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ファッションと環境問題① 〜地球温暖化〜

みなさんが普段何気なく購入している衣服によって、私たちの未来の暮らしが脅かされると聞いたら、みなさんは何を感じるでしょうか。前の2つの記事ではファッション業界がもたらす人権問題について取り扱ってきましたが、今回はファッション業界が地球環境へもたらす影響について述べていきたいと思います。

前回の記事↓

ファッション業界が環境に与える影響は多岐に渡るため、複数に分けて紹介していきたいと思いますが、今回はその中でも最も深刻な問題の一つである、『地球温暖化』にファッション業界がもたらす影響にスポットライトを当てて説明していきます。

ファッションと地球温暖化

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世界の平均気温の推移

近年国際社会で度々話題に挙げられる問題の中に、地球温暖化が含まれることは、みなさんもご存知かと思います。CO2をはじめとした温室効果ガスは、地球が取り込んだ熱が外界に放出されるのを妨げ、地球の温度が上昇するとされています。上の画像を見ての通り、温室効果ガスの排出によって産業革命以降、世界の平均気温は1.1度引き上げられたとも言われます。2015年のパリ協定では、地球温暖化を抑えるために温室効果ガスの排出量削減が各国共通で取り組むべき達成目標として採択されました。

そんな温室効果ガスはさまざまな産業によって排出されてきましたが、ファッション業界もその例外ではありません。むしろ同業界は温室効果ガスの排出に大きく関与しており、2020年のMcKinsey & Companyの調べによると、2018年、ファッション業界によって21億トン相当の温室効果ガスが排出されており、世界の温室効果ガス排出量の実に4%が同業界によって排出されている(なお、国際連合の調べによると8〜10%)だけでなく、この値は2017年にフランス、ドイツ、イギリスの3国によって排出された温室効果ガスの量に値すると算出されています。更に、現在より進んだ対応策を取らなかった場合、ファッション業界による温室効果ガスの排出量は2030年までに年間2.7%、排出量にして実に27億トンずつ増加していくことが予想されています。

化学繊維が問題

ではどうして服を作ることによって温室効果ガスが発生するのでしょうか。それは衣服に使われる繊維に問題があるとされています。ウイグル問題の回で、衣服に最も多く使われる天然繊維は綿であると述べましたが、繊維全体を占める割合を見ると、半分を超える60%もの衣服はポリエステルやナイロン、アクリルといった化学繊維(プラスチック繊維)によって縫製されています。化学繊維は安価で万能であるだけでなく、柔軟性や吸水性に長けているためスポーツウェアをはじめとした多くの衣服の製造に使われます。しかし、ここで忘れてはならないのは、化学繊維、つまりプラスチック繊維は石油を原料として作られることです。以下日本化学繊維協会から引用。

“ポリエステル”と呼ばれる“化学せんい”は、石油の成分から“キシレン”という物質を取り出し、これに他の化学物質をくっつけ、さらにこれらの物質を何百万個とつなぎ合わせて“ポリエステルせんい”の原料である“ポリエチレンテレフタレート”と呼ばれる物質を作ります。
日本化学繊維協会
ポリエステル
ポリエステルの製造プロセス

この化学繊維の製造過程によって排出される温室効果ガスは毎年12億トンに上るとされています。さらに、以前も述べた通り衣服の縫製はバングラデシュや中国で行われていて、これらの国の電力供給源は化石燃料であり、発電プロセスの中でも大量の温室効果ガスが排出されます。この他にも輸送の際に発生する温室効果ガス等が要因で、世界で最も地球温暖化に影響を与える産業の一つとしてファッション業界が挙げられるのです。

考えられる解決策

この問題に対する解決策としてまず、天然繊維への転換が挙げられます。天然繊維は、綿や麻、絹に代表される自然由来の繊維を指しますが、これは以前ウイグル問題の回でも述べた通り、環境の問題がある程度クリアできても、生産地における人権についても配慮しなければないため、安直に天然繊維へ転換していくだけでは根本的な問題の解決にはなりません。大切なのは使用する天然繊維の仕入先をしっかりトラックできる体制を整え、正当なプロセスで生産されていることを確認した上で転換を図っていくことです。

そして最もシンプルで効果的な解決策が、消費者個人の消費行動を見直すことです。ファストファッションのような安価で質の劣る服を買って着なくなったら捨てるのではなく、多少値は張っても、長く着続けることのできる服を購入したり、古くなって汚れたりほつれてしまったりした服を修繕して着続ける努力をすることがこの問題の解決に取り組む上で私たち消費者に求められることです。これは衣服だけでなく全てに対して言えることですが、モノを大切にし、長く使っていくことは自分にとっても世の中にとってもプラスであり、私たち一人ひとりが心がけなければならない考え方です。

もう一つの選択肢として、古着があります。これは後々詳しく説明しますが、ファッション業界における衣服ロスや人権侵害の問題への解決策となり得るとして、近年注目を集めています。


古着の可能性を世の中へ、

著:Tasuku

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