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「経営者」が第一に考えること

column vol.616

「ブラック企業」のみならず「ホワイト企業」でも離職率が上がっているという衝撃記事をご紹介した昨日。

では、経営者は求心力を高めるためには何をしたら良いのでしょう…、と非常に考えさせられます。

答えは分かりませんが…、とっかかりの一つに松下電器創業者松下幸之助さんの

「経営というのは、全社員がどうすればモチベーションを持って仕事ができるかを追求することだ」

という言葉に大きなヒントがあるような気がするのです。

昭和の「家族的経営」とは何だったのか?

この松下幸之助さんの言葉は、ジャーナリストの田原総一朗さんのインタビューの中にありました。

〈PRESIDENT Online / 2022年4月2日〉

モチベーション、つまり「働きがい」

当時は日本的経営ということで、「終身雇用」「年功序列」という日本独自の経営が行われていました。

会社は社長を家長として、子どもである社員がその下にいる。

一つの家族として社員が守られており、その恩恵に対して社員は会社に対して忠誠心を持ち、安心して仕事に取り組んでいたのです。

日本の戦後は貧しい時代から始まったので、「安心」が働きがいを大きく後押ししていたことは間違いないでしょう。

今は「心理的安全性」にスポットライトが当たっていることにも通じますね。

「安心」を軸に社内に求心力が生まれ、全員が一つの目標に向かってスクラムを組んで頑張る

これが、欧米にはない日本企業のエネルギーを生み、昭和の時代は破竹の快進撃を続けたわけです。

しかし、バブルが崩壊し、日本は米国型の能力主義成果主義に移行していきました。

そこから「失われた20年」「成長しない30年」を経て、令和の時代を歩んでいます。

年功序列、終身雇用など昭和の制度が、今の時代に則しているか否かは本日は置いておきますが、松下幸之助さんの言葉を見つめていると、「全社員がどうすればモチベーションを持って仕事ができるかを追求する」という前提を今の日本企業は保っているかは分かりません…。

「横並び」を捨てたら「上」が見えてきた

昭和の経営を語る時、「制度」や「慣習」についてフォーカスされがちですが、本当に見つめ直さないといけないのは「その時代の哲学」だと感じています。

「モチベーションの最大化」

ここにもう一度立ち返ることが、今の時代の大きなヒントになると思うのです。

最近、面白いと思った事例が、現代ビジネス【ここにきて『獺祭』の旭酒造が、新入社員の給料を突然「10万円上げた」意外なワケ】でしょう。

〈現代ビジネス / 2022年4月1日〉

旭酒造と言えば、人気のお酒「獺祭」で有名な会社。

この春、入社する新入社員(製造部門)初任給を約21万円から30万円に、50%近くもアップさせたのです。

当然ながら、給料が上がったのは新入社員だけではありません

同社では給料を上げた理由をこのように述べています。

旨い酒を世に送り出すには、製造部門のスタッフが一番の肝になります。彼らに自分たちの仕事が評価されているとプライドを持って働いてもらうためには、給与を上げるしかありません。

これまでは、山口県の同じような業種なら、こんなもんだろうという「横並び」の給与設定だったそうです。

もちろん

カネで社員の心は買えません。

とも語っています。

しかし、「他より高い給料をもらっている会社に見合う酒づくりとは何だろう」と考えるきっかけにはなります。

誰のために、どのように役に立つのか?

何より大切なのは、社員一人ひとりが最大限良い仕事に向かうために自発的に考える状況をつくることです。

それを徹底するためには、「誰のために」「どのように役に立つか」で考えるように導くことです。

〈幻冬舎GOLD ONLINE / 2022年3月22日〉

ミッション・パーパスを考えることもそうですが、一商品に対しても同じで、どんな人にどのように楽しんでもらいたいかを考える。

旭酒造の獺祭なら、どんな方にどんな楽しみ方をしてもらいたいお酒なのかを突き詰めるのです。

そして、それを実現するためにはどうすれば良いかと。

そのために業務時間外でも旨いお酒を探求したくなるような想いが自然と込み上げてくるようなら、きっと、その仕事は「働きがい」が溢れているはずです。

その最初の考えるきっかけが「給料の大幅アップ」になるかもしれません。

主体的に考え、こだわって作り出した商品から誇りが生まれ、また次のプライドを育てていく

経営とは「社員のモチベーションの最大化」を図ることが第一、と言えるのではないでしょうか。

求心力のある会社とは、単にホワイト企業であるだけではなく、その前提の中で努力し続ける企業なのだと学んだ本日の事例記事でした。

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