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「自分軸」とは何か?【後編】
column vol.535
前回はミッション・パーパス時代において、「自分軸」を見つけられなくても「他人軸」で生きていっても良いのではないか、という話をさせていただきました。
『ブスのマーケティング戦略』や、『「フツーな私」でも仕事ができるようになる34の方法』の著者、田村麻美さんは、幼少の頃から「好きなこと」「やりたいこと」ではなく、「自分にできること」で「他人の期待に応えていくこと」を選択して、税理士として活躍。
〈日経Xwoman / 2021年12月28日〉
「目の前の人を喜ばせて、その対価をいただくこと」こそ仕事の本質であり、それで良いじゃないかという結論です。
しかし、田村さんは、のちに自分軸を見つけることになりました。その理由を語るのが今回です。
ただ今一度、なぜパーパス・ミッションを個人にも求められているのかを整理したいと思います。
「人生標準モデル」の崩壊
私が子どもの頃は、これが何となくみんなの幸せのカタチだよね、という人生80年の標準モデルがありました。
良い学校を出て、良い会社に入り、良い給料を貰って、家族を持ち豊かに暮らしていく。
就労中はやりたいことがあっても老後に回し、自分の意にそぐわないとしても生活のために我慢する。
しかし、終身雇用制は崩れ、昨年は45歳定年説も飛び出し、ジョブ型雇用など成果主義への移行も社会全体で見られます。
そもそも2020年に倒産した企業の平均寿命は23.3年なのだから、会社に必要とされている人でさえ、転職しなくてはならないかもしれないのです。
しかも、我慢して無事定年を迎えたとしても、年金など金銭的な不安は付き纏い、さらには100年人生、いや最近では120年人生かもしれないと言われる中、果たして他人軸だけで生きられるのか?
仕事の本質は他者貢献であるという本質は前提としても、そんなに人は他人のためだけにも生きられない。
「今は我慢」と思うようにしたとしても人生80年時代よりも就労の期間はずっと長く、そして安定は約束されないのです。
だからこそ、自分が「何のため」に頑張っているのか、その意義を明確にしておきたい。その方が心の支えになるからです。
もちろん、「子どものために」ということも正解です。でも、子どもが自立した後の仕事はどうしましょう?
100年人生時代は75歳ぐらいまでは働くようになるのではないかとも言われています。仮に50歳で子どもが自立したら、あと25年の意義は考えたいところです。
そんな時代背景も踏まえつつ、田村さんが他人軸に限界を感じた話に移りたいと思います。
「心地良さ」が自分軸
税理士として社会に出た後、与えられた仕事を上手くできない自分に落ち込んでしまい、1年10ヵ月で退社した田村さん。
再就職して今度こそ周りの期待に応えたいと目標に掲げたのが、組織の「潤滑油」になること。
〈日経Xwoman / 2021年12月28日〉
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資格があるとはいえ、先輩に比べて知識が乏しく、パソコンスキルも高くない。
でも潤滑油として、常に笑顔を心がけ、話し掛けやすい人になって、細かい仕事を受けたり、飲み会にも積極的に参加したり、人柄の良さで必要な人として認められたい。
そう心に誓ったのです。
しかし、「自分は必要とされなくなるのではないか」という不安はずっと拭えず、常に組織の中で評価に晒される会社員は向いていないと独立。
ただ、他人軸で生きることは変わらずで、地域の方に愛される税理士を目指し、お子さんが生まれてからも夜遅くまで働いていたそうです。
それ以上に、お子さまの将来を想って頑張る日々が続きました。
しかし、周りの人たちの中から、「子どもが小さいのにかわいそう」「子どもを置いてこんなに夜遅くまで働いているなんて」と、とがめるような言葉を投げかけられたそうです。
何度か言われているうちに、とある男性からの投げかけにブチギレてしまったとのこと。
『子どもとの時間は何より大事。でも、育児や教育にお金も必要だから働いているの』と。
そのことがきっかけで価値観の違う人との距離感を考えるようになったそうです。
周りの目を気にして、相手に合わせることだけが全てではない。そう思ったら人間関係のストレスが無くなったそうです。
そういう心境の変化もあって、改めて他人軸で生きてきた自分の人生を振り返ってみると、意外と「自分が心地良く生きられる道を探し続けていた」と気づいたのです。
「一番心地良い選択をすること」が、田村さんにとっての自分軸。ここに私は大きなヒントがあると思いました。
目の前の人を喜ばせながら、心地よく「チューニング」する
「自分軸」なんて大仰に考えなくても、自分にとっての「最適解」を大切にすれば良い。
もちろん、「好きなこと」「果たしたいこと」「得意なこと」を仕事にしていくことも理想ですが、無ければ今の仕事で目の前の人を喜ばせる努力をしていく。
その中で「強みかも」と思える要素を伸ばし、自信や誇りを築いていくのです。
そうして出来上がった自分のキャリアに意味付けをしていく。
あとは、その仕事が一番心地よく取り組めるように自分の性格に合わせてチューニングしていくのです。
つまり、他人軸と自分軸を両輪で考えて、自分のキャリアを最適化していくというイメージです。
私の場合、学生時代は戯曲作家になりたかったのですが、食べていく自信が持てなかったので、書くことを生業にしているコピーライターを選択。
しかし、コピーライターよりもマーケティング全般に取り組んだ方が合っていると思い、今はマーケターという肩書に。
分析力や戦略、企画力を通して、社会的に意義のある企業をサポートすることで間接的に世のため、人のためになっている(だろう…)と、自分の仕事の意義を定義しています。
さらには、マーケターとして得た時流情報を、もともと好きな書くこと(note)で皆さまにお裾分けし、さらに意義が高まるように努めているのです。
それが翻って本業の成長にも繋がっていると感じています。
「幸せ」かというと分かりませんが、少なくても「満足」はしている。それで充分だとも思います。
一方、先が読めない時代ですし、もしかしたら10年後、今の仕事はできていないかもしれません。
でも、その時はもう一度、自分のキャリアを棚卸しし、新しい仕事で目の前の人を喜ばせるところから再度構築していこうと思っています。
(他人軸+自分軸)×意義=最適解
これが現時点での私の方程式です。
少なくても、仕事をなるべく楽しく前向きに取り組めていけたらと思う今日この頃です。
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