見出し画像

【精神科入院】「隔離」(保護室)を2度1週間過ごして

こんにちは、たななこんぶ/発達障害ASDです。

精神科…
入院…
隔離…

聞いただけでぞっとする方、
何のことやらさっぱりの方、
怖いもの見たさ?で興味津々な方、

みなさん反応はそれぞれかと思います。

私は、現在の精神科病院に計7回、入退院したことがあります。

うち、2回は、「隔離」と言って、鍵をかけられた、自分からは移動できないお部屋(保護室)に入院していました。

うつ病などで精神科の認知度は高まりつつありますが、
精神科の入院、それも「隔離」なんてまだまだ知られていない世界だと思っています。

そんな世界を、
・少しでも多くの方に知ってもらいたく、
・変な偏見がなくなることを願って、
この文章を書き進めさせていただきます。

1. 「隔離」ってなーに?

まずは、私の経験をお話する前に、
そもそも「隔離」って何なの?
をお伝えする必要があるかと思います。

そこで登場するのが、精神科入院に関する法律です。
法律名は、「精神保健福祉法」です。

※難しいので、「公益社団法人 日本精神科病院協会」のホームページ「精神保健福祉法の解説」を参考、引用します。(https://www.nisseikyo.or.jp/guide/psychiatry04.php)

「精神保健福祉法」は、簡単に言うと、
「精神障害者の医療と保護、および国民のこころの健康の増進を目的とした法律」です。

精神科入院は、この「医療と保護」の部分です。

そして、「隔離」は、患者さんの保護のひとつとしてある、「行動制限」のうちのひとつです。

隔離」の定義は次のとおりです。自分でもややこしいので、図1を作りました。一目瞭然です。

「隔離」とは、「内側から患者本人の意思によっては出ることができない部屋の中へ一人だけ入室させることによりその患者を他の患者から遮断する行動の制限」と定義されています。

日本精神科病院協会 「精神保健福祉法の解説」
図1 「隔離」の位置づけ

2. 「隔離」に当てはまる患者さんはだーれ?


次は、どんな人が「隔離」状態にあるのか?「精神保健福祉法の解説」では、5パターンある、と説明されています。

①他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがあるなど、その言動が患者の病状の経過や予後に著しく悪く影響する場合

②自殺企図又は自傷行為が切迫している場合

③他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為、器物破損行為が認められ、他の方法ではこれを防ぎきれない場合

④急性精神運動興奮等のため、不隠、多動、爆発性などが目立ち、一般の精神病室では医療又は保護を図ることが著しく困難な場合

⑤身体的合併症を有する患者について、検査及び処置等のため、隔離が必要な場合

日本精神科病院協会 「精神保健福祉法の解説」

ちなみに、たななこんぶは2回とも、②「自殺企図、自傷行為」に該当しました。

いや、7回とも死んでしまいたい気持ちがたかぶって入院していますが、
この2回は「日本酒ラッパ飲みのただの二日酔い」未遂、「2階から飛び降りても死ねないと知りながらも衝動を抑えられない」症候群、と
より自殺に近かったので、「隔離」状態と判断されたのでした。

3. 「隔離」のお部屋=保護室

「隔離」状態にある患者さんは、保護室というお部屋にいます。

ちらっと書きましたが、とにかく厳重に鍵がかけられている、出入り不自由なお部屋です。

また、24時間監視モニターが天井に、実は付いています。

医師が持ち込みを許可した物以外、中へ持っていくことはできません。
例えば、たななこんぶは目が悪いのでメガネは許可される、そんな感じです。

室内はいたってシンプルです。

〈保護室の中にあるもの〉
布団一式、トイレ、トイレ流すボタン、トイレットペーパー、使い捨てスリッパ(軽量)、紙コップにお茶

以上です。

間取りは病院によっても、また、同じ建物内であっても異なるらしいです。

私は、色調はカーキ色、布団6枚くらいひけそうなくらい広かったのですが、
別の患者さんは、木目調で布団は3枚くらいが精一杯、と言っていました。

なので、個人的な感想にはなりますが、基本的設備は同じで、カラーバリエーションはある、といった感じでしょうか?

基本的設備とは、図2で表すパーツや、表現が難しいのですが、硬いけど芯は柔らかな壁・床をいいます。

壁・床がどことなく柔らかいのは、暴れたり自傷行為で、例えば患者さんが頭をガンガンぶつけてもダメージが減るように、という理由で設計されていると思います。

参考までに、私が入った保護室を再現してみます↓

図2 たななこんぶの保護室の再現

①布団
②トイレ
③時計が見えるための窓
④洗面所行くための鍵のかかった扉
⑤医師や看護師などがやってくる鍵のかかった扉
⑥日光を取り入れるために壁ではなく柱

①布団と②トイレの間に、一応、間仕切りがあります。
でも背は高くなく、トイレットペーパー置き場です。(ペーパーホルダーもありません)

図3 布団の位置からみた、保護室の中の絵

図3は、のちに保護室から出ることができ、外泊した際に描いた絵です。
本当に何もなく、③の時計と⑤の扉、②のトイレとの間仕切りの木の色しか、描く対象物はありません。
この、なんともどんよりとした色調、感じとっていただけますでしょうか?
塗り方も、書き殴ったようなタッチ、精神的に荒れているなぁ、と自分でも思います。

精神的にダメージを食らっている心情が反映されているとはいえ、照明は暗めです。

次はいよいよ、保護室での様子をお話いたします。

4. たななこんぶ、保護室へ入る

死にたい気持ちが高まって、入院が決まったたななこんぶ。

まずは、閉鎖病棟に入るために、付き添いの看護師さんが鍵を開ける。カチリ。

次に、まっすぐ歩いて、症状重めの患者さんが過ごすエリアへ入る。また鍵でカチリ

そのまた次に、保護室が並んでいるエリアへ入るのに、鍵でカチリ

自分の病室「保護室○号室」に入る。開けてカチリ
たななこんぶが部屋(保護室)に入った。
看護師さんが施錠する。カチリ。

はい、たななこんぶ、(しませんでしたが)どんなにわめこうと叩こうと暴れようと、
看護師さんが来ない限り、⑤の扉は開くことはありません



わかりやすく流れを追う形で書きましたが、
入室には、危険物を持っていないか、ボディーチェックを通過する必要があります。

女性のみなさん、首絞め行為ができてしまうという理由でブラも外します。

ズボン、ゆったりと履くタイプの方、紐が通っているのなら、抜くか、ないズボンに履き替えます。

先にも言ったとおり、メガネ以外はアウトなので、腕時計も外します。



…多くの方、ここまで読んで、ぞっとしたのではないでしょうか?



本人的にはどんな感想か、ですか?

うーん、そうですねぇ、
入室時は、看護師さんたちもできる限りすんなり入ってもらいたいから、特に怒られることもありませんよ。

それに、診察が済んだ上で保護室まで歩いてきているので、案外冷静でした。

…というか、疲れ切っている(心身喪失っていうやつですか?)ので、私の場合は無駄な抵抗する気力もありませんでした。

あ、もちろんスマホも使えないので、「最後にしとくことないか?」と聞かれ、
最終スマホを触らせてもらえたりもしましたよ?

怖いっていう気持ちを和らげるように看護師さん、一生懸命働いている、そんな印象を持ちました。

問題は、入室後、退屈な、退屈な、退屈な〜時間です…

5. 保護室での1週間生活

保護室に入ったら、何もすることはありません。
食事の時間を待つだけです。
その食事すら、配膳してもらうので、何も体を動かしません。
看護師さんは忙しいので、用事が終われば去っていってしまいます。



朝6時、起床時刻
順番がきたら、カチリと鍵を開けて看護師さんがやってきます。
検温と、新しいお茶をもらう。
紙コップに日付が書かれていて、看護師さん側からしたら紙コップの衛生面の意味かもしれませんが、
患者側としては、今日が何日なのか検討もつかないので、この紙コップ、役立ちます。


また暇な時間。


7時30分ごろ。朝食。
看護師さんが運んでくれます。
さすがに食事を床には置けないので、臨時の特設机で食べます。

また下膳にきてくれます。薬を飲みます。



あ、保護室にいる患者さんは、主治医でなくても毎日1回、診察があります。
何時にお見えになるのかは、わかりません。


たななこんぶは、しずかな部屋をしずかに過ごすタイプでしたが、
中には孤独?に耐えられずに泣いたり大声を上げたりする患者さんもいるようです。
それ、BGMで聞き流します。


昼12時ごろ。昼食。
朝食の時と同じです。



あ、お茶が飲んでしまってなくなっちゃった…
最初は気を遣って我慢していましたが、
隣の保護室の人の声が聞こえてきます。

どうやら、用事があったら、「すみませんー!」なり、「看護師さーん!」なり、
誰もいない壁に向かって声を出す仕組みだそうです。

すると、
・「どうされました?」と部屋の中に声が入ってきたり、
・受信をキャッチしていきなり鍵をカチリ。と開けてやってきたり、
・看護師さん、忙しすぎて、どんなに声を出しても不在で聞いてもらえず空振り、時間をあけてトライしてください、だったり…
と、お茶一杯もらうだけで苦労しました。



暇だなぁ。



夜6時ごろ。夕食。
朝食、昼食に同じ。


暇だなあ。時計見ても全然進んでいません。


不眠症なので、眠前薬の時間。
薬を飲みます。
「おやすみなさい」
看護師さん、去っていきます。


寝ても起きる、を繰り返す。不調時あるある。
深夜当番の看護師さん、1時間に1回、様子を見にきてくれていると知る。
…だって、カチリ。って音がするからわかりました。



そして翌朝6時をむかえます。
以降、繰り返し。

このサイクル、辛抱強い方なので3〜4日は持ちました。
でも、7日より増えると暇過ぎて、退屈過ぎて、しんどい。



たななこんぶの乗り切った方法
①聞こえない範囲内で(聞こえていたかもしれないけどね)、歌を歌う。童謡多め。
②歌に飽きたり、難しい曲は、口笛で楽しむ。アルプスの少女ハイジの曲は絶対。
③スペースは広いので、ストレッチしたり、ぐるぐる歩いたりする。

6. 保護室卒業へ向けて

「暇過ぎてやってられない」という気持ちになってきたら、保護室卒業=「隔離解除」の兆しです。
あとは、看護師さん目線で見ても、おとなしくなったかどうか、も重要な判断材料です。

(たななこんぶは、比較的おとなしくいた方なので、短い日数で済んだ気がします。)

いよいよ卒業のステップ、「解放観察」が始まります。

解放観察」は、最初の方で書いた、症状重めの患者さんが集まる少人数エリアで、
問題を起こさずやっていけるか、様子を見ながら集団生活に慣れていく過程です。

そこで初めて、「僕、私も、保護室だったんだよ」と情報を得ます。

解放観察」の最初の一歩は、食事を少人数エリアで取るところからです。

無理に患者さん同士仲良くなる必要はどこにもありません。

なぜなら、患者さんは治療のために入院してきているのであって、
患者さん同士仲良しこよしをしに来たわけではありません。

だけど、寂しさのあまり、仲良くなりたいとか、仲良くしなきゃ、と勘違いする患者さんがいたのも事実です。

話は戻って、「解放観察」クリアしたら、
次は少人数エリア、それもクリアしたら、
今度は大人数エリアでそれぞれの課題クリアに向けて日々を過ごします。

そしたらあとは退院に向けて、外泊したりなど、具体的な行動をしていくのみです。

7. 総括、「保護室にまた入りたいですか?」

色々、保護室での生活を描くために、堅苦しい説明をしなければならなかった、がここまで書いてきて思う感想です。

それだけ、マイナーな世界を経験しているんだなぁ、とも思います。

だけど、病気にかかっている期間の長さやしんどい思いをぶり返す可能性の高さなどから、
このマイナーな世界を発信できる人は、数としては少ないのではないでしょうか。

だから、この記事を読んでくださっている皆さんに、イメージがつきやすいように書く、を心がけたつもりです。

7回も入院していますから、様々な病気の患者さんと出会ってきました。
そして、「隔離」経験者の半数以上が、「保護室」と聞いただけで「あそこには二度と行きたくない」と答えている印象があります。

たななこんぶも、めっちゃ嫌いではないですが、「できれば保護室には行きたくない」です。

その理由は、看護師さんやお医者さんが怖いから、ではありません。

置かれる物理的環境がしんどいため、です。

お茶がほしくてもすぐにはもらえない。
トイレしているところ、もしかして見られているのではないかという、根拠のない余計な不安。
外の空気を吸えない。

これら、その病院のスタッフのせいではなく、制度上の問題です。

だから、根本的に見直すなら、制度の面から検討し直す方が良いと思います。

だけど、私が言いたいことは、そこではありません。

精神科の制度に沿って、精神科の看護師さん、お医者さんは、患者さんを思って対応してくれている面が少なからずともある、という認識が、もう少し広まっても良いのではないか、と言いたいです。

全国、世界、に目を向ければ、そりゃ「精神科のお医者さん・看護師さんあり得ない!」があるはずです。

でも、世の中的に、↑の見方に偏っているのでは?とも同時に思うのです。

少なくとも私は、精神科のお医者さん・看護師さんに、生きる力を教わり、生きる力が育つように一緒に取り組んできてもらいました。

例えば。看護師長Iさん。
目で見た方が深く理解できるASDの特性×I師長の塩対応キャラ(たななこんぶに対しては。)の効果で、
「人生最低限行っていくおやくそく」を堅く守っています。

その「おやくそく」がこちら↓

ごはんたべる
くすりのむ
よるはねる
Ns.の言うこときく
(めっちゃ小さな字で)あと大声ださない

《看護師長Iさんによる4箇条》

だから私は、文句よりも先に感謝を言いたいです。
そして、日頃精神科に従事してくれているお医者さん・看護師さんに、あたたかい目が少しでも、いやもっと、注がれることを願っています。


#創作大賞2024 #エッセイ部門

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?