VUCA時代の「人材育成」戦略
column vol.696
現在、マーケティングプランナー職の中途採用や、学生インターンシップの拡大、前期の評価をもとにした社員の成長戦略など、さまざまな点で人的資本の底上げを検討しています。
そういう視点が強まっていることもあり、「人材育成」に関する情報が自然と目に入るようになっているので、本日はそのお裾分けをさせていただければと思っています。
まずは資生堂の新たな取り組みについてご紹介させていただきます。
予測不能な時代は高頻度で対話
人材を育成する上で大切なベースとなるのがモチベーションです。
当たり前ですが、やる気が無ければ人は成長しません。
その対応として、各社従業員エンゲージメント調査などを行っていますが、資生堂がより高頻度に、そして適切に社員に向き合うための一歩を踏み出しました。
〈ZD Net Japan / 2022年6月2日〉
同社は、エクスペリエンス・マネジメント・プラットフォームを提供するアメリカの「クアルトリクス」の管理ツール「Qualtrics EmployeeXM」(EmployeeXM)をグローバル全域で導入。
もともと同社は従業員エンゲージメント調査を2年に1回の頻度で実施してきましたが、社内から
「既存のスケジュールでは、調査実施から結果を確認するまでのタイムラグが長く、迅速・適切なアクションをタイムリーに起こすことが難しい」
「調査の実施による工数負担を軽くしたい」
という声が上がっており、対策が求められていました。
EmployeeXMなら、調査の実施から分析、分析結果に基づいた改善アクションのトラッキング(追跡)など、従業員エクスペリエンス向上にワンストップで対応することができます。
ストレスチェックなど、人事関連のプログラムも同時に管理することが可能であるため、システム管理の手間・コストを削減することができます。
また閲覧者の職位や所属部署に応じて表示内容を調整できるダッシュボードでは、調査の結果と推奨アクションが提示。
このため集計・分析作業時間や手間の大幅削減に加え、結果のスピーディーな確認や発生している問題に対する適切なアクションプランの登録、そのトラッキングも可能というわけです。
変化の激しいVUCA時代は、同時に従業員への対応をより細かく、より的確に、そしてよりタイムリーに対応しなければなりません。
一方、マネージメントスタッフの人的コストを低減しないといけない。
人事計画にもDXによる最適化が求められていることが分かりますね。
次世代リーダーに必須なファシリテーション力
VUCA時代を生き抜くためには、組織の中で「多様性」を内包していかねばなりませんが、一方でさまざまな個性がぶつかることも多くなってしまいます。
そこで、リーダーの能力の中で重要になってくるのが「ファシリテーション力」。
このことは【「リーダーシップ」の正しいステップ】でもお話しさせていただきました。
そちらを裏付けるようなことを、AGC株式会社常務執行役員人事部長の小林純一さんが仰っていたので共有させていただきます。
〈日本の人事部 / 2022年5月26日〉
前提として同社のリーダーシップコンピテンシーの中には、チームを率いるために「傾聴して積極的に対応することによって、双方向のコミュニケーションを行う」という内容があるそうです。
「人を信ずる心が人を動かす」
この言葉はAGCの創業の精神ですが、こういった考え方が、今の世になってさらに重要性が増しているというわけです。
CEOを始め、経営メンバーたちは分け隔てなく社員と対話し、公的にも「対話会」を設けている。
その中で、経営メンバーが若手だった頃の失敗談を話すこともあるそうで、それを聞いた若手がチャレンジする気持ちを高めることに繋げています。
社員が主体的に行動し、多様性を積極的に受け入れていく自律型組織をつくる上でも、リーダーのファシリテーション力、その前の意識を高めていく。
その大切さをAGCからも感じることができます。
フィードバックは大切だけど難しい
リーダー力で言えば、部下へのフィードバックについて興味深い調査結果がありました。
ハーバード大学の研究チームによると、これまでの研究において、ほとんどの人が建設的なフィードバックをしてもらいたいと考えているという結論を出しています。
〈Forbes JAPAN / 2022年6月17日〉※無料会員記事
約2000人を対象にした調査では、例えば、調査中に顔に食べ物や口紅がついている研究者に、そのことを伝える勇気のあった人は、 被験者のうちわずか2.6%でしたが、同様のことを言われたらどう思うかという質問には、86%が「伝えて欲しい」という結果に。
確かに仕事においても、自分が恥をかいたり、困るようなことになる前に誰かに指摘してもらいたいという気持ちは分かります。
しかし、人間そんな簡単ではない。
ネガティブなフィードバック、つまり「ダメ出し」は、反感に繋がる可能性が大きいと言えるでしょう。
自分が困るようなことは避けたいけれど、傷つきたくはない。
この心理に寄り添いながら、言い方やタイミングはもちろんのこと、常日頃から評価や信頼をどれだけ伝えられているかなど、リーダーには非常に高い共感力が求められます。
これは先程のファシリテーション力に通じるところがありますが、私は「共感力」は「創造力」と同じように後天的に育むことができると思っています。
一方、共感型リーダーを育成することは、非常に労力がかかることだと思っており、リーダーは役職を与えて育つものという考えを捨てて、専門職と同じようにじっくりと育てるものだと捉えています。
良きリーダーを育成できることが、会社の今後を大きく左右する。
社内だけではなく外部での教育も含め、育成のノウハウを社内でつくり上げていくことが本当に大事な世の中だと思います。
そして、先日【ヒットを生み出す「マーケティング」の力】でもお話ししましたが、優秀なマーケターの獲得合戦が熾烈になっている状況ですが
きっと同じように、優秀なリーダーの獲得合戦は今以上に熾烈になっていくと予想されます。
リーダー育成に結構投資していった方が良い。そんなことを思う今日この頃です。
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