「オチをつける」の落とし穴
column vol.298
「会話にオチをつける」のは、もはや日本の常識になっていますが、どうやらオチ偏重型になり過ぎることによる落とし穴もあるそうです。
〈新R25 / 2021年5月8日〉
そう説くのは、『嵐にしやがれ』『しゃべくり007』など人気番組のディレクターとして活躍してきた本橋亜土さん。『ありふれた言葉が武器になる 伝え方の法則』の著者としても有名な方です。
その意味とは一体何なのでしょう?
会話の肝は「掴み」にあり
相手があなたの話をちゃんと聞くかどうか。それを判断するのは最初の1分が肝心とのこと。
つまり、「掴み」が重要だということです。
掴みを制すもの、会話を制す
本橋さんはそこまで言い切っています。
番組冒頭に配置されているダイジェスト映像のことを「オープニングアヴァン」と言うそうですが、テレビ業界ではここでいかに視聴者の興味を引くかが重要となります。
今週の「○○(番組名)」は、自由が丘最新スイーツ&ゼッタイ 目を惹く、超インスタ映えスポットを一挙ご紹介!そこで目にしたものは!
よくあるオープニングアヴァンの言い回しです。
要するに、「見どころはココだよ!」「チャンネルをステイする価値があるよ!」 という「番組の魅力」を冒頭で伝えているわけです。
これにより、その見どころを見るまではチャンネルを変えさせなくします。
広告はまず結論から
我々、マーケティング・広告業界も「掴み」が大事になります。
広告制作に携わっている人ならよく分かると思いますが、「広告コピーは結論から書け」と新人の頃に指導されます。
普通は起承転結で描きたいものです。しかし、まずは「結」から書く。広告文は基本的には読まれないもの。だから、まずは読んでいる人に対してベネフィット(恩恵)から先に伝える。そして、自分事化をいち早くしてもらうのです。
「10歳若い肌を手に入れたいと思いませんか?」
まずは商品を通して、読んだ人にとって何がその商品の購入メリットなのかを伝えます。
あとは「10歳若い肌を手に入れることができそうだぞ」という裏付けや補足情報を加えていけば良いわけです。
これは、営業やプレゼンの時も重要になります。
プレゼン(営業)ではまずメリットから話す
広告業界でも、さまざまな企業のプレゼンシートを見ると、やはり伝えたいことのハイライトを最後にもっていきたがる人が多いと思います。
一例ですが
クライアント企業の課題→マーケット動向→解決への着眼→コンセプト→解決のためのアイデア→期待できる成果
こんな流れです。
これだと、クライアントは最後まで自分たちにとってどんなメリットがあるか分かりませんので、モヤモヤした気持ちで前段を聞くことになります。
それよりも、「今回はこの商品を2倍の売上にさせる企画案をお持ちしました」と言った方が相手は興味を持って聞いてくれるようになります。
逆に、言いたいことが最後まで分からない話を聞くと、集中力が散漫になり、最後にメリットを聞いた時にそれまでのロジックがすっと理解できず、唐突に感じてしまうこともあります。
また、たまにあるのですが、最後まで聞いて結局自社に何のメリットがある提案なのか分からない場合もあり、そういう時は変な感じになってしまいます…(汗)。
提案する側も相手にとってどんなメリットがあるのかをしっかり考えてから提案する癖がつくと、より採用率が高くなるかと思います。
兎にも角にも、「オチが大事」というオチ信仰によって、意外と「掴み」の重要さが見落とされているともったいないですね。
大切なことほど最初に言う。自分の伝えたいことが伝わっていないなぁと感じる方はぜひ試していただきたいテクニックです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?