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#映画感想

王国(あるいはその家について)         草野なつか監督 2018年作品

王国(あるいはその家について) 草野なつか監督 2018年作品

英ガーディアン紙・英国映画協会〈BFI〉による年間ベスト作品に選出された日本映画ということで、気になっていた映画。
ガーディアンというのは、元々は、マンチェスターで刊行された、近年、名匠マイク・リーも映画化した「ピータールーの虐殺」と言われる民衆弾圧事件も取材した、中道左派・リベラル寄りの新聞で、音楽の情報も多く(Haward DevoteやMicheal Headの特集も読んだことがあります)、

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「Stop Making Sense」4Kリストア版@IMAXシアター

「Stop Making Sense」4Kリストア版@IMAXシアター

約40年振りに観ました。83年作ですが、僕が見たのは、85年。レイト・ショーのみの公開でした。
当時は、メンズ・ビギがプロモーションをサポートしており、店舗にも大きなポスターが貼ってありました。あの時代、肩幅を強調したジャケットが大人気でしたが、あのスーツは肩だけでなく、身頃も巨大で来日時に観た能にインスパイアされたそうです。
改めて、彼らの音楽をまとめて聴いてから観たので、その辺の話から、映画に

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古澤健監督『STALKERS』

古澤健監督『STALKERS』

Stranger 映画館で古澤健監督の「Stalkers」を観た。 支配人の岡村忠征さんが昨年のベストワンに推す映画であり、彼がStrangerの運営から1月末で離れるとの事で、そのフィナーレを飾る映画でもあるので、そこに岡村さんの想いや下心があるのではと思いながら、急遽伺う事にしました。
現地には岡村さんだけでなく、監督の古澤さんもいらっしゃり、岡村さんか「面食らうと思いますよ」と声掛けられ、こ

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「枯れ葉」 アキ・カウリスマキ@ストレンジャー映画館

「枯れ葉」 アキ・カウリスマキ@ストレンジャー映画館

フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ。2017年の突然の引退宣言から、復活した最新作。
シンプルなストーリーですが、賞味期限切れのパンを持ち換えろうとしてスーパーのパートを首になった女性とアル中で金属工場を首になった男性のラブ・ストーリー。労働者を描いた「プロレタリアート三部作」の延長線上にある作品と言えます。
カウリスマキ独特の役者は無表情、セリフは棒読みが何とも言えぬ情感を醸し出す、正に“沁み

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アナザー・ラウンド/トマス・ビンターベア監督作品 レビュー@note

アナザー・ラウンド/トマス・ビンターベア監督作品 レビュー@note

最近、たて続けに見たデンマーク人監督トマス・ビンターベアの作品。
なぜこの監督に興味を持ったかと言うと僕の大好きなラース・フォン・トリアーらと共に、「純潔の誓い」と呼ばれる、映画を製作する上で10個の重要なルールを決めるという デンマークにおける映画運動【ドグマ95】を立ち上げた人だから。
 本作は、仕事でも家庭でも倦怠感、無力感の”中年の危機“に直面した4人の男性高校教師が『「人間は血中アルコー

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「Perfect Days」ヴィム・ヴェンダース監督作品

「Perfect Days」ヴィム・ヴェンダース監督作品

東京国際映画祭の先行上映時は、旅行中で
行けませんでしたが、やっと観る事が出来ました。(以下ネタバレ注意ですが、その話の筋というより、日常の何気ない風景や仕草 そして徐々に変わる感情の変化の描き方が素晴らしいです)
 カンヌで主演男優賞を受賞した役所広司さんが初めの1時間?近くは全くセリフはなく、古アパートに住み、朝早く起きてからのルーティン、そしてトイレ掃除の仕事、早く仕事が終わり、銭湯に入り、

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Roma directed by Alfonso Cuarón

Roma directed by Alfonso Cuarón



 Netflix が配給する作品が様々な映画賞を受賞したことによって、大きな論争を巻き起こした「Roma」。配信向けの作品は メリハリが効きすぎ、わかりやすすぎな印象がありますが、この作品は、フェリーニや小津の映画のように絶妙な構図で淡々と始まり、何気ないが記憶に残るシーンや出演者の表情が重なり合い時代のうねりを背景に、小さな家族や個人の話が一つの大きな物語になるというまさに”名作”の風格。映

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「ベニスに死す」のサントラ

「ベニスに死す」のサントラ



ルキノ・ヴィスコンティによる「ベニスに死す」のサントラ。作曲家アッシェンバッハ(ダーク・ボガード)がポーランド人の美少年タジオ(ビヨルン・アンデルセン)と出会い、若つくりの白塗りの化粧をしてタジオを追い求め、浜辺のチェアで彼を眺めながら朽ち果てていくという映画。その映画のイメージを決定つけたマーラーの5番「アダージェット」。監督ヴィスコンティが貴族の出という事もあり、これがヨーロッパのデカダン

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This Is England

This Is England



フォークランド紛争が勃発し、階級の分断と移民増加による人種問題が発生していたサッチャー政権下、1983年のイギリス。労働者階級(ワーキングクラス)が貧民層(アンダークラス)と呼ばれはじめた時代、極右政党ナショナルフロント(イギリス国民戦線)の実行部隊に取り込まれていくスキンヘッズ。
日本ではUKファッションとしてもてはやされたフレッド・ペリーもベン・シャーマンもそしてドクター・マーチンも彼らの

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