日本のマンガはピンチ?チャンス?
column vol.756
一昨日、【日本のお家芸「マンガ」でも韓国が猛追】という記事で、韓国のマンガ産業の活況が紹介されていました。
〈NEWS SOCRA / 2022年8月21日〉
その立役者になっているのが「ウェブトゥーン」。
これは「ウェブ(Web)」と漫画を意味する「カートゥーン(Cartoon)」が合わさった造語で、ネット上で連載されているコミックを指します。
スマホに合わせて縦型にスクロールして読んでいくという形が日本でも浸透してきていますが、このスタイルを定着させたのが韓国です。
まずは韓国ウェブトゥーンの産業規模を確認しながら、日本マンガとウェブトーンのこれからの関係を探っていきたいと思います。
世界を席巻する韓国のウェブトゥーン
カカオグループによると、カカオのウェブトゥーン・プラットフォーム「ピッコマ」は、世界最大の漫画市場である日本で2021年、7227億ウォン(約722億円)の年間取引額を達成。
これは前年比74%増で、2016年のサービス開始以来の累計取引額も1兆3000億ウォン(約1300億円)を突破しています。
そしてピッコマは、2022年3月にフランスでもサービスを開始し、今後はヨーロッパ全域に活動範囲を広げる計画となっております。
日本では「LINEマンガ」という名前でサービスを行っている「ネイバーウェブトゥーン」は、ピッコマと並ぶ韓国の2大プラットフォーム。
2020年7月からは、日本市場でピッコマにシェアトップの座を明け渡しましたが、それでも世界中で月当たり1000億ウォン(約100億円)近い売り上げを記録しています。
というように、ウェブトゥーンは今や韓国文化産業のメインストリームの1つ。
発展していくに伴ってウェブトゥーン作家たちの作品を管理してくれるエージェンシーも増えています。
ちなみに作家の数も大幅に増えてきており、ウェブトゥーン分析サービスの企業によると、2022年3月時点で、韓国には37のプラットフォームが存在。
計9922人の作家が活動しています。
日本で人気を集めた韓流ドラマの『梨泰院クラス』も、ピッコマのウェブトゥーンが原作。
2016年から無料公開され、2018年7月に完結した直後に有料サービスに移行し、カカオウェブトゥーン史上最高の売り上げを記録。
1000万人の読者を獲得した超ベストセラーとして名を刻みました。
NEWS SOCRAの「韓国猛追」のタイトルは、まさにその勢いを表していますが、一方で、今後そのウェブトゥーンにおいて、日本マンガが躍進するのではないかという希望満ち溢れた見解もあります。
ウェブトゥーンが切り拓く「日本マンガの未来」
LINEマンガを運営するLINE Digital Frontier株式会社の代表取締役の2人、金信培さんと高橋将峰さんのインタビュー記事が興味深かったので、共有させていただきます。
〈ORICON NEWS / 2022年8月16日〉
金さんは「日本には歴史的に豊かなマンガ文化があり、プロ・アマチュアともにクリエイターの質量は世界でも類を見ません」と話しており、日本の優秀なクリエイターと世界標準のフォーマットであるウェブトゥーンを掛け合わせた“日本独自スタイルのウェブトゥーン”を生み出していくことへの可能性を見出しています。
また、ウェブトゥーン内に留まらず、映像化などを通して作品の価値を最大化させていくことも視野に入れていらっしゃいます。
今年5月にはLINE Digital Frontierとドラマ『愛の不時着』などを手がける韓国のドラマ制作スタジオ・スタジオドラゴンが提携した合弁会社「スタジオドラゴンジャパン」の設立が決定。
日本オリジナルのウェブトゥーン作品の映像化を推進することを発表しています。
また、同じく5月にNAVER WEBTOON社、TBS、SHINE Partnersとの3社合弁で、韓国にウェブトゥーン制作の新会社「Studio TooN」を設立することも明言。
こうした動きから、“日本発ウェブトゥーン”の発掘や映像化は、さらに加速していくと見られているのです。
また、未来の芽を育む取り組みも進行しています。
LINEマンガではアマチュアが気軽に投稿できるプラットフォーム『LINEマンガ インディーズ』を運営。
ここからAnimeJapanの「第5回アニメ化してほしいマンガランキング」1位にも選ばれた『先輩はおとこのこ』などのヒット作が誕生しています。
さらに、年末に発表される『LINEマンガ インディーズ大賞’22』の応募受付が現在行われているなど、話題に事欠きません。
「マンガフィケーション」が加速
ウェブトゥーンというグローバルプラットフォームにより、意欲の高い若手クリエイターがますます成長していく。
マンガ好きな胸は期待で膨らむのではないでしょうか?
期待ということであれば、「マンガ×テクノロジー」ということで、もう1つ注目すべき動きがあります。
講談社と集英社が本気で「ゲーム開発支援」に乗り出していることです。
〈Yahoo!ニュース / 2022年8月19日〉
8月5~6日にかけて京都市の「みやこめっせ」で開催された、インディーゲームの展示イベント「BitSummit(ビットサミット)」にも両社揃って出展。
「マガジン」や「ジャンプ」など、各社が長年にわたり多くの漫画家を輩出した新人コンテストによる人材の発掘、育成ノウハウなどをゲーム業界に持ち込み、新たなビジネスの確立を目指しているからです。
講談社は、2020年9月からゲーム開発支援プロジェクト、その名も「ゲームクリエイターズラボ」の運営を開始。
「年間最大1000万円支給しますから、好きなゲームを作りませんか?」というセンセーショナルなキャッチコピーが話題になりましたね。
現在までに2000件以上の応募があり、21タイトルの開発がすでに進行。
そのうち3タイトルは「BitSummit」の開催に合わせて、8月6日からアーリーアクセス、およびデモ版の配信も開始され、いずれもユーザーからは好評とのことです。
一方、集英社は「集英社ゲームクリエイターズCAMP」と題した支援プロジェクトを昨年から開始。
今年の2月には株式会社集英社ゲームズを新たに設立し、開発資金の援助の他、異なる業種間での人材コラボレーションの場を提供するなど、支援体制の強化を着々と進めています。
よく、ゲームの要素を他業種に展開することを「ゲーミフィケーション」と言いますが、逆にマンガ界の優れた要素を吸収している。
さながら「マンガフィケーション」とでも呼んでおきましょうか。
本家ゲームメーカーには無い新たなノウハウで、インディーゲームを盛り立てていけると面白い展開になっていきそうですね。
今後もこの分野の動向を注視していきたいと思います。
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