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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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2021年3月の記事一覧

『試験に出る哲学』(斎藤哲也・NHK出版新書563)

『試験に出る哲学』(斎藤哲也・NHK出版新書563)

凡そくっつかない言葉がつながっているように見える。「哲学」が「試験に出る」というような利点を探す語の制約を受けるのは、どうにも似合わない。知識をお持ちの方は、ソクラテスないしプラトンが徹底的に敵対した、ソフィストたちのやり口を真似するつもりなのか、と憤るかもしれない。
 
著者自身も、その辺りを気にしている。しかしこれはなかなか良い企画であると私も思った。
 
大学入試のセンター試験はその名をすで

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中古書を買う愉しみと残念

中古書を買う愉しみと残念

京都では、よく古書店に足を運んだ。独特の古書のかおりが漂っていた。欲しい本を求めて巡り歩いたあの頃と比べると、ネットで探して数分でポチることで届けられる今の時代の凄さというものを改めて思う。あの頃の店主は、本にやたら通じていて、職人的にその道をご存じだった。だから相談にも乗ってもらえた。いまは古書はユーズドなどと称され、店員の知識も期待できなくなったし、いわゆる売れ筋のものしか置かなくなったのが、

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『イエス運動・マルコ・哲学』(三上真司・横浜市立大学新叢書・2020年)

『イエス運動・マルコ・哲学』(三上真司・横浜市立大学新叢書・2020年)

謎のタイトルである。だが、読み終わったらその意味が分かる。そして、率直に言うと、面白かった。わくわくした。
 
そもそもイエスを、ギリシア哲学と重ねていくという発想が無謀である。だが少なくとも、イエスの教えを受け継いで伝えていった人々は、哲学と無縁だとする理由はないとも言える。本書は、犬儒派とも呼ばれるキュニコス派の哲学者と比較するばかりでなく、事実影響があったことを想定するものであった。
 

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