普通の会社員がフリーランスで稼ぐ

普通の会社員がフリーランスで稼ぐ #全文公開 No.6 ビジネス系フリーランスの働き方と報酬

【Episode4】転勤族の妻でもキャリアを続けたい

「そもそも転勤族の妻だと正社員としての勤務は難しいんですよ」
――そう話すのは長岡陽子さん(32歳・仮名)。

 新卒で大手商社に総合職として入社。繊維関係の部門に配属され、高い技術に裏打ちされた日本独自の原料や素材を国内外のメーカーに販売する法人営業の仕事に従事してきた。
「学生時代から、国際交流サークルで活動するなど、海外とつながりのある仕事に就くのが夢でした。商社での仕事はまさに自分がやりたかったこと。毎日忙しかったけど、充実していました」

 働き方を変えるきっかけは、30歳での結婚だった。
「夫は〝転勤族〟。もちろんそれは付き合っていたときから分かっていたことなんですが、どこかリアリティがなくて。結婚後しばらくして実際に夫が転勤することになって、人生の選択を迫られて初めて、その事実と向き合わされることになりました」
 仕事を辞めて夫の転勤についていくのか――
 仕事を続けて「遠距離婚」を選ぶのか――
 長岡さんは、前者を選んだ。

 「社内に子どもを持って働くワーキングマザーの方はいましたけど、うちの会社の場合はみなさんすごく無理をして働かれている印象でした。私にはとてもできないなぁと。そういう思いもあって、会社に勤めつづけての遠距離婚ではなく、これを機会に一度辞めてみるのもありだと考えました」

 夫と一緒に東北地方の街に転居し、しばらくして仕事を探し始めた長岡さん。
「でも、考えてみたら、2~3年おきに転勤がありますし、子どもが欲しい年齢でもあったので、正社員での勤務は難しいんですよね。派遣社員やパート、アルバイトでの仕事情報も見たのですが、なかなかこれまでの自分の経験が活かせる仕事がなくて・・・」
 
 そんななかインターネットで仕事情報を検索するうちにたどりついたのが、フリーランスに仕事を紹介する会社。今はこの会社からの紹介を受け、アパレルメーカーの営業資料作成の仕事を在宅で担当するようになった。
「スカイプで営業担当の方と定期的に打ち合わせをして方針を決め、小売や百貨店などクライアント向けの営業資料を作成しています。商社の法人営業時代に提案資料の作成はかなりやってきたので、その経験が活きるのが嬉しい。細かく指示を受けるのではなく、信頼して任せてもらえる感覚も自信になります」
 
 フリーランスの仕事の傍ら、大学院進学にも意欲を見せる長岡さん。
 「自分の経験を通じて女性のキャリアプランに興味を持つようになりました。今は時間も融通が利くので勉強して、大学院で学べるように準備をしたいと思っています」

企画・マーケティング・人事・広報・法務・・・文系総合職フリーランスの職種分類とは?

 では、先ほどからお話ししている文系総合職の新たな働き方「総合職系フリーランス」の仕事の種類にはどのようなものがあるでしょうか?
 左から簡単にまとめてみました。

・企画・マーケティング系の仕事
 商品・サービスのコンセプト設計、各種調査設計、グループインタビューから調査結果の定量・定性分析、商品・サービスの販促戦略立案・実行など。
→主にメーカーの商品企画部やマーケティング部で経験を積んだ人材や、広告代理店で販促・プロモーションなどに関わってきた人材が業務を担います。
 
・人事系の仕事
 人事制度の策定および運用、採用戦略の策定・進捗管理・面接、研修の設計や研修講師など。
 →主に企業の人事部で経験を積んだ人材や、人材紹介会社で採用支援業務を行ったことのある人材、研修会社に勤務していた人材などが業務を担います。
 
・広報系の仕事
企業および商品・サービスの広報戦略策定、メディア開拓、イベント企画、リリース作成・配信など。
 →主に企業の広報部で企業広報業務や商品広報業務を担当したことがある人材や、PR会社で幅広く広報活動支援を行ってきた人材などが業務を担います。
 
・会計・経理系の仕事
会計・経理の仕組みづくり、月次の経理業務、財務分析など。
 →主に企業の経理部などで経験を積んだ人材や、金融機関等で財務分析・経営分析などを行ってきた人材が業務を担います。
 
・事業戦略系の仕事
新規事業および新規プロジェクト実施にあたっての調査、戦略立案、関連各部署との連携構築、戦略の実行支援など。
 →主に企業の経営企画室などでの経験を持つ人材やコンサルティングファームでのコンサルタント経験のある人材が業務を担います。

大企業と中小企業で異なる、フリーランス人材を求める事情 

 文系総合職出身のフリーランスの活用法に関しては、大手と中小・ベンチャーで多少の違いがあるようです。
 大手企業の場合、社員の限られたリソースを高付加価値業務に集中させるためにその周辺業務に関してフリーランスの力を活用したり、産育休や各種の休職を取得する正社員の代替人員としてフリーランスの力を活用したりするような事例が見られます。
 文系総合職出身のフリーランサーたちは、正社員として企業の基幹業務についていた経験がありますから、非常にスムーズに代替人員としての能力を発揮することができます。
 
 一方、中小・ベンチャー企業に特徴的な活用方法は、経験者不在のチームに「先生役」として活用する事例や、専門的スキルを持つ人材を一時的に活用するような事例です。
 ある程度、会社としての歴史もあり、豊富に人材がそろっている大手企業と違い、中小・ベンチャーは限られた人材で一通りの業務を円滑にこなさなければならないというシチュエーションが生まれます。
 専任のチームはあるけれど、経験者がいない、あるいはメンバーはみんな他業務との兼務でリソースを集中投下できない、そんなケースが多々見られます。
 たとえば社内に広報チームはあるのだけれども、企業広報の経験者がいないといったことは中小・ベンチャー企業ではよくある話です。こうした時に、豊富な経験と専門性を持つ総合職系のフリーランスを活用するのは、非常に道理にかなった方法です。
 
 専門的スキルを持つ人材の一時的な活用という意味で言えば、「これまでの商品開発経験を活かして女性向け商品を新たに開発したいが、女性マーケットの事情がよく分からない。女性向け商品の開発経験がない」といった会社が、その分野の知見を持つ人材を一時的に活用したり、「ECサイトを構築したいが、社内に経験のある人材がいない」といった場合に外部の経験豊富な人材を活用したりするケースもあります。
 
 大手、中小・ベンチャーともによくあるのが繁忙期の業務吸収先として外部の総合職系フリーランスを活用する事例です。たとえば、採用などは季節に応じて繁忙期が大きく変動するので、その波に応じて、業務の一部に外部人材を活用することは珍しくありません。
 会社の規模や事業内容、時期に応じて外部の優秀人材を活用することで柔軟な組織運営を行う企業が増えています。

総合職系フリーランスの働き方と報酬事情

 ここでは具体的に文系総合職からフリーランスに転じた人たちの一般的な働き方のスタイルや報酬面に関してお伝えしていきましょう。
 やはりフリーランスとして活動するためにはそれなりの経験と専門性が求められます。そうなると事業会社で10年前後の経験を積んでからフリーランスに転じるのが一般的です。私が拝見していると30代、40代が中心層だと感じています。実際、女性総合職人材に主に業務委託のお仕事をご紹介している弊社の事例でも平均年齢は38歳。正社員の転職市場では「30歳転職限界説」「35歳転職限界説」といった話がよく聞かれます。実際、正社員の転職市場ではマネージャー人材として転職をするなら話は別ですが、プレーヤーとしての転職は、実態としては採用側である企業もやはり30代前半くらいまでを希望される場合が多いのは事実です。
 ところが総合職系フリーランスは年齢が価値になります。正確にいうと、年齢そのものが価値になるわけではないのですが、年齢とともに重ねてきた実績や経験がクライアントにとっては魅力に映るのです。
 ですから、結果的に活躍している総合職系フリーランスの方は周囲を見渡すと30代、40代が中心になります。
 

 次に、気になる報酬面について。弊社の事例ですと案件やご経験、関与度合いにもよりますが、週3稼働相当のお仕事でリーダークラス(事業会社でリーダーや一つの仕事の主担当を任されていたような人)で月額報酬20万円前後~、マネージャークラスの方(事業会社で管理職を経験していた人)で月額報酬30万円前後~を手にされている方が平均的です。
 ただし、仕事の種類や本人の経験値などにもより、かなり幅があるのが現状です。月に3~4回程度、リサーチのお仕事を在宅で請け負い10万円前後の収入を得ている人もいれば、高額な方になると、案件を2~3個掛け持ちして月額60万円~70万円程度の収入を得ている人もいます。
 複数の案件を掛け持ちされている方は少なくありません。週2~3稼働程度の毎月のように発注を受ける案件を2本程度掛け持ちされている場合もありますし、毎月発生する週3稼働相当程度の比較的ボリュームの大きい案件を持ちつつ、単発で不定期に発生する業務を複数請け負っているケースもあります。

【例1】Oさん(人材系)の場合

 Oさんは、アパレル系ベンチャーで人事のデータベース整備の仕事を月35万円で請け負っています。だいたい週3日前後を使うようなボリュームの仕事です。最初こそ顔を合わせて打ち合わせを行っていましたが、最近ではほとんどクライアントとはスカイプとメールで意思疎通を図られているそうです。このほか、もう一つ別のIT系ベンチャーで新たな人事制度設計のお仕事をされています。こちらの業務の報酬は月30万円程度。

【例2】Rさん(営業系)の場合

 Rさんは、毎月3社ほどで営業資料作成の業務をそれぞれ月10万円で請け負っています。営業戦略の方向性を社員の方と打ち合わせながら、最適な提案資料を作っていく業務です。

 働き方も様々です。企業に常駐する場合もあれば、定期的な打ち合わせ以外は在宅で業務を行う場合もあれば、打ち合わせもメールやスカイプなどで済ませ、基本的にはすべて在宅業務という場合もあります。社員のような勤怠管理が行われるわけではないため、働く時間や場所については非常に自由かつフレキシブルなのが特徴です。自宅に限らず、カフェや図書館、シェアスペースなど携帯電話とパソコンさえあれば、仕事場になりえます。

 ウェブを使ったマーケティングやプロモーションの仕事をフリーランスで請け負うある男性フリーランスは、仕事の種類により働く場所を変えるといいます。提案を練るような想像力を駆使する業務の場合は、遊び心あふれるシェアスペースで、プロモーション施策の効果分析のような静的な業務は落ち着いたカフェでといった具合です。こうした自由度や柔軟性はフリーランスの最大の特徴のひとつですね。

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