文体の変遷は面白いのでござる篇 斉藤美奈子『文章読本さん江』

刮目の「ござる」体!
脅威の「かった」体!
驚天動地の「33式仮名遣い」!


いやあ、もう大変面白いのでござった。何が面白いかというて、明治期、西周は来るべき日本の新しい言語に「ござる体」こそふさわしいと提言しているのでござる。もし、この進言が通っておれば、水谷も君たちも「ござる」体で文章を書かねばならんかったのでござる。

そもそも、明治期、日本語はどっちに転ぶか分からない、小麦粘土みたいにたいそう可塑的なものでござった。たとえば『小公子』の翻訳に、「セドリックは分かりませんかッた」などという変態的な文章が平気で出てきたりもするのでござるが、そんな日本語、それこそ、「知りませんかッた」でござろう。

もっと恐ろしいのは、危うく小学校の教科書に33式仮名遣いが採用されそうになったことでござる。別名「棒引き仮名遣い」とも言うのでござるが、それを実践すると、「私にわ、そーゆー文章お、書くことができません」とゆーよーな文章になる。見ているだけで鳥肌が立つよーな文章だが、もしこれが採用されていたら、みんなで「こーゆー差異わ、過剰であるがゆえに広告とゆーものを価値付けるのである」とゆー文章を勉強することになっていたのでござった。

あ、本の内容紹介になってませんね。ま、そーゆーこともあるか。


註:
西周(にしあまね)日本史で習うことになる。「さいしゅう」とか「にしまわり」とか読まないように。
可塑的(かそてき)形を変えることができるさま。(わからない言葉が出てきたら辞書を引くように! わからないことを自分で調べる能力は尊い)

付記:個人の好みで作品を選んでいます。また、下記から購入する必要はまったくありません。図書館が再開されたら、たぶん図書館でも読めます。

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