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聖書と信

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聖書はひとを生かすもの、という思いこみだけで、お薦めします。信仰というと引かれそうですが、信頼などの信として、ひとや世界を大切にする思いが、少しでも重なったらステキだな、と思いつ…
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2023年7月の記事一覧

聖書をどう経験するか

聖書をどう経験するか

戦時中だか、戦争の気配漂う時代だか、かつて「日本的聖書訳」を計画していたことがあったという。天皇制を肯定するような形で訳そうとしたのだろうか。計画の内容までは知らないが、とにかく日本の実情に合うような文面に訳し直そうとしたらしい。
 
それに対して、敢然と反対の声を挙げた人がいた。いや、いまなら挙げるだろう、などと言うことなかれ。当時は、その反対者は、キリスト者の多くが非国民呼ばわりしたのだそうで

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『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)

失礼だが、存じ上げなかった。大関和(ちか)さん。幕末の1858年に生まれ、関東大震災後間もなく、74歳で亡くなっている。
 
著者は女性にまつわる調査を多くこなしているというから、本書も、女性と職業という観点から綴られているには違いない。ただ、和さんが信仰者であったということから、私はまた別の光を当てねばならないという気持ちになってくる。
 
副題ではなく、題の冒頭として、「明治のナイチンゲール」

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雨の七夕にふと思った

雨の七夕にふと思った

そう言えば七夕は雨だった。
 
七夕伝説というものがある。子ども向けにもよく知られた話だが、エッセンスはちょっと大人ではある。彦星とおりひめ星といったロマンチックな名前をよそに、いまは中学受験をする子に、わし座のアルタイルとこと座のベガという名で教え、はくちょう座のデネブと共に夏の大三角を形成する、と皆暗記している。
 
中国の標準的な伝説では、よく働く二人の男女を天帝が夫婦にさせるが、いざ夫婦に

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あなたの居場所ではない教会

あなたの居場所ではない教会

言葉としては同じものであるにしても、その概念というか、それが指している内容については、使う人により意味は様々であるだろう、というのが私の持論である。いつでもそれを前提にして考え始める必要があると思っている。そうでないて、同じことをその言葉で考えているように錯覚して決定したことが、後で、そんなはずではなかった、ということにきっとなるからである。
 
聖書は二千年以上昔の本である。新約聖書は新しいが、

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『ヨハネの黙示録を読もう』(村上伸・日本キリスト教団出版局)

『ヨハネの黙示録を読もう』(村上伸・日本キリスト教団出版局)

聖書を掲げながら、自らを正義とし、傲慢になり、一部の人類はここまで来た。巨大なローマ帝国を念頭に置きながら、またその支配下で苦しめられるキリストの弟子たちや教会たる集まりを思いながら、黙示録の筆者は祈り続ける。「ヨハネの黙示録」に描かれる幻は、その筆者の精神的な不安定さを漂わせるような書き方をする中で、その幻が神から与えられたものとしてである証拠に、現代にも通じる警告と慰めを発信し続ける。
 

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踏み込む勇気

踏み込む勇気

もしもその大切なことを、言わなければ、そのままでいられることだろう。いまのままの関係で、とりあえずしばらく過ごしていくことができるだろう。
 
けれども、もし自分が何かを言えば、いままでのままではいられなくなる。踏み込んだ結果、うまく事が運べば、次元の違う幸福な時空に入ることができるかもしれない。だが、逆の場合には、すべてが壊れてしまうかもしれない。これまでの関係に戻ることも、できなくなる。
 

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