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古着男子が伝える古着のサステナブルな魅力

こんにちは、台湾正規留学からプラハで一年の交換留学中のTasukuです。

若者を中心に古着ファッションが流行・普及している昨今、古着を着ることで世の中にプラスな影響をもたらしていることを知って古着を利用している人は、どれほどいるでしょうか?多少は知っていても、「古着はリユースされているから環境に優しい」などと単純に捉えてしまっていないでしょうか。しかし、

古着が解決できる問題はもっと多様で非常に効果的です。

今まで私のページでは、ファッション業界が地球環境や世界中の労働者の人権に与える悪影響、特にファストファッションなど、手軽に安価な値段で手に入る衣服に隠された負の側面について詳しく説明してきました。しかし、今後の記事でも説明する予定ですが、一概にアパレルブランドと言っても、サステナビリティに気を配っているところとそう言った側面を無視して営業を行っているところなど、その営業形態は様々です。私の記事を読んでくださっている読者の皆さんならそう言った面にも気を配って消費活動を行っているかもしれませんが、そうでない人にとっては、あるいは気をつけてはいても、購入した服が本当にサステナブルなのかそうでないかという判断は非常に難しくなっているというのが実情です。また、サステナビリティに気を配っているブランドの製品は、そうでないファッションブランドの製品と比べ高価なものが多く、結局安価なファストファッションを利用しているという人も多いのではないでしょうか。

そういった中で近年サステナビリティーの観点からも注目されているのが、古着です。今回は、ファッション業界の負の側面を紹介しつつ、私自身も利用する「古着」のサステナブルな面にフォーカスを当てて、古着がファッション業界にもたらす変化の可能性について述べていきたいと思います。古着を普段利用する人も、しない人も、今回の記事を通して古着の持つ大きな可能性について理解してもらえたら幸いです。

拡大する古着市場

古着の歴史

最近で街でよく目にする古着ファッションですが、歴史を遡ると日本では約600年前の室町時代から古着文化が広まったと言われています。服の原料の調達、生産が現在と比べてはるかに難しかったこの時代、時間と労力を削減するために、多くの人の間で、リユース・リサイクルされた衣服が取引されていました。

現代に戻って1997年ごろになると、ファッションリーダーとして大きな役割を果たしていたテレビスターたちの影響で一大ブームを迎えます。その頃から古着を取り扱う店舗が増えてきて、2022年現在では東京の下北沢、高円寺などを中心に全国各地に多く点在しています。よく古着は中古なのに値段が高いと言われることもありますが、古着を手頃な値段で販売したり、セールなどを積極的におこなっている古着店も増えてきており、学生を中心とした若い世代に古着を利用する人が急増しています

世界の古着市場

日本だけでなく、世界的にも古着を消費する人は増えてきていて、アメリカの大手古着CtoCサイトを運営するThredUpの調査によると、アメリカの古着市場規模は2021年時点で350億ドル、日本円にしておよそ4兆円にのぼります。対するファストファッションの市場規模は約900億ドルと、3倍近くも差があるものの、アメリカ国内だけでも古着消費量は今後さらに増えていき、2026年には820億ドルに到達すると予想されています。

アメリカの古着ブームが日本のそれと異なる点は、その根幹にサステナブル意識があるということです。日本ではそう言った意識が低いにも関わらず、古着が普及しているのですから、SDGsが叫ばれ始めた昨今、古着が日本のファッション市場に与えるサステナブルな影響は今後大きくなっていくと考えられます。(ThredUPのサイト:https://www.thredup.com)

アメリカのC2C古着サービス「ThredUp」

古着専門店だけじゃない、身近な古着

古着と言うと、おしゃれな人が利用するイメージのある、いわゆる「古着スタイル」のようなものが連想され、ファッションとしてのハードルが高いと感じる方も多いかもしれません。しかし、古着の形は様々で、家族や親戚の間でやりとりされる「おさがり」も、地域のバザーで出されるお古の洋服も、近年では一般的になったメルカリやラクマなどのフリマアプリ等で売買される洋服も、全て古着です。

そんな意外に身近な古着ですが、実は次のようにたくさんのサステナブルな可能性を秘めています。

衣服ロスの削減

衣服ロスの実態

ファッション業界における「衣服ロス」の問題はこの業界で近年最も問題視されている問題の一つです。以前「フードロスよりも深刻な『衣服ロス』」というタイトルの記事でも述べたことですが、世の中に出回る衣服のうち約半数は誰の袖にも通されることなく廃棄されています。

また、衣服ロスはアパレル企業による廃棄に目が行きがちですが、家庭から出される衣服ロスの量も日本国内だけで年間75.1万トンと、その多くがリサイクルやリユースされることなく、焼却処分されています。大量の新品の衣服が消費者の手に回る事なく焼却処分されてしまう理由は、上記の記事「フードロスよりも深刻な『衣服ロス』」で紹介しているので、ぜひそちらを参照ください。

新品の衣服を製造することによる環境負荷

このように新品の衣服が大量生産されては誰の手にも渡らず廃棄されてしまうという悪循環ができているわけですが、新品の服を製造するまでの様々な工程においても環境に大きな悪影響を与えています。

温室効果ガスの排出

地球温暖化は年々進行を続け、私たちの住む地球環境に大きな影響を与えていますが、ファッション業界は地球温暖化に大変大きな影響を与えてきました。

2020年のMcKinsey & Companyの調べによると、2018年、ファッション業界によって21億トン相当の温室効果ガスが排出されており、世界の温室効果ガス排出量の実に4%が同業界によって排出されている(なお、国際連合の調べによると8〜10%)だけでなく、この値は2017年にフランス、ドイツ、イギリスの3国によって排出された温室効果ガスの総量に値すると算出されています。更に、現在より進んだ対応策を取らなかった場合、ファッション業界による温室効果ガスの排出量は2030年までに年間2.7%、排出量にして実に27億トンずつ増加していくことが予想されています。

衣服製造によって枯渇する水資源と水質汚染問題

水資源を最も消費する業界としては畜産業が挙げられますが、ファッション業界も繊維の生産や輸送の過程で大量の水を浪費しています。世界銀行の発表によると、世界で一年のうちに消費される水のうち実に930億立方メートルもの水がファッション業界によって毎年消費されているとされており、これは500万人もの人々が一年生活するのに必要な水の量に相当します。

生活の中で最も大切な資源である水、日本では蛇口をひねればすぐにきれいな水が出てきて、飲用水として利用できますが、世界で水道水を直接飲むことのできる国は日本を含め16カ国しかありません。いつでもどこでも綺麗な水にアクセスできる日本人であれば、世界が水不足に悩んでいて、日本もその例外でないと言われても容易には想像できないかもしれません。

しかし、世界の水不足は私たちの生活に間接的に大きな影響を与えます。バーチャルウォーターという考え方がありますが、これは普段私たちの目に見える形以外で利用され、輸出入等により売買された水の量のことを意味します。具体的には、普段私たちが消費する食物や衣類が生産される過程で消費された水を、私たちが直接的に消費してはいないものの、間接的に輸出国における水を消費しているとする考え方です。世界から水がなくなれば輸入品の多くは価格が高騰し、食糧不足等に陥る可能性があるのです。

また、染色などの工程において使われた水は染料や漂白剤などの薬品を含んだ有害な廃水としてそのまま川や海に流されます。現状衣服を製造する繊維産業はコスト削減のため、東南アジアを中心とした発展途上国に集中しているため、浄水技術も進んでいない場所が多く、川や海に流れ出た有害な排水が地域環境を破壊し、そこに住む現地住民の健康をも脅かしています

安い服を大量生産することで侵害される労働者の人権

上記の通り、ファッション業界では人件費等のコスト削減のために、労働力の安い国や地域に生産ラインを構えることが一般的です。しかしそういった地域で働く人々の多くは劣悪な労働環境下で半強制的に働かされ、到底その労働量に見合わない賃金を受け取って、苦しい生活を余儀なくされています

そんな劣悪な労働環境が世に知れ渡ることとなった出来事があります。それが2013年4月24日(現地時間)、バングラデシュの首都ダッカ近郊の都市、シャバールで起きたビル崩落事故です。8階建ての商業ビル、「ラナ・プラザ」は輸出用の衣類を生産する縫製工場でした。その日、実に5000人もの人々が働いていたこのビルが崩壊し、中にいた1127名が命を落とし、約2500名もの人々が負傷しました。コスト削減のために工場のメンテナンスを怠り、そこで働く多くの人が犠牲になった凄惨な事件はファッション業界が人権問題において批判される大きなきっかけとなりました。

この他にも中国の新疆ウイグル自治区における民族抑制による人権侵害など、ファッション業界が抱える人権問題は非常に深刻です。

古着がこれらの問題解決の糸口に

新品の衣服を大量生産・大量廃棄することによってこれら流れはどんどん加速し、途上国の人々の暮らしや未来の私たちの暮らしに大きなリスクをもたらします。

これらの問題解決に私たちがファッションの楽しみを失うことなく気軽に取り組めるのが古着の魅力です。

サステナブルブランドの利用もこれらの問題解決に効果的ではありますが、既に市場に多くの古着が出回っているなら、サステナブルであったとしてもわざわざ新品の衣服を購入する必要はないのです。

市場に溢れる古着を利用すれば大量生産の流れを抑制することができ、ファッション業界が環境に与える負荷を軽減させることができます。古着を購入、売却あるいは寄付することで、着なくなった服を金銭面のインセンティブ付きでリユースができるだけでなく、供給過多になっている新品衣類の供給量を抑制するためにも役立ちます。つまり古着の利用は地球環境に大きな影響を与えている衣服ロスの解決の糸口になり得るということです。

最後に、

私のNoteでは、サステナブルファッションに関する記事や留学に関することなどを中心に情報発信をしています。今回の記事でサステナブルファッションに関して興味が湧いたという方は是非他の記事も一読ください!

また、私が運営するポッドキャスト番組「チェコっと放浪旅」では、台湾留学で出会った世界一周旅行中の友人とお酒を飲み交わしながら、国際問題や留学、世界一周旅行に関する話題など、海外生活で生まれた生産性のあるお話をお届けしています。毎週木曜日に更新していますので、興味のある方は是非、そちらの方もチェックしてみてください!


古着の可能性を世の中へ、
著:Tasuku

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