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ズッコケ三人組シリーズの感想

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那須正幹作「ズッコケ三人組シリーズ」を順番に読んで感想を書きます。
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「ズッコケ熟年三人組」の感想

長いもので、ついにズッコケ三人組も50歳になった。そして、小学生編(といういい方はしてないけど)50巻、中年編全11巻がめでたく完結した。

なかなかこの最終巻に手を伸ばすことが出来なかった。GWと重なり、特別配信など色々と他に見るものがあって時間がとれなかったこともあるが、やはり一番の理由は、「読んだら終わっちゃうから」だと思う。なんせ、去年の頭に頭から読み直すと決めてから1年と五か月、彼ら三人

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「ズッコケ中年三人組 age47」の感想

今回は、「花のズッコケ児童会長」の後日談と言えるかもしれない。 かつて、花山第二小学校で児童会長選挙を戦い惜しくも敗れたハチベエが、ひょんなことから市議会議員選挙に出馬する。その顛末がメインストーリーだ。
一方で、ハカセの妻陽子は初の妊娠出産に挑み、モーちゃんの家庭では、ペット(とそれに絡めて介護問題)を飼うかどうか、がそれぞれの問題として降りかかる。テーマを導き出すなら、再出発、または、誕生、だ

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ズッコケ中年三人組 age46

やー、面白かったー。
読み終えたあと思わず声に出してしまったくらいだ。面白かったんだけど、でもこれ、ちょっとさすがに「ズッコケシリーズ」の読者層には勧めにくいというか、完全に、大人向けに書かれている。中年シリーズの初期の頃のあとがきで確か那須先生、「子どもでも読めるように」注意して書いているとおっしゃっていたけど、もう、よくなったのかな。

まあでも、那須正幹さんという作者は、子どもを読書と言う悪

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ズッコケ中年三人組 44歳の事件記者 の感想

ハチベエが裁判員に!というわけで今回は裁判員裁判がテーマだ。作者お得意のミステリである。ハチベエのもとに裁判員候補に選ばれたという連絡が入る。時を同じくして、ハカセが住む地域で殺人事件が起き、ハチベエはその事件の裁判に、裁判員として参加することになる……。

日本では平成21年に施工された裁判員制度。その裁判員にもし選ばれたら、いったいどんなことが起きるのか。ハチベエの視点からそれがとても丁寧に描

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ズッコケ中年三人組 45歳の山賊修業中

タイトル通り、今回は「ズッコケ山賊修業中」の後日談である。三人組がまだ小6だった32年前、山賊に捕らえられた三人は、一緒に捕まった堀口青年の尽力で逃げることができたが、堀口青年は山賊たちの元へ残った。その青年の兄が、いまだに弟のことを探してるらしい…というところから物語は始まる。

42歳の次にこれを読んだのは、本当にただのうっかりである。二年飛ばしてしまってちょっと気持ち悪い部分もあるが、気にし

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「ズッコケ中年三人組age41」の感想

君は、北里真智子を覚えているか?
初期の名作「ズッコケ㊙️大作戦」に登場した、謎多き美少女転校生。モーちゃんの初恋の人であり、ハチベエに「俺たちのマコ」と言わせたあのマコが、有名占い師となって再びミドリ市にやってきた!

とにかく、マコの印象というのはすごい。50巻読破中に何度か、もう一回出てこないかなーと思っていた。時を経て、41才にして再び会えるとは。

しかし、相変わらずマコに翻弄されまくる

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『ズッコケ中年三人組』の感想

40歳をむかえた三人組の物語だ。もしも大人になったら……という『未来報告』とは違い、本当に40になっている。第一作が刊行された1978年の時点で小学6年生だった彼らは、2005年に40になっている、という計算は一見正しいように思えるが、しかし、『卒業式』でモーちゃんが気づいたように、2004年までの26年間、彼らは小学6年生を繰り返し続けたはずなのだ。そのあたりの時間の流れかたに関する考察は、また

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「ズッコケ三人組の卒業式」の感想

第一作から走り続けてきたこのズッコケマラソンも、いよいよラスト。一作目の感想を拙blog

「昨日の罪、明日の罰」

に書いたのが去年の2/18。ちょうど一年かけて読破したことになる。平均すると週一ペースですね。

さて、堂々の最終巻は、卒業の記念にクラスのみんなでタイムカプセルをうめるところから始まる。この時点で、全巻読んできた読者なら必ず思い出すのが「未来報告」だ。未来報告は三人組の20年後が

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「ズッコケ愛のプレゼント計画」の感想

エンディングまで、泣くんじゃない!!
卒業式まであと一作の今回は、バレンタインデーのお話。
三人組の中で一番女性に関心がありながら、がさつな言動によってクラスの女子からは冷たい態度をとられ続けてきたハチベエが、ついにモテモテになる。
思えば、ハワイで婚約しそうになったり、芸能界デビューしたりと、ハチベエは「見る人が見れば魅力的」であるような描写が比較的多い。それを踏まえれば、今作ではじめて語られる

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「ズッコケ怪奇館 幽霊の正体」の感想

エンディングまで、泣くんじゃない。いよいよ48作目、残すところあと2作。今回もハカセが大活躍だ。ズッコケシリーズは、割りと民俗学押しなところがあってそこが好きなのだけれど、今回はもうしっかりと、ハカセが「民俗学」という言葉に出会う。自分が興味をもって調べていたことは、立派な学問なんだ!ということに気づく瞬間は最高にエモい。熱い。間違いない。

物語の舞台は、ミドリ市から少し車で走ったところにある

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「ズッコケ魔の異郷伝説」の感想

正直、かなり後半まで「なんで今さらこの手の話を?」と思って読んでいた。大事な部分を隠してあらすじを説明すると、学校行事の一環で縄文人体験をしにやってきたズッコケ三人組とクラスの美少女三人組が、縄文時代にタイムスリップしてしまう話だ。

現代文明から離れた場所が舞台になる話なら、「山賊修行中」があるし、タイムスリップなら夢オチ含め三回ほどしている。つい前作の「地底王国」も、小人の国ではあるが色は似て

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「ズッコケ情報公開㊙️ファイル」の感想

元々は、「ズッコケ三人組のオンブズマン」というタイトルで行きたかったらしい。いくら不動の人気を誇るズッコケシリーズと言えども、オンブズマンでは売り上げが落ちると( 誰かが)判断したのだろう。
内容といえば、三人組がオンブズマンとなって、市役所で情報開示を求めるところから物語は動き出す。しかし、ハカセはともかくハチベエやモーちゃんがいきなり政治に興味を持つわけではない。人気時代劇「ひょっとこ侍」に影

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「ズッコケ三人組の地底王国」の感想

わーい!小人だー!小人大好きーー!
佐藤さとる「誰も知らない小さな国」シリーズにどはまりした少年時代を過ごした私にとって、三人組が小人になるという設定は、まさに好き×好きのエモーショナルコンボなのです。

学校行事で登った山の中で見つけたストーンサークル、その力で小人になってしまった三人は、小人が暮らす地底王国で、伝説の勇者として迎え入れられ、彼らが恐れる悪竜と戦うことになります。

カエルを家畜

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「ズッコケ家出大旅行」の感想

そういえばこいつら、まだ家出をしていなかった。宇宙に行ったり海底大陸に行ったり江戸時代に行ったりしてはいるが、家出がまだだった。

ちなみに、東京旅行はかなり初期「結婚相談所」のときに、モーちゃんの父親に会いに行っている。

一章で家出の発端を作り、二章で家出スタート、だと思っていたら、割りと序盤で家出がスタートする。家出の発端なんてほぼネガティブなものに決まってるんだから、長々と冒頭に書き連ねる

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