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カルディアナ戦記 紹介文

はじめに

 『カルディアナ戦記』は、『カドルステイト物語』の続編として書いた長編ファンタジー小説で、主に戦争を描いた全3巻で完結する戦記物です。

『カドルステイト物語』では主人公のデインが、仲間と出会ってパーティを組み、故郷を求めて世界中を旅する冒険物語を描きました。ゲームに例えると、まさにロールプレイングゲームといった趣きです。一方『カルディアナ戦記』では、『カドルステイト物語』の登場人物の1人カータを主人公に、祖父を探す旅の途中で立ち寄った国で、二国間の戦争に巻き込まれてしまう物語になります。こちらは戦争を描いた戦記物ということで、仲間とパーティを組むことはありません。ゲームに例えるならシミュレーションゲーム、或いはストラテジーゲームといった感じでしょうか。

 このnote記事では、そんな『カルディアナ戦記』の魅力を、作者視点で大いに語った上で、読者から寄せられた感想の一部を合わせて紹介します。


戦争には正義も悪も無い

 私は以前から、今なお繰り返されている戦争の原因について、より深く切り込んだ物語を書きたいと考えていました。学校では「戦争は怖いもの」「戦争は良くない」とは教えてくれますが、「なぜ戦争が起こるのか?」については誰も教えてくれません。歴史をよく調べてみると、外交努力だけで戦争を防げる訳では無く、むしろ外交の結果として戦争が始まっている事が分かると思います。だからこそ『カルディアナ戦記』では、ただ単に「戦争をやめよう!」と叫ぶだけでなく、なぜ戦争が起こるのか? 二度と戦争を起こさない為には、どうすればいいのか? 未だ人類が解決に至ってない、この普遍的なテーマを物語として描きました。

『カルディアナ戦記』は、ファンタジー小説によくある「正義の国と悪の国が戦う物語」ではなく、「それぞれの国が主張する正義を描いた物語」でもありません。「戦争には正義も悪も無い」という現実を描いた物語です。

 本作の執筆に当たっては、歴史上の様々な戦争を調べ、民族間や宗教間の諍いや、経済的または地政学的な問題、そしてそこに住む人々の暮らしに密着した形で、それぞれの立場から見た戦争をファンタジーの世界に置き換えて描くことを心掛けました。それは「善と悪」でなく、「それぞれの正義」でもない。ファンタジー小説で戦記物といえば大抵、英雄の視点から戦争が描かれる場合が多いですが、それだけでなく、王族、富豪、一般人、奴隷、大人、子供、男性、女性、様々な視点から描くことを意識した、ファンタジーでありながら現実的な物語です。

 今までの戦記物ではあまり描かれなかった、ただ反戦を叫ぶだけではない物語。なぜ戦争が起こるのか? 戦争が起こったら人間はどうなるのか? どんなに声高に正義を叫ぶ人格者であったとしても、戦争は人間を獣に変えてしまうという、その現実を描きました。

異なる言語が入り乱れる異文化の交流地点

 カルディアナ戦記の舞台となるルブーラム皇国は、今までのファンタジー小説ではあまり描かれることのなかった、特殊な文化が根付いた独特の国になっています。

  • 普通の言葉が通じない、独自の言語を持った国

  • 女性が男性を支配する、特殊な身分制度の社会

  • 家族という概念を持たず、血統を重んじる民族

 この国では、他の国の一般的な常識があまり通用しない。その最たるものが、『皇民』と呼ばれるルブーラムの民の特別な選民意識に象徴されている。この国では過剰なまでに血統が重んじられ、昔からここに根付いている民族の中でも、女のみが皇民とみなされていた。強い選民意識を持ち、厳格な血統を重んじるルブーラム皇国では普通、外部から移り住んできた者を皇民として受け入れることは無い。それどころか一般の観光客でさえも、皇都パトリシアの中に足を踏み入れる事は出来ない。皇都に入れるのはあくまで皇民と、そして皇民を守る皇軍『銀の眷属』のみであり、皇民になれるのは純粋なルブーラムの血を引く女のみとされているのだ。

第一章「断罪の執行者」3節より

 特に、言葉が通じないことによる意思疎通の齟齬そごが描かれたファンタジー小説は、私が知る限りあまり見たことがありません。あったとしても、少しだけ異なる言語が登場した直後に、すぐ相互理解してしまうケースがほとんど。しかし現実的に異なる言語を覚える為には、最低でも数ヶ月は現地で暮らす必要があるでしょう。言葉の通じない相手が、何を考えているのか? 本作ではルブーラム皇国での公用語(ルブーラム語)は正体せいたいで、外国の言語(カスタリア語)は斜体で表現されています。ただ文化が異なるというだけでなく、言葉まで通じない。ここから生じる登場人物の意思疎通の齟齬は、より深みのある現実的なファンタジーの世界を演出します。


人間には正しさを上手く扱えない

 人間は正しさを好みます。歴史上の悪名高い人物でさえ、自ら悪を名乗る事はなく、自分は正しいと主張しています。

 では、悪とは何なのでしょうか?

 己の利益を追求する余り、他者をいちじるしくしいたげた時、それが悪に見えるのです。崇高な宗教や高尚な理念も、人間は自らの正しさの証明として利用し、そして変容していく。人間より長寿な種族にとって、それは愚かな歴史の繰り返しに見えるに違いありません。

 人の不平不満が外に向けられた時、避けられない戦争へと突入し、それによって得られる結果は残酷な悲劇のみ。それは安っぽい「それぞれの正義」などといったチープなものでなく、人間の根源的な欲望と欲望のぶつかり合いとして描かれます。正しさを振りかざしつつ、一方的に相手の行動を変更させようとする人間の愚かさは、人間より遥かに寿命が長い亜人種の視点から客観的に見ることで、如実にょじつに浮き彫りにされていくことでしょう。まさに、新しい時代の戦記物『カルディアナ戦記』を、是非ご一読ください!


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見どころピックアップ

どうして戦争を止められないの?

「もし仮に、この国が滅ぼされて、遠い異国の文化を押し付けられたとしても、前の方が良かったという人が必ず現れて、最後まで激しく抵抗するでしょう。文化とは、そういったものではないでしょうか?」



それでも、ボクがやらなきゃ!

「信念を貫こうとするのは、とても素晴らしい事だと思います。でも多くの人はそれを成し遂げる事もなく、一生を終えてしまうのが普通。そしてそれを恥じる必要もありません。正しいことも、良いことも、ほかの誰かがやってくれれば、それで良いのではないでしょうか?」



女神は一度も微笑んでくれなかったじゃないか!

「誰の目から見ても正しい正義など存在しない。故に、本当に正しいかどうかは、この際関係ない! 重要なのは、より多くの人間に、自分こそが正しいと信じ込ませる事なのだ!」



どうして人は、戦わないといけないんだろう?

「国の死とは、言わば文化の死! わたし達は、わたし達の愛するこの国と文化を護り抜く為にも、何としても生き延びなければならないのです! 例え最後の一人になったとしても!」



僕は本当は戦いたくなんかないのに

「なんでだ! なんでこんな事になるんだっ! 俺はただ、自分が生まれ育ったこの大好きな故郷で、普通に生きていきたいだけなのに! 侵略者どもめ! 帰れ! 出て行け! よくも! よくもっ! 俺の大好きな場所を! 俺の故郷を! よくも!」



カルディアナ戦記Ⅰ『月の中で見た夢』

「この国では、強さという名の力こそが正義なんだ」
異文化の交流地点にして、交易の要所でもあるルブーラム皇国の皇都パトリシア。独特の支配体制のもと、千年に渡る長い歴史の中で一度も陥落したことのない難攻不落の皇都が今、大きく揺れていた。運命に翻弄されながらも、戦乱の時代を生き抜こうとする人々を描く、剣と魔法のヒロイック・ファンタジー第一弾。
(13万文字 文庫本250ページ相当)

読者の感想(1巻)



カルディアナ戦記Ⅱ『天翔る大河を越えて』

「自ら悪を自負している人間など居ないのです」
皇軍の司令官カルディアナは、皇宮に潜入した隠密の体に憑依していた、謎の魔女の正体を探り始める。一方の魔女も、隠密の素体を取り戻すべく、次なる策謀を企てていた。千年祭を蜂起の日とする『審判の時』と、そんな戦乱の時代に生きる人々の姿を、様々な視点・立場から描いたヒロイック・ファンタジー第二弾。
(13万文字 文庫本251ページ相当)

読者の感想(2巻)



カルディアナ戦記Ⅲ『星降る眷属の宴』

「女神は一度も微笑んでくれなかったじゃないか!」
遂に、地母神軍の侵攻が始まった! 戦争は正義も悪もなく、人間を獣へと豹変させていく! その地獄のような惨状の中、銀の翼をもつ少女は一体、何を願うのか? そして全てを失った異人の若者がとった、意外な行動とは? 剣と魔法のヒロイック・ファンタジー第三弾。カルディアナ戦記ルブーラム皇国編、ここに完結!
(19万文字 文庫本363ページ相当)

読者の感想(3巻)



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