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ジェンダーギャップ解消への世界的潮流

column vol.158

昨日、日経新聞を読んでいると、「日本の労働生産性、G7最下位 OECDで21位」という記事が目に飛び込んできました。

2019年の日本では47.9ドルと試算。アメリカ(77ドル)の6割にとどまり、統計を遡れる1970年以降、日本はG7最下位が続いています。

先日もnoteで書きましたが、「子どもの幸福度ワースト2位」など、こういった世界ランキングが発表される度に日本の現状に残念な気持ちになってしまいます。

そういえば、去年のこの時期にもガッカリした記憶がありました。

世界経済フォーラムの「Global Gender Gap Report 2020」の順位が153ヵ国中121位(前回は149ヵ国中110位)だったことを思い出します。

「ニイマル・ニイマル・サンマル」を合言葉に、「2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度」という政府目標がありましたが、達成年であったはずの今年、残念ながら先送りされました。

政府は新たに「2030年代に指導的地位にある男女の比率が同水準になることを目指す」とする目標を掲げたのです。

しかし、一方で世界は確実に動いています

ゴールドマン・サックスの明確な意思

アメリカではカマラ・ハリスさんが新副大統領に着任するなど、新政府人事は女性登用が進んでおり、さらには運輸長官にオープンリー・ゲイのピート・ブティジェッジさんを起用することとなりました。

さらに、あのゴールドマン・サックスの宣言に世界中が注目しております。

〈AMP / 2020年11月29日〉

自社内での女性活躍を後押しするために数々のプログラムを設けるだけでなく、今年1月には、新規株式公開(IPO)の引受業務において、上場を希望する欧米企業に最低1人の女性取締役の選任を求めることを発表。

CEOのデービッド・ソロモンさんは「欧米企業で取締役候補に多様性が欠ける場合、特に女性が一人もいない場合は業務を引き受けない」ことを明言しています。

7月から新しい指針を適用し、2021年からは最低2人の就任を要請。

ちなみに、こういった指針は倫理的・人権的に重要ですが、経済的恩恵も大きいとのこと。ジェンダーギャップ解消を含めた多様性の向上は、イノベーションと収益性を高めることが分かっているそうです。

Peterson Institute for International Economicsの調査によると、女性リーダーを0%から30%に増やす収益性が15%向上

McKinsey「How inclusion matters」のレポートでも、同社が調査した中で最も女性役員比率が高かった企業は、最も低かった企業と比べて実に48%もアウトパフォームする確率が高いと報告されました。

多様性の向上がさまざまな点でいかに重要かが見えてきます。

女性の経営者が少ないドイツの改革

昨日、話題に挙げたメルケル首相を輩出したドイツですが、産業界においては女性の経営者が少なく欧米では最低レベルにあるそうです。

〈COURRiER Japon / 2020年12月4日〉

ドイツの上場企業トップ30の経営陣は中高年の男性が占めており、女性取締役の割合が少ないことがかねてから問題視されていたそうですが、ついに上場企業における女性取締役の登用を義務化する法案が合意されました。

今後は取締役が3人以上いる上場企業においては、1人以上の取締役を女性にしないといけません。

日本の経済界でも危機感を抱いており、ついに経団連が動き、30年までに企業役員の女性比率を30%以上とすることを目標化しました。

経団連が女性の割合について数値目標を定めるのは初めてであり、日本のジェンダーギャップへの取り組みが前進することが期待されています。

ちなみに、女性の実感はどうなのでしょう?

エン・ジャパンが今年の2月〜3月に行なった意識調査によると、53%「女性が活躍できる場が広がった実感がある」と回答。

〈エン・ジャパンWebサイト〉

実感を持つ要因第1位「結婚・出産後も働き続ける女性が増えた」実感が持てない要因第1位「管理職につく女性が少ない・いない」。やはり、管理職へのステップに難ありということでしょう。

ギャップを埋めないと経済が伸びない

ジェンダーギャップの解消と経済の活性については、ライフネット生命保険創業者である出口治明さんと、元厚生労働事務次官の村木厚子さんの対談でも指摘されています。

〈中央公論 / 2020年12月19日〉

出口さんが以下のように語ります。

日本を含めて、世界はサービス産業化していますよね。ではそのユーザーは誰かといえば、どんな統計を見てもだいたい七割は女性です。ところが、産業の担い手が男性ばかりだとすれば、需給ギャップは自然と広がりますよね。要するに、日本経済を支えていると自負している五十~六十歳代のおじさんに、ユーザーである女性の欲しいものがわかるんですか、と。

だからこそ、約130の国ではクオータ制(一定数を女性に割り当てる制度)を取り入れて女性を登用し、需給ギャップを埋めることで経済を伸ばそうとしています。

ちなみにですが、当社では、72%が女性社員です。

この比率は私が入社した約20年前から変わらないのですが、小売業の顧客の大半が女性ということもあり、当社では「顧客の代理人」として女性の感性や知見を活かしながら業務にあたっています。

幹部については、私も含めて11人いて、6人が女性です。

そういう環境で仕事をしてきたこともあり、出口さんのお話にはとても共感できます。

多様性が求められる今日において、女性はもちろん、すべてのジェンダーを重要視する。その考えにコミットできる国や企業、個人が輝ける時代になっていくのだと思います。

まずは政府と経団連が決めた10年後の世界に期待を寄せながら、その時のnoteで良い話ができたら良いと願っています。

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