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再現性のない実績

「営業力が強い、というか、社員全員が起業できるくらい優秀って聞いていた大手企業から二人を採用したんだけど、二人とも全然営業で成果が出なくて(苦笑)」という話を、とある東京都のスタートアップ支援施設で耳にすることに。

 どうしてそんなことが起こってしまうのか、その愚痴をこぼした代表と少し語り合った結果、大きく分けて三つのパターンが考えられるのではないか、という仮説が浮かび上がってきた。今回はそれを共有していこう。

 一つ目の理由は、彼/彼女自身ではなく、その大手企業のブランドが顧客の意思決定に強く影響していた可能性。当人としては「商談に挑んで顧客から決裁をいただけた!」と思っていたとしても、実際には「大手企業の○○だから」という安心感や信頼感が顧客の最終決裁において重要な役割を果たしていたかもしれない。

 例えば、ミカンジュース会社で営業トップだと自負していた若手がいたとしても、顧客側が「和歌山県のミカン果樹園さんなら安心できる」という信頼に基づいて稟議を通していた可能性。この場合、担当者が誰であろうと、ブランドの力が顧客の判断を後押ししていた、ということになる。

 二つ目の理由は、彼/彼女自身ではなく、上司が顧客の意思決定に関与していた可能性。当人は「自分が商談を成功させた!」と思っていても、実はその上司が既に顧客の役員クラスと繋がっていて、商談が始まる前に勝負が決まっていた、というシナリオ。

 例えば、ミカンジュース会社で営業トップだと自負していた若手がいたとしても、実際はその上司が事前に顧客と関係を築いており、オレンジジュースやアップルジュースといった選択肢は最初から消されていた、いわば「出来レース」だったというもの。

 三つ目の理由は、彼/彼女自身ではなく、会社全体で共有されていた「勝ちパターン」に依存していた可能性。当人は「自分の商談で顧客から決裁を取れた!」と思っていても、実際には他の営業担当者や先輩が作り上げた成功事例や会社全体で練り上げた資料が大きな影響を与えていたかもしれない。

 例えば、ミカンジュース会社で営業トップだと自負していた若手がいたとしても、商談で使用したスライドやQ&Aの対応は全て先輩や同僚から譲り受けたものであり、自分では試行錯誤せずに完コピしていただけだった、というケース。

 ブランド、上司、そして組織の知見共有といったものが営業成績に影響を与えるものだからこそ、営業で結果を出した、トップ営業だった、という言葉は掘り下げて確認していこう。これから営業担当を採用される皆様の一助となりますように。

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