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目指すは共感力の高い「めんどくさい人」?

column vol.182

東洋経済オンラインに掲載されていたコミュニケーション・ストラテジストの岡本純子さんの記事【頭の良さより「好感度」で人生が決まる納得理由】に目を奪われました。

〈東洋経済オンライン / 2021年1月11日〉

岡本さんは、日本ではまだまだ「『非情でもできる人型』のリーダーのほうが有能だ」という信仰が強いのではないかと指摘し、「自分が一番凄い」とイキってしまっている人たちに警鐘を鳴らしています。

IQ が成功に寄与する割合はたった20%

記事を見てビックリしたのですが、IQ (知能指数)が成功に寄与する割合はたった20%とのことです…(驚)。

残りの80%は「EQ(こころの知能指数=自己や他者の感情を知覚し、自分の感情をコントロールする知能)」、つまり、「共感力」「対人関係力」によるものなのだそうです。

海外ではEQを重要視している傾向があるというのはうっすら知っていましたが、成功の割合が本当だとすると衝撃的です。

『ハーバード・ビジネス・レビュー』に発表された行動心理学者らによる研究でも、「仕事はできるが愛されない嫌な奴」よりも「仕事はできないが愛される愚か者」の方が信頼を集めるという結果になっています。

ゆえに、理想の上司は「教官型」ではなく「共感型」

確かに今、「アップルのティム・クック」「マイクロソフトのサチャ・ナデラ」「グーグルのサンダー・ピチャイ」などといった共感型のリーダーに注目が集まっています。

「ビジネスの支柱には共感力がある」

一方的に決めつけるのではなく、対話を積み重ねながら、コンセンサスを作り上げていくリーダーシップが求められているのでしょう。

「めんどくさい」は「本気」の証拠

しかし、一方で「共感力」を表層的に捉えてしまうと、それはそれで危険ですね。

10年前、「リーダーとは引っ張るもの」という理想像に囚われて上手くいかなかった時期に「共感力だ!」と一気に180度方向性を変えたことがありました。

しかし、それがあまりにも安易過ぎて、後輩に厳しい言葉を投げかけられたのです…。

「池さん、良い人になりたいのは分かりますが、都合の良い人にはならないでくださいね」

この言葉にはシビれました…。今、思い返すとこの頃は、ただただ嫌われたくなかっただけなのかもしれません…。

そんな恥ずかしい過去もあってか、「WWDJAPAN.com」編集長の村上要さんの「エディターズレター」が胸に響きました。

〈WWD JAPAN / 2021年1月9日〉

村上さんが組織の中で心がけている役割があります。それは「ヒール(悪役)」です。

いろんなことが「頑張ったね」で片付けられることに疑念を抱かれており、このように言及されています。

変革の時代は「頑張っているのに、変わらない」もしくは「頑張っているから、変わらない」状況に陥りやすいような気がして、なんだかマズい気がする。「誰かが、苦言を呈するべきなのでは?」と思ったのです。

当然、社内では「めんどくさい人」と思われていることをご本人は自覚されており、このように言葉を続けます。

自分自身が「めんどくさい」から、「めんどくさい」人には向き合いたいと思っています。だって自分を含む「めんどくさい」人って、高い目標を持っていたり、理想と現実の違いが受け入れがたいくらい潔癖だったり、「『誰も手をあげない』なら私が」と思い込むくらい“おせっかい”で勇敢だったりなど、「大局的に言えばプラス」だと思っている(信じたい)のです。

どんな良いことも、相手が「良い」と思わなければ、その人にとっては「めんどくさい」ことになってしまいます。

だからこそ、摩擦を恐れて言わなくなってしまうのですが…、確かに、それはそれで事勿れ主義になってしまいますね。

そして、村上さんはこのように続けます。

その思いが、正しいのか、正しくないのかは分かりません。ただ間違いないのは、「めんどくさい」人は「本気」です。

なるほど、上司も部下も「本気」である状態は、裏を返せば、お互いが「めんどくさい」状態なのかもしれません。

村上さんの言葉を噛みしめると、「めんどくさい」と思うことが、少しもったいないなぁと感じられるようになります。

グーグルが突き止めた強いチームの条件

そして、EQを重要視するグーグルの「心理的安全性」についての記事に、なるほど納得させられました。

〈Forbes JAPAN / 2021年1月14日〉

「心理的安全性」とは、他者からの反応に怯えたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分をさらけ出すことができる状態を意味します。

一方で、それは諸刃の剣で、何でもやりたいことを言ったりしたりできる安全な環境は、現実には安全とは言えない環境を作り出してしまう可能性もあります。

無制限に寛容な社会は最終的に不寛容な人に奪われてしまうという「寛容のパラドックス」に近しい話です。

そして、記事の次の言葉が核心を突きます。

信頼とは能力、誠実さ、善意の3つを示すことで獲得できるもの。なかでも善意の有無が信頼を築く鍵になる。

ただし、個人的な見解で補足すると「善意」とは危ういもので、善意の裏に自分の下心が隠れていないかを見落とすと、相手には「悪意」として伝わる場合もあります。

例えば、きちんと準備しないでプレゼンに望む後輩に対して腹が立った時、本当の理由が「クライアントから監督不行き届きの上司と思われたくないから」だったとしたら、後輩に注意しても心に響かない可能性があります。

「感情的になる」=「自分に不利益なことだから」

という方程式がある分、いつも心が乱れた時ほど、コミュニケーションに気を配ることにしています。

今回の3つの記事からも読み解けるように、リーダーは企業の目的や利益を考えた上で、自分の信念を持ち、グループ間での認識共有や理解促進を丹念に行うことが求められるということですね。

相手の考えや感情を理解することはもちろんのこと、意外と自分自身のマインドを理解していないこともあると、私は日々反省することがあります。

相手と自分のギャップを客観的に見つめ的確に把握しながら、コミュニケーションを通して擦り合わせていくことが本当の意味での「心理的安全性」につながり、信頼を掴めるのでしょうね。

…と、口で言うのは簡単ですが、これが難しくて、奥深い…。

毎日、反省することの方が多いですが、ギャップを埋めることを「めんどくさがらず」に、ひとつ一つ仲間たちと向き合わないといけないと、改めて思う今回の事例でした。

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