水谷たまえ

予備校講師(現代文・小論文)略歴:札幌予備学院国語科専任講師→河合塾札幌校国語科専任講…

水谷たまえ

予備校講師(現代文・小論文)略歴:札幌予備学院国語科専任講師→河合塾札幌校国語科専任講師。数年前身体をこわし、添削作業ができなくなったため小論文をリタイア。現在は現代文のみを教えています。コロナの時代に生きなければならない子どもたちのために何か役に立つことをしたいと思います。

最近の記事

退職のご挨拶

お久しぶりでございます。 しばらくサボっていました。 長いことと河合塾講師をやってまいりましたが、2021/03/31をもちまして、退職いたしました。 5年前に1回目の定年(笑)。 で、今回2回目の定年でございまして、円満退社となります。 あ、歳がバレてしまいましたね(大笑) 職業上、若く見せる方が多少おトクなので、心を砕いて若造りに励んで参りましたが、もうそういう努力もしなくていいんだぞ、と思うと、マジに気が楽ですww とりあえず、真面目な予備校講師という仮面は脱ぎ捨

    • 現代文の先生でも面白かった西浦教授の授業

      ライブで見逃していたのですが、昨日見て、非常に面白かったです。 もう一度、学生に戻ってもいいな。 大学の勉強って、こういうものですよね。 数学がダメですぅ、という人もいるかもしれないけど、∫とかΣとかの記号を見ただけで、うっ頭が、、、となる人でも、それなりに面白く感じるだろうと思います。 これを見て、「受験数学頑張るぞー」と思う人が一人でもいれば、それで十分じゃないかな。 勉強って、わからないことを、だんだんわかるようにしていくことですからね。 正直なところ、鈴木知事の決

      • 「評論」 国語教室2

        今日のお題は「評論」です。 なぜ大学入試の現代文で評論が出るのか? それは大学入試だからです。 (こういうのは同義反復、トートロジーともいいますw) いや、ジョークではないですよ。 大学に入るとたくさんの本を読まされますが、入学して間もないころはセンター現代文と同じくらいのレベルの本、学部に移るともう少し専門的な本や短い英文論文などが多くなります。 つまり、大学の授業についていくことができるかどうかのチェック、それが入試現代文の評論というわけですね。 では、こういう評論

        • 本日のおすすめ本 村上陽一郎『科学の現在を問う』 科学哲学の分野より

           科学哲学というのは科学や科学史を扱う哲学の一分野です。これは、前に紹介した近代芸術論とならんで、受験生が苦手とするジャンルの一つです。 今回のもわりと古い本なので、私たちが生きている今日の社会とのズレはあると思いますが、非常のよく出題されてきた本なので、これを選びました。興味のある人は読んでみてください。 ただし、この本を読んだからといって、いきなり現代文の成績が上がるわけではありません。以下のようなことをざっと知っておけば十分だと思います。 さて、「科学者」という概念

        退職のご挨拶

          おすすめ本 宮本輝『星々の悲しみ』 予備校生たちの翳りと輝き

          短篇集です。表題作『星々の輝き』は中篇くらいの分量で、主人公は予備校生たち。 青春のもつ不思議な翳りと輝き。 (なんか帯の宣伝文句みたいですね) この作品は、オッサン化したりオバサン化したりしてしまった大人の心も惹きつけますが、高校生や受験生くらいの年齢の人たちなら、共鳴したり、考えさせられたりするところがいろいろあるんじゃないかなぁ。 本当にいい作品です。 もっと熱く述べたいけど、ネタバレになるから書くのは我慢。 あ、一度、マーク模試で出されたこともあったっけ。 付

          おすすめ本 宮本輝『星々の悲しみ』 予備校生たちの翳りと輝き

          Seventh Day’s Interlude

          noteの投稿は今日で7日目です。 最初の7日間はどんなことがあっても毎日一つ投稿する、という当初の目標はこれで果たすことになります。 どんな文体で書くか、どんなタイトルをつけるか、そもそもnoteは私の目的にかなったツールなのか。 実際に作業しながらそういうことを考える1週間でした。 でも今日は「Interlude」なので、ちょっとちがう話を。 GWの連休中、Amazon Primeで劇場版『エヴァンゲリオン』が無料公開されていたのを知っている人も多いかもしれません。

          Seventh Day’s Interlude

          デュシャンの「泉」は美といえるのか? 佐々木健一『美学への招待』

          一時期センター現代文に「近代芸術論」の分野から何度か出題されたことがあって、たまに生徒さんに、「評論の勉強に役立てたいので近代芸術論の本を教えてください」とリクエストを受けることがあります。 本を読んだから成績がすぐに上がる、などということはまずないのですが、とくにこういう近代芸術論(美学と言い換えてもいいと思います)のように哲学の流れをくんだ抽象度の高い評論の場合、多少でも読み慣れておくということは重要です。 読んだからといって好きになる人は稀でしょうし、すらすらと読める

          デュシャンの「泉」は美といえるのか? 佐々木健一『美学への招待』

          「具体例」 国語教室1

          生徒さんの質問に「具体例は読み飛ばしていいですか」というのがたまにあります。ダメに決まってますよね。筆者は必要だと思って書いているのですから。 「時間が足りないから読み飛ばしたいです」とか、「読みとばしてもいいと習いました」とか、生徒的にはいろいろな理由があるみたいなんですが、結論をいうと、「やっぱりダメなものはダメです!」(きっぱり) 入試現代文という狭い範囲だけで考えても、具体例を使った設問は思った以上に多いので、読み飛ばすことを前提にする勉強の仕方はそもそもまちがっ

          「具体例」 国語教室1

          感染症に関わる3冊の小説 『ペスト』『ドゥームズデイ・ブック』『鏡は横にひび割れて』

          コロナ疲れしている人や、なんとなく鬱っぽい人は、この種の本は読まないほうがいいと思います。メンタルを保つということは、すごく大切ですからね。メンタルは大丈夫なので感染症に関わる本を読みたいという方に、メインストリームから1冊、エンターテイメントから2冊、いずれも外国文学を選びました。 アルベール・カミュ『ペスト』『ペスト』はあちこちで紹介されていますから、今さら紹介するのもどうかな、とも思ったんですけど、大学に入ったばかりのころ読んだ大量の本の中で、ひときわずしんときた小説

          感染症に関わる3冊の小説 『ペスト』『ドゥームズデイ・ブック』『鏡は横にひび割れて』

          文体の変遷は面白いのでござる篇 斉藤美奈子『文章読本さん江』

          刮目の「ござる」体! 脅威の「かった」体! 驚天動地の「33式仮名遣い」! いやあ、もう大変面白いのでござった。何が面白いかというて、明治期、西周は来るべき日本の新しい言語に「ござる体」こそふさわしいと提言しているのでござる。もし、この進言が通っておれば、水谷も君たちも「ござる」体で文章を書かねばならんかったのでござる。 そもそも、明治期、日本語はどっちに転ぶか分からない、小麦粘土みたいにたいそう可塑的なものでござった。たとえば『小公子』の翻訳に、「セドリックは分かりま

          文体の変遷は面白いのでござる篇 斉藤美奈子『文章読本さん江』

          本日のおすすめ本 内田樹『下流志向』

          今日はちょっと硬めの評論をおすすめ。 札幌予備学院時代(予備校業界のジュラ紀ともいう)、この本を模試に使ったことがあります。 ちなみに使ったのは、小さいときから消費行動にならされた人は、本来等価交換の原則が成立しない労働においても等価交換を求めるため、仕事のきつさのわりに給料が不当に安いと感じられる、という部分。 アニメの『鋼の錬金術師』をみていた人なら、あまり苦戦はしなかったと思う(苦笑)。 労働において等価交換は成り立たない。私たちは、お時給だの、月々の給料だの、

          本日のおすすめ本 内田樹『下流志向』

          本日のおすすめ本 森見登美彦『【新釈】走れメロス』

          「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」をそれぞれパロディにしているのですが、いやあ、笑ってしまった。とりわけ「走れメロス」のラストは百%全開の笑いです。 パロディを楽しもう 森見登美彦『【新釈】走れメロス』 昔、北大に恵迪寮というのがございまして、今も一応存在はしておりますが、あれは建て替えられたものなので、本物の恵迪寮とは申せません。本物の恵迪寮は、女人禁制というわけではないものの、女子は玄関からちょっと中をのぞいただけで、怖気をふるって逃げ出

          本日のおすすめ本 森見登美彦『【新釈】走れメロス』