マガジンのカバー画像

本とのつきあい

196
本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
運営しているクリエイター

2022年8月の記事一覧

『キリスト者として生きる』

『キリスト者として生きる』

(ローワン・ウィリアムズ・ネルソン橋本ジョシュア諒訳・西原廉太監訳・教文館)
 
ある方に強く薦められた。信頼している方なので、迷いなくすぐに注文した。訳者についてはそのあとがきで知ったが、若い方だった。しかし訳文は的確だろうと思われる。ひじょうに読みやすいし、内容もスムーズに伝わってきた。その訳の原稿を読むのを手伝った人の一人もまた若い人だったが、知っている人だったので、不思議なつながりを覚えた

もっとみる
『差別の日本史』(塩見鮮一郎・河出書房新社)

『差別の日本史』(塩見鮮一郎・河出書房新社)

2022年発行。著者は、河出書房新社から出て作家となり、日本史のいろいろな時代について調べ、とくに貧民などのことを本に描いているようである。その中で、「差別」の問題に特化してまとめたのが本書である。
 
恥ずかしながら、私の知らない言葉がたくさんあった。確かに、歴史の中である時期に使われていたようなものについては、そうした文献を知ることなしには見聞がないだろう。恥ずかしながら、冒頭に掲げられていた

もっとみる
扉を開いて

扉を開いて

ちょうど『ジンメル・コレクション』(ちくま学芸文庫)を読み終わったところだった。ジンメルという哲学者については、好みが二分されるそうだ。鋭いところに目をつけた面白い思想だ、と評する人もいるし、底の浅い思想だと軽く見る人もいるという。いまでこそ、現象学的な手法で、様々な日常の出来事やそこでの心理に近づくということもよくあるが、ジンメルは19世紀の人である。なかなかの慧眼だったのではないだろうか。
 

もっとみる
ゆっくりと読む本

ゆっくりと読む本

持ち歩き用の本と、家で読むための本とを、区別している。そして私は、並行読みをするタイプだ。一冊の本に熱中して、一日中そればかり読む、ということは、まずやらない。一冊について10頁以上をノルマとして、ちまちまと読むのである。
 
もちろん、その本のタイプや内容により、ノルマは様々である。なかなか簡単に読み進めない哲学書でも10頁以上を読もうという目標のようなものである。このコロナ禍のお陰で(という表

もっとみる
『「神の王国」を求めて』(山口希生・ヨベル)

『「神の王国」を求めて』(山口希生・ヨベル)

新刊書が紹介されたときには一応チェックするが、諸事情で後回しにされ、ついに買わなくてもいいか、の世界に閉じ込められていたタイプの本。改めてその紹介を見ると、これは読みたいと思うようになり、発売後1年半してから手に入れた。
 
神の王国。それにカギ括弧がついている。元の語は分かる。いわゆる「神の国」と訳されている語であり、時に「神の支配」の意味だと説明される語である。サブタイトルに、「近代以降の研究

もっとみる
『死と命のメタファ』(浅野淳博・新教出版社)

『死と命のメタファ』(浅野淳博・新教出版社)

まるで教科書のように、適宜まとめ、練習問題を投げかけながら、進んでいく。学ぶにあたり、親切な構成となっていると言えるだろう。
 
サブタイトルがしっかり付いている。「キリスト教贖罪論とその批判への聖書学的応答」、これはなかなか本書の核心をよく示している。まさにそれが論じられている。また、帯には、このようにある。「「贖罪」とは何か? イエスの死と命の救済論的価値とは何か? キリスト教の核心的な問いに

もっとみる