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ファッションと環境問題②〜水資源の枯渇〜

私たちの生活から『水』が無くなることをみなさんは想像できますか?

メソポタミア文明、エジプト文明、インダス文明、中国文明。四代古代文明と呼ばれた文明がそれぞれ大河付近にて繁栄したことからもわかるように、水というのは人間の生活において欠かせないものの一つであり、私たちはそれなしで生きていけません。実際現代においても、世界人口のうち約90%もの人々は水源から10キロ以内の場所に居住していると言われています。

そんな、生活の中で最も大切な資源である水、日本では蛇口をひねればすぐにきれいな水が出てきて、飲用水として利用できますが、世界で水道水を直接飲むことのできる国は日本を含め16カ国しかありません。いつでもどこでも綺麗な水にアクセスできる日本人であれば、世界が水不足に悩んでいて、日本もその例外でないと言われても容易には想像できないかもしれません。

また、地球上の海と陸の割合は7:3であり、多くの人はこのことから地球は水資源に溢れており、水が枯渇するイメージが掴めないかもしれません。しかし世界中で水資源として利用できる淡水は全体のたった3%しかありません。更に言うと、そのうちの3分の2にあたる淡水は北極や南極で氷の状態になっていたり地下に眠っていたりして利用することが困難であり、川や湖といった比較的利用しやすい水源から取れる水は全体のたった1%である、と言うのが現実です。

そんな限られた水資源を共有して生きている人類ですが、近年の人口増加、地球温暖化など、様々な影響により水資源は枯渇しつつあります。実際に国連関連機関のUNICEFの調べによると、現在世界人口の3分の2にあたる40億人もの人々が一年において最低1ヶ月は深刻な水不足に苦しんでいるだけでなく、2025年までには世界人口の実に半数が水不足に直面する地域で生活することとなるという予測を発表しています。

水資源の豊富な日本との関係

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このような世界の水不足の問題は水資源が豊富な日本に暮らす私たちにも大きく関係しています。この事実を説明するためにはまず、バーチャルウォーター(仮想水)と言う考え方を理解する必要があります。

バーチャルウォーターとは、普段私たちの目に見える形以外で利用され、輸出入等により売買された水の量のことを意味します。具体的には、普段私たちが消費する食物や衣類が生産される過程で消費された水を、私たちが直接的に消費してはいないものの、間接的に輸出国における水を消費しているとする考え方です。

実際、多くの人が口にするビーフステーキ200gには3000リットル、普段着用するTシャツ一枚には2700リットル、そしてジーンズ一本の生産には実に7500リットルもの水が使われます。つまり私たちが普段着用するジーンズを1本輸入するということは、言い換えると輸出国から7500リットルもの水を輸入しているに等しいと言うことです。全米アカデミーズの調べによると、男性が1日に飲用する水の量は約3.7リットルであるということから、単純計算で約5年半分もの飲用水をジーンズ1本に対して消費していることとなります。

つまり仮に私たちの住む日本では水資源が枯渇しなくても(日本も近い将来水不足の危機に直面すると言われている)、世界中のあらゆる地域で水不足の問題が発生すると、間接的に私たちの日々の生活に悪影響が及ぶという事です。特に食料自給率が低く、輸入品に頼りがちな日本ではその影響を大いに受けてしまうことは疑う余地がありません。

水資源を浪費するファッション業界(アラル海の惨状)

水資源を最も消費する業界としては畜産業が挙げられますが、ファッション業界も繊維の生産や輸送の過程で大量の水を浪費しています。世界銀行の発表によると、世界で一年のうちに消費される水のうち実に930億立方メートルもの水がファッション業界によって毎年消費されているとされており、これは500万人もの人々が一年生活するのに必要な水の量に相当します。

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こういった実態を顕著に示した例として、中央アジアのウズベキスタンとカザフスタンの国境に位置するアラル海での実例が挙げられます。かつて世界で4番目に大きい内海であったこのアラル海ですが、1960年代頃からその規模は徐々に縮小していきました。話は20世紀前半にこの地域で綿産業をはじめとした農業への需要が急拡大し、灌漑施設の建設が進められたことに遡ります。急ピッチで進められたこの地域における灌漑設備はとても非効率的であり、当時ソ連によって進められた大規模農業は、アラル海にあった水資源をみるみるうちに吸い上げていきました。1987年になるとアラル海はすでに二つに分裂しており、この内海に生息していた20種類に及ぶ生物が絶滅してしまいました。かつてスイスの国土ほどの面積があったこの内海は、約50年の間で単なる”水たまり”と化してしまったのです。

考えられる解決策

今回はファッション業界が水不足の問題に与える影響について説明しましたが、これはもちろんファッション業界に限った話ではありません。私たちの衣・食・住に至るまで、様々なシーンにおいて水が関わっています。大切なことは私たちの生活のあらゆる場面において水が使われており、その水は無限ではなく、近い将来枯渇してしまうかもしれないということを頭において生活することです。具体的には、水の出しっ放しに気をつけたり、いつも食べている肉食の量をできるだけ減らしてみたり、着ている服を飽きたからといってすぐに捨てるのではなく大切に長く着ていくことなど、私たちが生活する中でできることはたくさんあります。これからの生活を守っていくためにも、水の価値を見直し、私たち一人ひとりが責任を持って行動していくべき段階に、今私たちは立っているのです。


古着の可能性を世の中へ、

著:Tasuku

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