ズッコケ中年三人組 age46

やー、面白かったー。
読み終えたあと思わず声に出してしまったくらいだ。面白かったんだけど、でもこれ、ちょっとさすがに「ズッコケシリーズ」の読者層には勧めにくいというか、完全に、大人向けに書かれている。中年シリーズの初期の頃のあとがきで確か那須先生、「子どもでも読めるように」注意して書いているとおっしゃっていたけど、もう、よくなったのかな。

まあでも、那須正幹さんという作者は、子どもを読書と言う悪の道に誘い込む悪い大人(個人の感想)なので、これでもくらえ、という気持ちで書いているのかもしれない。それならそれで、最高です。

超絶ネタバレで申し訳ないが、今回は宅和先生の死にまつわるエピソードが主だ。特に後半、宅和先生とかつて恋仲だったという老女がたずねてくるあたりがすごい。あ、ちなみに宅和先生とは、三人組の六年生のときの担任であり、ズッコケ三人組を見守る、むちゃくちゃいい先生である。さて、老女が、宅和先生との関係を事細かに記した日記が登場するのだが、それを読んだモーちゃんの言葉を借りれば「ポルノ小説」である。中年版とはいえズッコケシリーズを読んで、こんなもやもやした気持ちになるとは思わなかった。結局、それがその老女の妄想なのか、本当にあったことなのかは、はっきりしないのだけれど、僕もハチベエと同じく、堅物の宅和先生にも軽いスキャンダルがあってほしいと思う。しかし、ズッコケシリーズには、こういう、結局なにが本当だったかは分からない、ということが良く出てくるのだけれど、ひとつの事象も受け止め方によって解釈が変わる、ということを繰り返し読者に訴えているような気がする。つまり那須先生は、たとえば「幸せに暮らしました」という童話によくある断定をしない。「幸せだったかもしれないねえ」と三人組にぼやかせる程度である。こういう、ひとつのことに対して、いろんな見方があっていいのだ、ということを、小学生くらいで知っておけるかどうかはかなりその後の人格形成に影響を与えるような気がする。なぜなら小学校や中学校はいつもひとつの解を与えることに終始するからだ。

ズッコケといえば、「人生の予行練習」だが、今回は「お葬式のマナー」について細かく描写してくれる。香典はどのくらい包めばいいか、服装は、どんなことが行われるのか……など、まるで自分も宅和先生の葬式に参加しているような臨場感をもって描かれる。そうだ。読者である僕らもズッコケ三人組と同じく六年一組の児童だったし、宅和先生に習ったのだ。お葬式に出られてよかった。


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