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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2024年2月の記事一覧

『戦争語彙集』(オスタップ・スリヴィンスキー:ロバート・キャンベル訳著)

『戦争語彙集』(オスタップ・スリヴィンスキー:ロバート・キャンベル訳著)

ウクライナがロシアから攻撃を受け始めたのが2022年2月24日。もちろん紛争そのものはずっとあったのだが、大規模な攻撃が、理不尽に開始したというふうに世界は理解した。本書の日本語訳の発行は、それから1年10か月後となる。
 
日本文学者としての訳者は、メディアでもおなじみの人であり、アメリカ出身ではあるが、日本文学についてこの人よりもよく知る日本人は稀有であると言えるであろう。2023年2月、彼は

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『死刑 その哲学的洞察』(萱野稔人・ちくま新書)

『死刑 その哲学的洞察』(萱野稔人・ちくま新書)

テーマは死刑、ただそれだけである。死刑は是か非か。そういうふうに受け止めても構わないだろう。だが、それを試験や感情で片付けるようなことをするわけではない。そもそもどういうことを根拠にそれを肯定するのか、否定するのか、などを考慮しようとする。そこが「哲学的」という意味なのだろう。だが、著者は社会理論を専門分野としているように、プロフィールで紹介されている。社会学的視点というものは、どうしても強く働い

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『現代思想 2024vol.52-1 特集・ビッグ・クエスチョン』(青土社)

『現代思想 2024vol.52-1 特集・ビッグ・クエスチョン』(青土社)

大きな問い。人類の難問。哲学と縛ってよいかどうか分からないが、思想全般において、大きな問題となっていることを網羅する。「大いなる探究の現在地」という日本語が付せられている。一つのテーマを深める営みではないけれども、そもそも「現代思想」誌は、多くの論客の原稿が、10頁ずつくらいの長さで集められたものである。但し1頁あたりの文字数はかなり多いため、ボリュームはなかなかのものだ。連携して思索を展開すると

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本の遅配に思う

本の遅配に思う

近所に書店がない。少し離れたところに大きな書店がある。だが、願う本を置いているとはなかなか言えない。私の欲しがる本は、そこらに並ぶような本ではないからだ。そこで、Amazonで注文することが多い。それがまた、書店を減らす原因にもなっていることを心苦しく思うが、実際、入手には基本的にそれしかない。
 
業界では、配達員の問題もいろいろ起こっているが、とにかくここまで届けてもらうのはありがたいことであ

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『主イエスの背を見つめて 加藤常昭説教全集26』(教文館)

『主イエスの背を見つめて 加藤常昭説教全集26』(教文館)

副題が「福音の真髄」と書かれているが、これについては「あとがき」に触れられている。たぶん、全編読み終えて、最後にそれを味わうとよいだろうと思う。
 
加藤常昭説教全集は、教文館より、2004年に発刊開始、2021年に完結した。全37巻の見事な全集である。かつてヨルダン社で20巻ものとしてあったが、それに17巻を加えた形で完結した。
 
すでに高齢で、視力に支障を生じていた加藤氏のおもな説教は、その

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