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サッカーから学ぶ「新時代」の経営術
column vol.685
デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんの【すべての日本企業は真似するべき…V字回復を遂げるためにJリーグがやった改革の中身】という記事に、これからの時代の経営のヒントを感じたので共有させていただきます。
〈PRESIDENT Online / 2022年6月10日〉
今、日本に求められるのは“脱自前”
松江さんは、本当に重要なのは『事業規模』ではなく『収益性』であると指摘し、経営において自社の強みを明らかにし、自社でやることと、アウトソーシングできるところを分ける重要性を説いていらっしゃいます。
外部と比較して相対化することにより、自らが行った方が良い仕事、自分にしかできない領域、または、今は強みと言えないまでも将来に向けてより価値を高められる領域を見極めてゆくことが必要というわけです。
具体的には、「3つの視点」から仕事のあり方を見直してみる。
①分解する
②デジタルを活用する
③外と組む
という3点で、デジタル技術の活用によって自動化もしくは代替できるか、外部のプレイヤーによって代替できるか、という観点で見直すと、やがて代替できないものが出てきます。
それこそが自社の強み。ここに人的リソースを集中させるというわけです。
その一つの好事例として挙げていらっしゃるのが、JリーグのV字回復です。
前チェアマンである村井満さん(2014年 - 2022年/今年3月より野々村芳和さんに交代)はリーグを盛り上げるため、就任当初に全会一致で決めたのが
裏側の“デジタルプラットフォーム”はJリーグ側が受け持つ。同時に、各クラブはサッカーに注力する
という方針でした。
個々のクラブが自前でITに投資をすると、クラブの財政にとって大きな負担になりますし、実際には重複する部分も多く発生します。
そこで、JリーグがECやデータ記録、ファンエンゲージメントなどのシステムを受け持つ代わりに、クラブは「本業であるサッカー」を競い合う、という戦略にしたのです。
それからは、北海道から九州・沖縄まで、気候風土はもちろん、地域住民との距離感が全く異なる中で、それぞれのクラブは自分たちの目指すサッカーを言語化し「おらが町のサッカー」を磨くことを徹底。
Jリーグのデジタル改革のスタートは、“本業の再定義”でもあったというわけです。
Jクラブが提供する本当の価値
そして、Jリーグはプロスポーツの持つ役割を「プレーする」「観る」「支える」という3つのモジュール(単位)に分解。
本来スポーツには、感動によって人の心を動かせるという“強み”があります。
地域を「支える」という役割も重要で、Jリーグの活動「シャレン!」は、積極的な社会連携により、地域の課題解決に貢献する取り組みとして注目を集めています。
例えば、福島ユナイテッドでは、クラブ内に農業部を作り、地元農家と一緒になって、選手が生育から収穫までを行っているとのこと。
さらに「ふくしマルシェ」として、ホーム、アウェーに限らず、全国の試合会場に出店し、今では公式オンラインショップも開設するなど、農業支援に留まらない、新たなビジネスとして期待されているのです。
ちなみに我が横浜のF・マリノスは、コロナの影響で客足が遠のく飲食店と住民を結ぶことを目的に、ファンやサポーターなどから情報を収集。
ネット上に「ホームタウンテイクアウトマップ」を作成して地域に貢献しています。
そして、松江さんはこのように締め括ります。
スポーツが持つ“本来の強み”を活かした企業や地域社会との連携は、他者との連携を推し進めることで、自らの“強み”を見極め、さらに伸ばす。
まさに“脱自前”。
自社の強みを顕在化し、研磨し、さらにはその強みの可能性を広げていく。
Jリーグが単にエキサイティングな試合を提供するという点だけに留まらず、「感動を提供」するというところまでに広げたところが、地域密着の肝。
地域のハブとしての役割に行き着いている現状を見ると、非常に勉強になりますね。
サッカー的思考で「自律人材」に
サッカーで言えば、もう一つとても勉強になる好事例がありました。
楽天大学学長・仲山進也さんの【ビジネス環境が激変するVUCAの時代 楽天大学学長「サッカー的思考で自律的な人材に」】という記事です。
〈NEWSポストセブン / 2022年6月11日〉
予測不能なVUCA時代を乗り切るためには、オランダの名門クラブ・アヤックスがかつて提唱していた『TIPS』という考え方が参考になるとのこと。
【T】テクニック
…高難度の技ができる意ではなく、基本動作を精度高くできる技術力。
【I】インテリジェンス
…流れの中で精度の高い判断ができる思考力。
【P】パーソナリティ
…従順な人・いい人の意ではなく、チームワークができる性格。
【S】スピード
…最高速度よりも動き出しの速さや機敏さ、さらには判断の速さ。
4つを順番に見ていくと、非常に共感できます。
テクニックでは「基本」の大切さが挙げられていますが、いつの時代も凡事の徹底が非常に重要だと思いますし、超過労働問題をクリアしながらクオリティの高い仕事を行うためには、判断の速さもポイントになります。
チームワークは言うまでもなく、そして「動き出しの速さ」が変化の激しい時代はまさにカギに。
よく「先行者利益(有利)」という言葉が聞かれますが、まずは6割でも良いから始め、修正を加えながら進んでいくという意識が求められますね。
そもそもJリーグは時代のキーワードである「ファンマーケティング」「コミュニティマーケティング」の知恵の宝庫です。
「スポーツビジネスだから、ウチの業界とは違う」と思いがちですが、全ての分野の経営者がヒントにできるこれからの時代のロールモデルであると感じます。
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