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「多様性」時代の対話術

column vol.708

副社長になってから4期目がスタートし、気がつくと今期も第一四半期が終了していました。

過去2年コロナの影響で右往左往し…、まずは「黒字経営」に集中して社内一丸、がんばって参りましたが、今年はおかげさまで経営は順調で、組織の底上げを図っていきたいと考えております。

その上で改めて今後についてさまざまな社員と話していると、コロナ前によりも「多様性」が強まってきたという印象を受けています。

それまでは毎日、皆で出勤し、朝から晩まで時間を過ごす。

良くも悪くもお互いの存在が影響し合い同質化していたと思います。

いわゆる同調原理ですね。

一方、リモートも導入し、一人一人がさまざまな人、場と繋がることで、多様な考えが育まれてきており、同調原理も薄まっていることで、自在に自分の考えを発信するようになったと感じています。

経営する上では、もちろんまとめにくくなってはいるのですが、この多様性をどう活かすかが非常に重要なポイントであるとも捉えています。

「多様性」が組織を強くする

多様性は生物学的には人類生存のための重要なファクターになります。

同質であると全滅する可能性が高いからです。

例えば、リーダーが「あの山を超えたところに果物の木がたくさんあるから行こう」と言って、全員が即座に賛成して向かったら、実は危険地帯だった…、なんてことがあります。

「いやいや、危ないんじゃないの。自分はちょっと残って様子見するよ」という人たちがいるからこそ、種を繋いでいけるというわけです。

後者の人は前者の人たちからすると「ネガティブ」だと言われるかもしれませんが、ポジティブ、ネガティブ、両方いないと危ないのです。

ちなみに、心理学では「エモダイバーシティ」という言葉があります。

〈健康経営 / 2022年5月24日〉

日本語には「感情の多様性」と訳され、多様な感情を受け入れている状態のことを言います。

ポジティブとネガティブ両方の感情のグラデーションを心に持っている人ほどウェルビーイングが高く、心身ともに健康であると考えられています。

組織運営においても、エモダイバーシティの高いチームほど、チーム全体の創造性が高くなる傾向にあるという研究結果もあるそうです。

さまざまな考え、感情を内包することはリーダーにとっては大変なことですが、これを歓迎できる人が組織を向上することができるわけなのです。

予測不能のVUCA時代において、サーバント(奉仕)型のリーダーに注目が集まる理由も分かりますね。

多様性を理解する上での「はしご」

多様性を内包するということは、当然ながらリーダーにない考え方や「感じ方」があります。

それを理解する上で良き方法が「推論のはしご」を共有することです。

〈PRESIDENT Online / 2022年7月4日〉

経営コンサルタントの松岡保昌さんは、2組の夫婦を例にして「感じ方の違い」を解説しています。

ある2組の夫婦が同時に引っ越してきます。それぞれの夫婦がふと窓から外を見ると、道端で近所の奥さんたちが井戸端会議が行われています。

そして、それぞれの夫婦が次のように話し合います。

【Aさん夫婦の会話】
夫「ちょっと見て。あの体格のいい人がこのあたりを仕切っているみたいだね」
妻「ということは、あの人にうちのことを知られると、あることないこと言いふらされるかもしれないから、あの人と付き合うのは慎重にしたほうがいいわね」
夫「たしかにそうだね。噂話のネタにされるのは嫌だし、尾ひれがついて広がると怖いからね」
【Aさん夫婦の結論】
仕切っている体格のいい人とは慎重に付き合う。積極的には関わらない。
【Bさん夫婦の会話】
夫「ちょっと見て。あの体格のいい人がこのあたりを仕切っているみたいだね」
妻「本当だ。ということは、娘をどこの塾に通わせるといいかなど、ご近所の情報を一番持っているのかもしれないわね」
夫「そうだね。あの人に相談に行くのが早くて確実そうだから、早速明日、菓子折りでも持って挨拶に行ってみようか」
妻「そうね。賛成。そうしましょう」
【Bさん夫婦の結論】
仕切っている体格のいい人と積極的に付き合う。

どうでしょうか?まるで結論が違います。

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出所=『こうして社員は、やる気を失っていく』

だからこそ、事実から結論までの思考のプロセスをリーダーは確認しかなければなりません。

「どんな事実から」→「どういう推論をして」→「どういった判断や結論を出すのか」

このように、はしご式で相互理解を深めていくのです。

私も競合コンペなど重要な提案のオリエンは、メンバーの思考のプロセスを必ず確認するようにします。

オリエン後、中間確認、プレゼン前。

段階的にチームとしての考えにズレが生じていないかを擦り合わせる。

同じ事実を目にしても、捉え方がぞれぞれ違うというのは意外と注意すべき落とし穴なのです。

人が「自ら考え」動き出す対話術

メンバーの考えや感じていることを理解し合えたら、今度は自発的に動いてもらうことが理想ですよね。

そこでご紹介したいのが、コーチングの大家、ジョン・ホイットモアさんが提唱した「GROW(グロー)モデル」です。

〈DIAMOND online / 2022年7月3日〉

目標の明確化Goal)
現状の把握Reality)
選択肢を探るOptions)
実行への具体的な意思Will)

私の中でポイントにしているのが、①から④までステップが進むたびに、よりイニシアチブを相手側に移していくことです。

目標と現状の把握は、相手が難易度が高いと感じていたらリードしていきます。

しかし、具体的なアイデアや実行については、なるべく「やらされている感」を排除していきたい。

最後は本人の中で「自分でやっている感(手柄感)」を感じて欲しいからです。

自転車の補助輪無しで乗る練習みたいなものです。

最初は支えておきながら、「イケるな」と思ったら手を離し、見守る

最後は「自分一人でできた!」という成功体験をどう感じてもらうかが重要です。

「支える」→「見守る」

案件の難易度が上がる度に繰り返していく。

そして、「推論のはしご」や「GROWモデル」はリーダー育成にも大きな力を発揮してくれます。

多様性を理解し、最適解を生み出し、社員一人一人が主体的に行動できるように導いていく。

当社でも、この能力を私も含めて幹部メンバーたち皆で高められると、次の発展に繋がっていくと感じています。

そんなことを頭の中に浮かべつつ、改めて気合いが入る今日一日でした。



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