「絶対」は絶対ない、かも?
column vol.1118
先月、録画してそのままにしていたNHKの番組『ディープフェイクの衝撃 〜生成系AIの光と影』をようやく観ることができました。
〈NHK / Webサイト〉
メディアアーティストの落合陽一さんがナビゲーターを担当。
生成AIによって、今や簡単にフェイク動画・画像をつくれるようになった「ウィズフェイク時代」の到来を伝えています。
単に「フェイクって怖いね…」という話に留まらず、「受け手側」の負の部分にもスポットを当てるなど、非常に示唆に富んだ内容だと感じました。
番組を見逃した方のために、近い内容として「NHK NEWS WEB」の【AIが生み出す偽情報 ウィズフェイク時代をどう生きるか】という記事が参考になりますので、併せて共有させていただきます。
〈NHK NEWS WEB / 2023年8月24日〉
〜ということで、今回は「ウィズフェイク時代」の現状と、受け手側の負の部分。
そうした状況において我々が意識した方が良いことについてお話ししたいと思います。
高度化するフェイクに翻弄される世界
まず、こちらの写真をご覧ください。
「アメリカの国防総省(ペンタゴン)付近で爆発が起きた」ことを表す画像。
「AI生成の偽画像」という文字がなければ、真偽判別つかないというのが私の本音です…
実際、このフェイクを信じてSNSで画像が拡散。
一部の海外のメディアでも「アメリカ国防総省の近くで爆発」と速報されたほどです。
しかも、これが大手金融メディア「Bloomberg」を装った偽アカウントだっただけに、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価が一時100ドル以上下落するなど、なかなかの騒ぎになりました…(汗)
日本でも昨年9月、台風15号による豪雨で静岡県で水害が起きた際、SNSで町全体が水没したような偽画像が投稿。
こちらの偽画像は5000件以上もリポストされ、静岡県が記者会見で県民に注意を呼びかける事態となったのです…
進む「フェイク」対策
単なるいたずらもあれば、世論を動かすためのフェイク拡散もあります。
有名なところでいえば、ウクライナのゼレンスキー大統領の偽画像でしょう。
と画面に向かって偽大統領は語りかけ、ウクライナ国民に対して降伏を呼びかけています。
〈現代ビジネス / 2023年9月29日〉
また、台湾でも昨年、アメリカ民主党の重鎮議員のナンシー・ペロシさんが、連邦議会下院議長(当時)として25年ぶりとなる台湾訪問をした際には、 サイバー攻撃が激化。
日本の東京電力福島第一原子力発電所がALPS処理水を海洋放出した際も、多くのフェイク情報が台湾に広がったとのこと。
こうした動きに対し、世界では法整備など対策が急がれています。
フェイクを見抜く研究も進んでおり、例えば、元の画像を明らかにする “サイバーワクチン” は、仮に自分の顔が悪用されたとしても元データを復元してくれるので「顔をすり替えられた」と証明することが可能。
日本のスタートアップ企業「NABLAS」では、偽画像の特徴などを学習させたAIを使って、フェイクの確率を判別できるシステムの開発を進めています。
先ほどのペンタゴンの画像もNABLASの技術を使うと、数秒ほどでヒートマップと呼ばれる画像を提示。
判別AIがフェイクだと注目した領域が、赤色などで示されているのです。
…とはいえ、法整備も判別技術も、従来のいたずらや犯罪と同様にいたちごっこになる可能性は高く…、…やはり、私たちに対して一層の注意が求められることでしょう…
「1つの正解」に固執しないことがカギ
冒頭のNHKの番組『ディープフェイクの衝撃 〜生成系AIの光と影』では結論として、「一度立ち止まって、複数のメディアから判断すること」の大切さ説いていました。
実際、海外ではウィズフェイク時代を踏まえた教育を進めている学校も増えています。
例えば、子どもたちにリアル情報とフェイク情報を見せながら、さまざまな情報ソースから真偽を判別させる「ラテラルリーディング」がそうです。
私個人のことでいえば、この番組の中で一番強く心に残ったのが、落合陽一さんが仰った「ポストトゥルース」という言葉です。
ポストトゥルースとは、人は「真実よりも自分の感情を優先してしまう」という心理を指します。
「自分の都合の良いように解釈する」とも言えますし、「自分の信じているものだけを信じやすい」とも表現できるでしょう。
心理学でよく使われる「確証バイアス」と同じですね。
恐らく、フェイクを生み出す人の中には、ウソをつくり上げているという認識がないまま、「自分の信じる真実の情報がないだけで、絶対にこうであるはずだ」という(本人にとっては)強い正義感に突き動かされている人もいるような気がします。
受け手も同じで、真偽よりも自分の信じている真実に盲進してしまう可能性もある…
こうしたポストトゥルースによる確証を考えると、「立ち止まって疑う」という意識の前に「そもそも真実は分からないし、1つではないかも」というニュートラルなマインドセットが必要なのではないかと感じました。
よく経営学の勉強をしていると、「あなたの決断の裏側にある、もう1つの正解を意識すべし」という教えに出会います。
要は
という話です。
トップだからこそ常に自分を省みて、視座を高め、視野を広げるための教訓なのですが、そうした教えに通ずるところがあるなと思いました。
もちろん、これまでの社会においてもフェイクは溢れていたわけですが、AIによって人間の持つポストトゥルースは、より暴走しやすい状況になっていくような予感がします…
誰もが優秀な経営者のように「1つの真実に固執しない」、そんなフラットで柔軟な意識が求められるのではないでしょうか?
〜という
私の意見も当然「80億分(世界人口)の “1” の考え方」であることは認識しております🫡
こうした私の考え方を肥やし程度に扱っていただいて構いませんので、皆さんもウィズフェイクの手前側にあるポストトゥルースとも良き付き合い方を見つけていただければ幸いです😊
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