしまっていると感じます。

ここで重要になるのが経営幹部のサポートです。トップから覚悟を示し、「覚悟のトップダウン」リスクをとる勇気を下ろしていく

よく、経営陣の方と接している時に、中間管理職も含めて「若い社員に起業家精神を持って能動的に改革を進めて欲しい」という意見を聞くことが多いのですが、「あとはよろしく」ではそれはなかなか難しく、リスクをとれる環境づくりを行うのが経営陣の努め。

「若い人に全てを任せる方が良い」というのは経営者を甘やかすバイアスの言葉で、水面下ではしっかりと役割を果たさなければなりません。

組織の上にいけばいくほど、「覚悟を持って任せている」という姿勢を示すことが大切なのでしょう。

なぜ少ない、理系女子?

冒頭でお話ししたように、私に気づきを与えてくれた妻ですが、そんな妻はよく「私、機械のことはよく分からないから、セッティングとかはあなたの方でやって」と言ってきます。それに対して

「あれ?女性が機械に弱くて、男性が強いなんて科学的に証明されていたっけ?」

なーんて、もちろん言うはずもありません。

普段、妻も仕事をしながら私よりも家事を多くこなしてくれているので、もちろんそれぐらいやらせていただきます(笑)。

という、つまらない我が家のやりとりは置いておいて、「リケジョ」という言葉が世に流通している割には、日本の大学の工学部では10人に1~2人しか女性がいないそうです。

〈AMP / 2021年5月15日〉

IT業界の人材エージェンシー「AC Global Solutions」の創始者兼社長のアニー・チャンさんは、「男性が望ましい」とリクエストしてくる日本のテック業界を改善するため、ボランティア組織「Women in Technology Japan (WITJ)」を立ち上げました。

この世界でも女性は増えてきていると言えど、2018年時点で女性の比率はわずか24.5%

そこで、WITJは、IT業界で働く数少ない女性たちにプラットフォームを提供し、互いに交流し、学び合う機会を提供。また、大学の女学生に向けたトレーニングやセミナーを実施し、同業界の次世代リーダーを育成しているそうです。

ちなみに、日本の女学生のSTEM(科学、技術、工学、数学)進学率は低く、文科省「令和元年度学校基本調査」によると、2019年に大学(学部)に占める女子学生の割合は全体で過去最高の45.4%となりましたが、このうち理学部は27.9%工学部は15.4%と、OECD諸国でも最低レベル。

チャンさんは理由の1つに、子どもの頃から「男子は○○○」、「女子は○○○」というような植え付けがあることが大きいと指摘しており、こういった幼少期のバイアス教育をいかに改善するかが重要だと語っております。

ここではSTEM教育ジェンダーレスにフォーカスしましたが、幼少期からさまざまなバイアスの芽を大人が摘んでいかないと、バイアスの連鎖が永遠の鎖となって次世代を縛り付けてしまいますね…。

自分も常に「自分の見ている世界」を疑うということを忘れないようにしたいと思います。

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