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犬と猫に学ぶ「人の惚れさせ方」|言語が話せないときのコミュニケーションの極意

僕がよく読むけんすうさんの記事で、この本がよく引用されていて、ずっと気になっていたと、Kindle Unlimitedで読めるというのが発覚したのが引き金になり、この本に手を伸ばすことになった。(電子書籍なので厳密には指を伸ばすことになったと言うべきか)

この本は『夢を叶えるゾウ』の著者としても有名な水野敬也さんが書かれた恋愛に関する本で、モテない男がどうすればトムクルーズになれるか(理想の女性を落とせるようなモテる男になれるか)を書いた本である。

中学高校を男子校で過ごし、モテない男として過ごした著者が、モテたい一心で研究に研究を重ねて編み出した理論がたくさん書かれている。

その口調が斬新で面白く、僕は声を出して笑いながら読んでしまうほど好きで、夢を叶えるゾウのガネーシャを思い出す口調も相まって、どこか親しみやすさも感じながら読み進めることができた。

 このページを開いたということは、今、まさに迫りくるクリスマスを彼女ナシで過ごすことが確定しているということだな?そんなお前に、まずはこの言葉を贈ろう。

 死になさい

 お前、今まで何やっとった? お前が今手にしている本書には、理想の女を手に入れるための完璧な道筋が示されている。これを熟読し実践したならばクリスマスを一人で過ごすなどというバカげた状況が起こり得るはずがない。今すぐ腹を切れ!腹を切って、俺に詫びよ!

水野敬也『LOVE理論』(文響社、2013年)

読者のターゲットを「モテない男」に設定し、その上で読者を「お前」呼ばわりしている。さらにキャラ設定とが抜群にマッチしていて、この本の魅力を存分に引き出している。文章を書く人間としてこの文章設計はとても参考になった。




本というのは読んで、「ほう、ほう」とうなづいているだけでは意味がない。趣味としての読書だとしても、何かの向上を目的とした読書だとしても同じだ。

その本を読んでなにか実行に移すのが大事だ。もちろん、それだけが全てではない。知ること自体に大きな価値はある。

ただ、その本を読んで「自分はどう思ったのか」という意見を持つことはとても大事なことである。読んだ本に賛同するのか、それとも違う意見を持つのか。何か一つでもいい。一つでもあれば大きな収穫だ。

ということで、この本を読んで一つ自分が思う意見を書いていきたい。





社会で生きていく以上、人との関わりを絶って生きていくのは難しい。人間が1人で生きていくことができるのであれば、とっくに僕らの祖先はそうしていただろう。

上記の記事で、サッカー選手として活躍していくのに「社会性」が必要だと僕がドイツでサッカーする中で感じていることを書いた。

社会性とは人との関わり方であり、コミュニケーションであるのだが、根本的には「いかに人を惚れさせるか」である。『LOVE理論』には主に男性が女性を惚れさせるにはどうすればいいかが書かれていたが、性別に関わらず共通する大事なことも書かれていた。

 犬と猫はコミュニケーションの天才である。実際、犬と猫を飼ってみると分かるのだが、あいつらは全然働かない。ニートである。にもかかわらずきっちり三度の飯にありついているし、死んだ場合は葬式を出してもらうことすらある。ではなぜ犬や猫はこれほどまでに人間に愛されるのだろうか?

水野敬也『LOVE理論』(文響社、2013年)

たしかに犬や猫は言語を離さないのに関わらず人間とコミュニケーションをとり、人を虜にする。彼らから学べることはたしかにたくさんありそうだ。

これに関する著者の分析を以下、要約すると

・犬は明らかに無駄な動きが多く、無駄にカロリーを消費しており、この無駄さこそが相手のハートを打っている
・「お手」や「おすわり」などを筆頭に、相手の言いなりになることで相手に優越感を与えることができる
・相手に手間をかけることで「この人、私がついていなきゃダメね」と思わせることができる
・犬は視力が悪くその代わり嗅覚に優れているため、見知らぬ人にも警戒せずに無防備に寄っていく
・どんなに美しい犬でも犬は後ろからみれば「アナル丸出し」でこれが隙と捉えられ優越感をくすぐっている
・猫は人間の言うことを全く聞かず、わがままであり、自分の欲望に素直に本音を表に出すのが上手
・猫は馬鹿なところが可愛がられる秘訣
・猫はいつも体を舐めて清潔に保っている

著者のキャラ設定もあり、ふざけた文章での記述ではあったが、意外と本質を掴んでいる。

僕も初めはドイツ語が話せない中でドイツ人と仲良くならないといけない状況を経験し、外国人と仲良くなりコミュニケーションをとる上では、こうした犬や猫の習性はとても参考になるのは間違いないと感じる。






最後に、僕がこの本で好きだった、参考になった文章をいくつか紹介して終わりにする。

 一八五三年、江戸湾浦賀に黒船が来航した。ペリーの来航である。この事件をきっかけに二〇〇年以上続いた鎖国は解かれ、日本は新たな世界に踏み出した。これと同様に、幻想という名の鎖に二〇年近く縛られた俺を、小野のぶつぶつだらけの真っ黒な乳首が──黒船乳首が──現実に解き放ってくれたのだ。そんな彼女に感謝の意をこめて、毎年、俺が童貞を捨てた六月二二日は、あえて、小野をオカズに昇天することを自分に課している。ブサイクだろうが何だろうが、とにかくセックスをせよ。そして、お前が今まで抱いてきた性の妄想を現実においてトライし、そのすべてに絶望せよ。

水野敬也『LOVE理論』(文響社、2013年)

 つまり、「ロマンチスト」と「コンプレックス」は表裏一体であり、現実の自分と理想の自分とのギャップに苦しんでいる状態だと言えるだろう。だからこそ、劣等感の悩みに答える心理学書などでは「ありのままの自分(現実の自分)を受け入れなさい」 みたいなことが言われる。そんな心理学書は今すぐブックオフに叩き売れ。ありのままの自分を受け入れるというのはようするに「妥協する」ということだ。そんなもん受け入れる暇があったら、ひたすら努力して理想の自分になってしまえばいい。

水野敬也『LOVE理論』(文響社、2013年)

 今からお前たちに教える理論、「 DK心変わりの理論」の発見こそが、まさに俺の恋愛人生におけるコペルニクス的転回点であり、また、この理論を知ることで、お前たちの恋愛観は根底から覆ることになるだろう。

水野敬也『LOVE理論』(文響社、2013年)


ではまた。


プロフィール
1999年生まれ。東京都出身。大学を中退後、20歳で渡独するもコロナで帰国。鎌倉インターナショナルFCでプレー後、23歳で再び渡独。渡独直後のクラウドファンディングで106人から70万円近くの支援を集め、現在、プロを目指しドイツ5部でプレーするサッカー選手。好きなテレビ番組は『家、ついて行ってイイですか?』『探偵!ナイトスクープ』

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