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酒屋アトツギが起こす瀬戸内スタートアップの波

挑戦を支える全国各地の皆様に光を当てるSupporter Interview。今回のインタビュー対象は岡山県にて酒屋アトツギとして新規事業を手掛けつつ、瀬戸内のスタートアップを盛り上げるべくファンドを立ち上げた藤田 圭一郎さん。挑戦を重ねる想いについて伺いました。


── 藤田さんの現在の取り組みについてお聞かせください。

色々なことに取り組んでいるんですが、特に今、力を入れているのは地域に特化したベンチャーキャピタルSetouchiStartupsです。


── 地域特化型VC。

その名の通り瀬戸内エリアに特化したシード領域のVCファンドです。投資方針は瀬戸内のスタートアップを盛り上げること。なので瀬戸内エリアで事業を展開しているとか、出身が中四国エリアとか、そういった事業が対象になります。


── 藤田さんは確か、酒屋のアトツギですよね?どうして酒屋もアトツギも関係ないスタートアップのVCを始めようと思ったのですか?

岡山を中心にStartupWeekend(以下SW)を皮切りに、瀬戸内エリアを盛り上げようとスタートアップ関連のイベントを開催し続けていたんですね。そうしているうちに機運が高まってきて、気付けば行政と一緒にスタートアップ支援拠点も運営するようになって、色々と起業の環境が整って来た中で、瀬戸内にはシード期の資金調達環境が整っていないことを課題に感じるようになりました。

瀬戸内エリアを盛り上げるべく開催されたSW岡山の様子


── 次のステップへと繋げるリスクマネー供給の必要性に気付かれたわけですね。実際に作ってみて如何でしょうか?

大変ですね(笑)ただ、やっぱり「ある」と「ない」とでは随分と環境は大きく変わったと感じています。


── 環境が大きく変わった。

まずスタートアップに関する情報量が増えました。次に、スタートアップに関わってくださる人の幅が増えました。スタートアップに投資をしていこう、瀬戸内エリアとして育てていこうという機運が益々高まったと感じています。やっぱり大変なんですが、見切り発車でやって良かったなと思っています。


── 「大変」という言葉を深掘りさせてください(笑)

SetouchiStartupsは僕と相方の山田との二人で立ち上げました。タクトさんご存じの通り、僕はそもそもスタートアップが好きな酒屋のアトツギで、二人ともベンチャーキャピタルでの勤務実績もなく、投資経験もないんです。


── 未経験からのないない尽くし。

それもあって、お金を集めることも大変でした。ファンド組成に当たっては金銭的なリターンや中長期の戦略については一切語らず、もうひたすら想いベースで共感してくださる方を探しました。「僕たちがリスクマネーを地域に供給することで、瀬戸内エリアがもっともっと盛り上がっていくんです!」と熱弁を振るい続けたんです(笑)

瀬戸内エリアを盛り上げるべくファンドを立ち上げた藤田さん


── 熱意だけで突破されたんですね(笑)

そうですね。瀬戸内にゆかりのある投資家の皆様と一緒にお酒を飲みながらお願いして周りました(笑)ただ実はファンドの規模が小さくて、運営報酬を自分たち共同代表にはほとんど支払えていないです。なので、実は兼業でファンドを担ってるんです(笑)


── 兼業ファンドとは新しい。副業兼業の波はファンドにまで到来ですね(笑)

お金を預ける側からすると「ほんとに大丈夫なの?」ってツッコミたくなっちゃいますよね。「大丈夫です!」と胸を張って答えられるよう、兼業で大変な中でも取り組みを進めていきます。


── ちなみにそんな藤田さんが取り組んでいらっしゃる他の「兼業」とはなんでしょうか?

一つは家業ですね。繁華街の真ん中にある町の便利な酒屋として、飲食店からBARやスナックや居酒屋まで必ず24時までのご注文であればお届けさせていただいています。


── ファンドとのGAPが大き過ぎますね(笑)

スタートアップとの絡みでお伝えさせていただくと、家業はこれまでのお酒の卸だけでなく新規事業にも挑戦しています。例えばC向けにはスマホでお酒のオリジナルラベルをデザインしてギフトに出来るサービスであったり、B向けには飲食店のホームページ製作などITを活用した業務改善を手掛けています。

新規事業として立ち上げたお酒のオリジナルラベルをデザインしてギフトに出来るサービス


── それらの事業はコロナの影響でスタートされたものでしょうか?

全く関係なく僕が勝手に始めていたんです(笑)新規事業をやっていたおかげでピンチをチャンスに変えて無事に乗り切ることが出来ました。


── 先程「一つは」と仰いましたが、他にも手掛けられていらっしゃいますか?

もう一つは学生の長期実践型インターン事業となります。これは都市と地方を少しでもフラットにしたいと思って始めたものです。


── 都市と地方の機会格差の解消。

一番最初の始まりはSWのようなコミュニティの中での学生と企業の出会いでした。意識の高い学生たちが遊びにやってきて、そこでスタートアップと出会って長期インターンを始める、といった具合に。けれども調べてみると、長期インターンのほとんどは都市に一極集中していたんです。そこで、ただ地方に住んでいるだけで機会がないという状況を打破したいと思ってスタートさせました。


── 支援としての事業。

もちろん学生だけでなく、これは地方で新卒採用に困っていらっしゃる企業のためのものでもあります。家族経営の酒屋にいい人材なんて来ないと思うじゃないですか。けれども長期インターンを募集すると、マーケティングから広告運用まで、優秀な学生たちが来てくれるんです。採用ブランドがなくても新卒採用に貢献できるのが長期インターンとより多くの地域企業の皆様に気付いていただければいいなと思っています。


── 誰もがWIN-WINの事業ですね。

地域での長期インターンを通じて地域学生が成長機会を得て、学生起業家の誕生にも繋がるんじゃないかとも思っています。

学生に地域での長期インターンの機会を提供される藤田さん


── ファンドに家業の新規事業に学生の長期インターンと、一貫して藤田さんの取り組みは「アントレプレナーシップ」がキーワードになっていらっしゃいますね。そのモチベーションはどちらから湧いていらっしゃいますか?

起業家という人種が好き、というところに尽きますね(笑)夢を持っていてポジティブ。彼らと一緒にいると心の底から元気を貰える。そんな起業家と美味い酒を飲み続けることが僕の人生の目標なんです(笑)


── 全てはお酒のため(笑)

実はそうなんです(笑)10年後も起業家と一緒に飲んでいたいというのが人生の目標です。そのために自分が出来るアクションはなんだろうって考えた時に、自分自身も起業家の成長に合わせて挑戦し続けなくちゃいけないって思ったんです。


── 起業家に合わせて挑戦。

周りの起業家は凄いスピードで成長していくので、気付けば自分の手が届かない存在になる。それはとても素晴らしいことです。けれどもそうなってしまうと僕は一緒にお酒を楽しめない(笑)だからこそ、相手にとって一緒にお酒を飲む価値のある自分でい続ける必要があると考えています。今の僕の挑戦は全て、美味い酒を飲むための戦術ですね(笑)


── 藤田さんにとっての豊かな人生を送るためのファクターがアントレプレナーシップとは圧巻です。ちなみにそんな風に藤田さんが挑戦を重ねられることで、周りにコミュニティが育ってきていることかと思います。コミュニティを育てる鍵はなんだと思われますか?

地域のスタートアップコミュニティに関して言うと、これをやったら大きく育つよ!というマストアイテムは特にないんじゃないかと思うんです。ただ強いて挙げるなら、岡山においては第一回のSW岡山を通じてお呼びするコーチ・審査員の皆様を地場に関連する方々を中心にしたことが大きかったと思っています。

地場に関連する方々を巻き込んで初開催したSW岡山(2017年)


── 地場に関連する方々。

例えば瀬戸内で活躍している先輩起業家や、岡山にゆかりのある投資家の方といった風に、縁をお持ちの皆様です。やっぱりみんな、スタートアップの文化が都市部にしかないことをどこか寂しいと感じていたようです。そのような皆様に継続的に関わって頂ける機会を作ることで、よりコミュニティが大きく育ったんじゃないかと感じています。


── そんなコミュニティのリーダーとして活躍する藤田さんは、何を心掛けてコミュニティを運営されてきましたか?

自分が楽しいと思ったことしかやらなかった、ということが大きいですね(笑)タクトさんもご存じかと思いますが、コミュニティ運営って割に合わなくないですか?(笑)


── いつか何かの形で自分に返ってくるとは思うものの、それがいつなのか、どんな形で戻ってくるかは予測できない。コミュニティを通じたリターンって本当に見え辛いですね(笑)

儲け度外視だからこそ、純粋に心の声に従う人だけがコミュニティには集っていて、熱狂的なモチベーションが満ち溢れているとも感じています。「やりたいことだけを楽しみながら本気でやる」そんな割り切りが熱量維持に一役買っているんだと思います。


── そんな熱に満ちたコミュニティは、いったいどんな価値を持っていると藤田さんは考えられますか?

熱量と視座の二つじゃないでしょうか。


── 熱量からお伺いさせてください。

人の熱意や情熱って、物理的に伝播するって僕は感じているんです。SWに参加された皆様はご存じかと思うんですが、熱量が圧倒的ですよね(笑)こいつが頑張っているんだから、自分も頑張ろう。あいつも出来ているなら、きっと自分も出来るハズだって、自然と熱が高まっていく(笑)

藤田さんの熱を受け、私もできるハズだと立ち上がったSW福山(2020年)


── プレッシャーの伝播でもありますね(笑)視座はどういったニュアンスでしょうか?

そんな風に暑苦しい仲間たちや、先輩として活躍する方々の姿をみて、こんな風に取り組めるんだ、こんな風に考えられるんだ、と新しい気付きや学びが得られることですね。自分一人では見えなかった景色がイメージ出来るようになることも、コミュニティの価値としてあると思うんです。


── そんなコミュニティの中でアイデアをカタチにする旅路を歩まれる皆様は、何を心掛けるべきでしょうか?

続きは下記よりお読みください。


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