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アイドルに学ぶ「熱狂」のつくり方

column vol.332

最近、さまざまな現場で「ファンマーケティング」という言葉が飛び交っていませんか?

これは熱狂的なファンを育てることでさまざまな効果を生むマーケティング手法で、ファンになった顧客は積極的に企業やブランド、商品に関与してくれるようになります。

たとえば、SNSでのバズ(口コミ)効果などが有名ですね。

今日は、元祖ファンマーケティングを展開してきたアイドルグループを教材にファンの育て方を学びたいと思います。

拡散力を生む「フリーミアム」

まずは、K-POPアイドルです。

昨年9月、韓国の7人組ボーイズグループ「BTS」米Billboardシングルチャートで首位を獲得するなど、躍進するK-POPアイドルですが、この圧倒的な拡散力の裏に「フリーミアム」というビジネスモデルがあります。

〈BLOGOS / 2021年6月13日〉

これは「コンテンツを無料解禁する」という意味なのですが、国外でMVなどが視聴可能なのはもちろんのこと、公開と同時に多言語字幕付きで配信されています。

一方、日本のMVは著作権保護のため国外では見られないものが少なくないため、ここに拡散力の違いが生まれています。

さらに、K-POPアイドルでは『ホームページマスター』と呼ばれる人たちが、アイドルのコンサートや会場入りなどの様子を撮影した写真や動画を私設サイトやTwitterにアップ

この行為自体はグレーゾーン…、いや…厳しく見ればアウトですが、無料の広告塔という見方もでき、何よりもファンマーケティングの肝である参加性が満たされます

この著作権保護認知拡大(市場拡大)の議論は、ビジネス全般で考えてみても確かに難しい問題ではあります。

例えば、どの業界でも何かを開発すれば特許を取るのが普通です。

しかし、今では全国区になった博多明太子は、開発者がどんどんマネさせることで、市民権を得ることになりました。

開発したのは「ふくや」の創業者・川原俊夫さん。10年の月日をかけて開発した明太子の秘伝のレシピを何と惜しげも無く他社に教え広めたのは有名な話です。

さらに、息子さんから「元祖や本家と名乗ってはどうか」と助言されたところ、川原さんは「それを書けばおいしくなるのか。そんなことを考える暇があったら、少しでもおいしい明太子を作る努力をすべき」と怒ったそうです。

そうこうしている内に今では100以上の明太子メーカーが生まれ、全国でも有名な博多名物になりました。

「おいしい明太子を一人でも多くの人に味わって欲しい」という河原さんの心意気が無ければ、ここまでの拡散力は生まれなかったのではないでしょうか?

まずは、拡散し、知ってもらう。これがとても重要です。

ちなみに、私はこのエピソードを聞いてから、明太子を買うなら「ふくや」と思うようになりました。これぞ、最近のトレンドである「ストーリー消費」ですね。

商品の背景にある“モノ“がたりに共感し、購買の意思決定を行うという典型的な話だと思います。

さらに、私が今この話を発信することで、拡散の一端になっています。私のような人が何人もいることで、河原さんの想いは時を超えて語り継がれていくのでしょう。

あえて「限定する」

最新のアイドルがK-POPだとしたら、100年以上続くオーセンティックなアイドルと言えば「宝塚歌劇団」でしょう。

宝塚ファンからすれば「アイドル」とは一線を画すと思うでしょうが…、とても大切なポイントがあるので、この流れでお話しさせてください…(汗)

東洋経済オンラインに掲載されていた【アイドルが宝塚歌劇団を超えられない納得の理由】という記事に人気の秘訣を垣間見ました。

〈東洋経済オンライン / 2021年6月11日〉

1914年の設立以来、100年以上にわたり存続し、年間300万人に及ぶと言われる動員数を誇る宝塚歌劇団ですが、その人気は秘訣は「あえて限定する」ところにあるそうです。

まず、ロングラン公演をしない

普通は、衣装や舞台装置の製作など、重くのしかかる固定費を回収し、利益を生み出すためにも、人気が出た演目突出して人気のあるトップスターが出演する演目公演数を増やしたいところですが、宝塚は回数を予め決めており、増やすことは無いそうです。

しかし、ゆえに「希少性」が高まります。

しかも、宝塚ではスターひとり一人が、初演から卒業まで十数年という時限性を帯びた「終わりがある」存在であり、どんなに人気が出たとしても活動期間にはおおよそ期限があります。

にもかかわらず、公演回数はきわめて限られている…。

タイムリミットが示されている存在だからこそ、推す側はその限定された時間を最大限に愛おしみ、出費を惜しまなくなるのでしょう。

そして、もう1つの特筆すべき要素が「素を見せない」ということです。

これは「会いにいけるアイドル」全盛の今のトレンドとは真逆のアプローチです。

「清く正しく美しく」

宝塚歌劇団はこの揺るぎない理念の傘の下で輝く「憧れのグループ」です。

もちろん、ひとり一人の個性も際立っていますが、あくまでも「宝塚の世界」という明確な世界観の中で生きるキャストなのです。

つまり、宝塚というブランドが明確に確立していることが、100年以上続く人気グループのサスティナブルなエコシステムになっているというわけです。

考えてみれば、モー娘、AKBと今ではメンバーの入れ替えが当たり前になってきましたが、それを100年以上前からやっているグループと考えると、凄いことですね…(汗)

ビジネスシーンでも、デザイナーや開発者など、人材の色を大々的に出す企業もありますが、その企業のモットー(理念・世界観)を明確にした上で、個性を発揮していくというのが長く愛される企業の秘訣なのかもしれません。

個と組織。その両輪を上手く組み合わせていくことが、長く走れるグループになると感じます。

今回は、アイドルをテーマに貴重な学びを得ることができました。

それでは、良い週末をお過ごしくださいませ!

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