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模索する「百貨店」の今
column vol.940
大手百貨店の2月売上高は各社2~3割増えているようですね。
〈流通ニュース / 2023年3月1日〉
傾向としては、高付加価値な商品への購買意欲が高く、免税売り上げも、ラグジュアリーブランド、衣料品、宝飾などが伸びています。
コロナの状況も改善されていることもあり、百貨店のみならず、小売企業は軒並み売上を回復させているのですが、…とはいえ…、各社「モノが売れない」時代において、危機感は募らせている…
模索は続いているのです。
そこで、本日は百貨店に絞って、新しい挑戦を仕掛ける事例を、いくつかピックアップしてお届けしたいと思います。
「無人店舗」の活用と効能
昨日、東急グループの話をさせていただいたので、その流れから東急百貨店の取り組みからご紹介させていただきます。
最近は、省人化やマーケティングの効率化などの観点から、無人で運営できるスマート店舗が増えていますが、日立製作所が開発した無人小型店舗サービス「コウリバ(CO-URIBA)」を活用して東急百貨店がある実験を仕掛けたのです。
〈ITmediaビジネスオンライン / 2023年1月28日〉
それは、東急百貨店本店、 渋谷ヒカリエ ShinQs、+Qビューティーの3店舗で、4000円以上の商品・サービスを購入した顧客に対して、サンプルを配布する取り組み。
![](https://assets.st-note.com/img/1677811698568-Cbs8GWPRp1.jpg)
サンプル配布の条件は、4000円以上のお買い物に加えて、東急の公式LINEアカウントに登録することが必要になります。
実験は、22年9月15~21日、10月27日~11月9日の2回、トータル約3週間実施。
この施策によって、約5000人の新規LINEアカウント登録者を獲得しています。
また、コウリバも約6000人の利用があったとのこと。
最も利用率が高かったプラスクビューティーでは、対象顧客の約21%、渋谷ヒカリエ ShinQsでは約14%、東急百貨店本店では約5%の顧客が参加したそうですよ。
合理性だけではなく「感動」も用意する
そして、コウリバを利用し、顧客の行動データが取得できたことで、それを今後のマーケティング活動にどう活かすかがポイントになります。
ちなみに取得できるデータは、購入者の属性や購入商品、時間帯など。
商品前でしばらく足を止めた、一度手に取ったものの購入に至らなかったなどといった行動履歴を多角的に取得できるのです。
また、私が着目したのが、サンプルを手にした時のお客さまの反応です。
サンプルを手にするとアイテムの情報がリアルタイムでサイネージに表示されるそうなのですが、その時「えー!」と声をあげて驚く方もいらっしゃたそうです。
大切なのは合理性だけではなく、「感動体験」を用意できるか。
それは先月、アマゾンが「アマゾン・フレッシュ」と「アマゾン・ゴー」の一部店舗を閉鎖すると発表した際、グローバルデータ・リテールのマネージングディレクターであるニール・サンダースさんが
消費者は、ウォークアウト・テクノロジーや商品を入れるたびにスキャンされる豪華なカートがあるだけでは、そこで買い物をしようとは思わない。消費者を惹きつける何か他の物が必要なのだ
と語っているのですが、とても納得させれています。
〈BUSINESS INSIDER JAPAN / 2023年2月14日〉
利便性だけならオンラインで充分なので、やはりリアル店舗はいかに訪れるだけの価値を体験させるかが肝要になるでしょう。
無人店舗の活用は、そこが大きなポイントになるような気がしています。
「100円ショップ」が百貨店に!?
百貨店は「付加価値商品」に差をつけるポイントがあるのは確かですが、だからといって「実用的な商品」を蔑ろにするわけにもいきません。
そうなると、その世界で強いプレイヤーを専門店として仲間に加えたいと思うのが、百貨店側の気持ちでしょう。
そんな中、「ダイソー」が百貨店への出店を進めています。
〈FASHIONSNAP / 2023年2月22日〉
これまでに丸広百貨店や名鉄百貨店など3店舗の百貨店に出店。
先月22日には東武百貨店池袋本店に、百貨店内店舗としては初となる「ダイソー」「スタンダードプロダクツ バイ ダイソー」「スリーピー」の3ブランドを複合させた都内最大の旗艦店をオープンさせました。
池袋本店の6Fといえば、「ROLEX」や「Cartier」「CHANEL」といった宝飾・時計や、リビング関連の売り場が展開されています。
東武百貨店の取締役常務執行役員 営業本部長 田中尚さんは、ダイソーの誘致を決めた理由について
ダイソーは日用品の取り扱いが中心なので、これまで応えきれていなかったお客さまのニーズに対応できるようになる。コロナ禍を経て生活必需品を求める方々も増えてきたと感じるので、ダイソーの出店が顧客満足度を高めることにつながると考えた
と説明。
実際、富裕層といえど、世は「メリハリ消費」の時代。
お金をかけるところにはかけて、かけないところにはかけない。
それはお金持ちであっても変わらないのです。
ひと昔前なら、「ラグジュアリー空間に廉価品が並ぶのはブランドイメージに良くない」と言われていましたが、それだけ生活者マインドに変化があったことへの証です。
…ハイブランドからすると…、嬉しくないかもしれませんが…(汗)
ファッションのサブスク「メンズ」が登場
最後は、私が今、大注目している百貨店三銃士の1つ、大丸松坂屋百貨店の新しい挑戦をお届けしたいと思います。
大丸松坂屋では、以前からファッションのサブスクサービス「アナザーアドレス」が好調でしたが、今月の1日からメンズの取り扱いがスタートしたのです。
〈WWD JAPAN / 2023年2月28日〉
同サービスは、スタンダードプラン(毎月3着/月額11,880円)と、スタンダードプラスプラン(毎月5着(配送チケット4枚)/月額22,000円)、ライトプラン(毎月1着/月額5,500円)の3種類のプランがあり、百貨店ならではの質の高いアイテムがレンタルできると、評価が拡がっておりました。
一方、「メンズの取り扱いはないの?」という要望も多く、満を持しての今回の発表に。
メンズ商品は80ブランドをラインアップし、在庫は約2万5000着。
既存のレディスと同じく「MAISON MARGIELA」「MARNI」など海外のハイエンドブランドの他、「ANREALAGE」「BEAUTIFUL PEOPLE」「CINOH」など国内のデザイナーズブランドも揃います。
(レディスと同じく月額11,880円で3着まで、5,500円で1着レンタル)
責任者の田端竜也さんは
世界のファッションレンタルサービスを見渡しても、メンズ事業が成功しているサービスは見当たらない。“鬼門”と言える領域だ
と不安を覗かせつつも
(サービス開始から)これまでの2年間で多くのお客から要望があった。より多くの方に、自由で新しいファッションの体験を提供するのが『アナザーアドレス』の役目。男性のご利用だけでなく、パートナー同士で服を選び合うような使い方も楽しんでいただきたい
と抱負を述べております。
実際、メンズ商品のうち約5割は、女性のオーバーサイズでの着用にも対応するなど、時代に即したしたたかな戦略が垣間見えます。
というように、百貨店各社さまざまな新しいチャレンジを見せてくれています。
いちマーケターとして、そして、小売業協会・生活者委員会のコーディネーターとして、どのように業界に貢献できるのか。
日々、武者震いの連続です…
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