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カドルステイト物語 外伝『情熱の氷』紹介文

はじめに

 カドルステイト物語 外伝『情熱の氷』は、本編『カドルステイト物語』のスピンオフ作品ですが、本編を読んでいなくても十分楽しめる独立した物語として書きました。実は私としては、一冊の本として非常に気に入っている作品なのですが、「外伝」と付けたのがあまり良くなかったのか、この本をいきなり手に取って読んでみよう、って人が少なかった意味で失敗でした。つまり私としては、カドルステイト物語は全7巻という長編シリーズなので全部読むのは大変だけど、1冊だけならお試しで読んでみようかな、というお手軽な本にしたかったのですが、その狙いは見事に外れてしまいました。

 このnote記事では、そんなカドルステイト物語 外伝『情熱の氷』の魅力を余すところなくお伝えしたいと思います。本編を読んでなくても充分楽しめる独立した物語。私のお気に入りの1冊。本編全7巻を読み終えた方は勿論、カドルステイト物語を読んだことが無い方も、ぜひお気軽にご一読下さい。


「抗え! お前はまだ、生きてるだろうが!」
冒険者の国ディクトリア。世界中から腕に覚えのある猛者達が、一攫千金を夢見て集まってくる事で知られているこの国に、『死を呼ぶライド』と呼ばれる一人の戦士が居た。リーダーとして仲間を纏めながら、刻一刻と変化する戦いの場で選択を迫られ続けていく中で、ライドは多くの挫折を経験し、戦うこと、生きることの意味を見出していく。カドルステイト物語の本編を読んでなくても充分に楽しめる一冊! 孤高の戦士ライドの哀しい過去に光を当てた、本格長編ファンタジー待望の外伝。
(19万文字 文庫本359ページ相当)

ストレスフリーでは味わえないカタルシスが、そこにある

 二度と取り返しが付かない過去。やり直しのきかない一生の後悔にこそ、重みがあると思いませんか? その悔恨の念に涙する事は、決して弱さの証明ではありません。「勝利」や「成功」だけでなく、「敗北」や「失敗」の中からも美しい物語は生まれます。カドルステイト物語 外伝『情熱の氷』は、子供の頃に構想を練った本編とは一味違う、大人になった今だからこそ書ける人の激しい葛藤や、挫折を丁寧に描きました。そこにはストレスフリーな作風では絶対に味わうことの出来ないカタルシスがあります。主人公は何度も何度も膝を折っては立ち上がり、果敢に戦いの場へと向かっていきます。カドルステイト物語 外伝『情熱の氷』は、そんな物語を楽しめる方に、ぜひ読んで欲しい一冊です。

 もちろん『カドルステイト物語』と銘打っている以上、この外伝も繊細な心理描写や、絡み合った糸が徐々にほどけていくような伏線など、多くの仕掛けが用意されています。また『カドルステイト物語』の代名詞と言える、棒立ちの無い連動的な戦闘シーンも健在です。
 本編を読んだことが無い人でも、十分に楽しめる独立した物語。カドルステイト物語 外伝『情熱の氷』を、ぜひ多くの人に読んで欲しいです。


悲劇を美しい物語に

 今の時代ファンタジーというと、人の醜さや残虐性、時には過激な性描写を前面に押し出した「ダークファンタジー」が1つのジャンルとして人気を博しています。私もプライベートではダークファンタジーを楽しんでいますが、しかし自分で書く物語においては、美しい普遍的な物語を書きたいと、常に考えています。カドルステイト物語 外伝『情熱の氷』は、そういう意味で私にとって、1つの大きな挑戦でした。

 私は物語を書く時、常に子供を意識します。自分が子供の頃に読んだファンタジー小説がそうであったように、読み終わったあと希望が湧いてくるような、美しい物語を私は書きたい。過激な残虐描写や性描写が登場するダークファンタジーは、個人的に楽しむ分にはいいですが、自分の子供には見せられません。

 では、ファンタジーとダークファンタジーの境界線は、一体どこにあるのでしょうか? 悲劇的な結末を迎える物語 = ダークファンタジーなのか?と問われれば、私は違うと考えます。予定調和的なハッピーエンドに対するアンチテーゼとして生まれたダークファンタジーは、人間の醜さや残虐性、性描写などをグロテクスにえぐり出し、悲劇的な結末を迎えることで知られていますが、しかし重要なのは結末ではなく、その過程ではないでしょうか? 

 たとえ悲劇的な結末を迎える悲しい物語だったとしても、その過程の中で主人公が大きく成長を遂げ、純粋な愛が丁寧に描かれた場合、それはダークファンタジーでは無いと思います。そんな思いが、私にカドルステイト物語 外伝『情熱の氷』を書かせました。

 カドルステイト物語 外伝『情熱の氷』は、美しいファンタジーに対するアンチテーゼとして生まれたダークファンタジーに対する、アンチテーゼです。悲劇的な結末を迎えながらも、一筋の希望の光が見える物語。そんな美しい悲劇の一端を、ぜひ皆さんにも楽しんで欲しいです。


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登場人物紹介

ライド

『死を呼ぶライド』の異名を持つ戦士。近年頭角を現し始めたパーティのリーダーだが、直近では失敗が続いている。実年齢より上に見られることが多い。外伝の装備デザインは、冬を意識した厚手の格好というコンセプトで依頼しました。本編ではブレストプレートを装備しているライドですが、若い頃は貧乏な設定。AD&Dでは鎧のメンテに費用が掛かる事から、そんなゴージャスな装備は出来ないだろうという事で、レザー+コートになりました。それでも老け顔に大型武器を持たせる事で、キ◯ト君っぽくならないようにデザインして頂いてます。

テリガル

『不屈の戦士』の二つ名を持つドワーフの戦士。優秀な鍛冶職人である父の工房の宣伝の為に、その武器を手に冒険者として活躍している。無類の酒好き。本編ではドワーフ成分が足りなかったので、外伝では是非ドワーフを出したいと思ってました。貧乏とはいえ、父のブレイブは鍛冶工房の親方で、ドワーフらしい重装備に身を固めてます。目先の細かい事や損得勘定にとらわれにくい等、人間との考え方の違いを意識して書きました。

フィリーネ

ディクトリアの上流貴族ラーイオス家の次女。まだ16歳だが政略結婚の為、遠い異国の地に嫁ぎに行く事になった。貴族としての誇りが彼女を支えている。まるで氷のように冷たい印象を受ける少女。真紅の髪は、作品のテーマでもある内に秘めた情熱を表現しています。『情熱の氷』とは、まさに彼女のこと。季節はやがて冬から春に移り変わり、野山を覆っていた雪が解け始める頃。フィリーネの心も温められ、そして彼女自身も……


オスカー

グランダート教会に仕える神官で、幸運の神ガルフィンを信仰している。吟遊詩人のサーシャとは特別な関係で、彼女のことを最優先に考え行動する。作中でライドと衝突した人物ですが、しかしオスカーは決して悪い人ではありません。ライドはあくまで仕事に本気。命懸けで護衛対象者を守る覚悟でしたが、オスカーは仕事より恋人や仲間が大切という立場。結果ライドと齟齬が生じてしまいました。しかし実際には私を含めた多くの人が、オスカー側の人間だと思います。


サーシャ

熟練の女性冒険者。彼女が扱う特殊な形状の短弓は、リラと呼ばれる弦楽器の機能も備えている。透き通るような歌声は、味方の勇気を奮い立たせる。


トリスタン

長身でも小柄でもなく、太っている訳でも痩せている訳でもない。これといった特徴のない盗賊。お調子者で軽い性格。カードゲームが趣味。



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