民富を叶える「安心の生産」
column vol.1135
こちらは、中国戦国時代の思想家である孟子の言葉です。
〈東洋経済オンライン / 2023年10月10日〉
孟子といえば、弱肉強食の「覇道政治」ではなく、礼に基づいて行う仁義の政治「王道政治」を目指した偉人として知られていますね。
その孟子は国富ではなく「民富」が大事であると説いています。
つまり、真の国力とは税収の多さである「国富」ではなく、国民の資産である「民富」であるということです。
そして、一歩踏み込んで考えると、もしかしたら豊かさにとって本当に必要なのは、資産というより「安心感(納得感)」なのではないかと感じています。
その心について、本日はお話ししたいと思います。
お金が安心にならない社会
現在の日本の状況に照らし合わせみると、物価高により昨年度の国の税収が過去最高を記録する一方で、実質賃金はマイナスが継続。
…まさに孟子の言う国富は増える一方、民富は苦しくなり続けています…
もちろん、政府もそこは理解しているでしょう。
だからこそ「経済、経済、経済」と連呼して、何とか来年の春闘で5%以上の賃上げを実現し、「物価高→賃上げの好循環」を生み出そうとしているわけです。
…もちろん、政策の内容や背景については、さまざまな意見があるでしょう…
そこは一旦置いておいて…、「民富」についてフォーカスしたいと思います。
民富を実感できるための資産もしくは所得というのは一体いくらなのでしょうか?
これは、子どもが何人いるのか、どんな生活をしたいのか、人によってそれぞれ違うでしょう。
もちろん、個人的にも考えていますが、「お金」をベースに「富」を考えていくと、なかなかその基準が難しいと感じています…
今の年齢なら、ある程度は所得に合わせた生活はできる自信はありますし、
逆に、老後は「2000万円問題」に対して、それ以上のお金を貯めたとしても、その頃、ハイパーインフレが起きていたら元も子もありません…
(その頃の自分の労働力がいかほどなのかも分かりませんので…)
もちろん、お金はあることに越したことはないのですが、お金を基準にすると一向に安心が得られないというのが正直なところです…
分配ではなく「生産手段」を提供する
一方、孟子のある政策に一塁の望みを感じます。
それが「井田法」です。
これは、土地を「井」の字のように9等分して、真ん中の1区画を公田として国家が確保し、残りの8区画を8世帯の国民に分配するという土地整理法。
土地を与えられた8世帯は、自らの土地で穀物や桑などを植え、そこで得た収入を無課税で丸取りできます。
その代わり8世帯共同で1つの公田を管理し、そこから得られた収入を税として納入する。
つまり、国民に現物を支給するのではなく、生産手段を提供したのです。
実はここにピンと来ています。
なぜなら、今の日本(政府)は自立(律)を求めているからです。
というのが基本姿勢です。
この方向性が良いか悪いかは、これまた置いておいて…
自立(律)を求められているならば、生涯活躍できるだけの生産手段(ビジネスパーソンとしてのスキルやノウハウ)や、いざとなったら老後も活躍できるような環境整備があってこそ、私は安心できるかもしれません。
「生産の手段」がある実感
ここで重要なのが国民側の実感です。
確かに政府は「生産の手段」の提供を進めています。
例えば、リスキリングについては「教育訓練給付金」や「人材開発支援助成金」などの支援の制度だったり
会社員から経営者(資本家)になりたい人はスタートアップのための融資制度や、個人M&Aしやすい制度改革などなど、生産の手段は増えたと感じています。
資産運用についても、来年から、これまでの制度を拡充した新NISA(少額投資非課税制度)が始まりますね。
金銭面だけではなく、場の提供も含め、今後も生産の手段の提供は進んでいくでしょう。
一方、そうした「生産手段」を提供してくれている(もしくは、しようとしている)という実感を国民側が持っているかどうか…?
実際は、制度導入が進んでいても、情報を積極的に取っていかないと、なかなかそうした恩恵を活かすことはできず、仕事や家事、育児に奔走している人ほど、情報格差が生まれ、そのことにより経済格差がさらに広がっていく可能性もあります。
やはり、この年になって感じるのは、富だけではなく情報も一部の人たちに集中しやすいということ。
実際、コロナ禍の時も、情報感度の高い(情報のネットワークが充実している)飲食店経営者と、そうではない方で恩恵の受け方が違うなと感じました。
ですから、理想論を言わせていただければ、政権・政党問わず、行政を担う方々には、制度の拡充だけではなく、認知・理解・活用を促す取り組みも両輪で行っていただくと良いのではないでしょうか。
つまり、「安心(納得)の生産」です。
国民に支援を用意するということに留まらず、安心感をどう提供していくかという視点になります。
政府も安心・納得を提供するという軸を大切にしようとすれば、説明だけではなく民の声をどう活かしていくかという意識もさらに高まっていくでしょう。
つまりは、政策を通して政府と国民の理解交流を促進していくという考えです。
SNSやオンラインアプリも発達していることですし、そこで十分に政策説明していただく。
そこから生まれた向上のための意見を重ね合わせ、政府と国民が共創しながら、民富をつくり上げていくというイメージです。
ビジネスの世界では、経営者と従業員、企業側と顧客の垣根がシームレスになり、共創経営が進んでいます。
政治の世界も理想は同じではないでしょうか。
………。
…はい、理想論ですね…、ただ、そんな新しいスタイルの政治が生まれたらと、ちょっと夢見てみました。
そういう意味では、今回の孟子の言葉が私にとってもヒントになります。
「ビジネスヒントをお届けする」というのが、このアカウントのコンセプトですが、今まで以上に明るい兆しをご提供し、少しでも未来に対する安心感を生み出したいと改めて思いました。
〜ということで、今後も日々精進して参ります。
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました😊
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