内原 拓宗

内原 拓宗

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きょうの素問 瘧論篇 第三十五(6) 2024/3/7

瘧論篇も6回目、今回で篇の最後になります。 多くの文字数を使って、「瘧」の病態生理を丁寧に見てきましたが、内容が妥当かどうかよりも、「当時」の最新知識や知見を総動員して、熱が上がったり下がったりする不思議な病態を何とか説明しようとしている、その試み事態が私にはとても興味深く感じました。 上の画像で表現したかったのは、最初は陰陽(表裏)をベースに、陽気(衛気)と邪がぶつかるところから、熱が生じる、というシンプルな見方が、邪気の侵入する深さと、陽気と陰気の逆流によって、熱が出た

    • きょうの素問 瘧論篇 第三十五(5) 2024/2/29

      瘧論篇の5回目です。 前回は瘧に対する治療法の概要(虚実補瀉)を見てきましたが、今回は更に具体的な治療の内容に踏み込んでいきます。「刺絡」鍼法にとっても重要な記述がありますので、しっかりと見ていきましょう。 帝曰 善 攻之柰何 早晏何如 (帝曰く、善し。これを攻むることいかん。早晏いかん。) ※ 早晏 「晏」は女性をなだめて、家に落ち着かせることを示す。または日が低くおちかかるさま。おそい、やすらかの意味を持つ。 「早晏」は、はやいかおそいか。 但し、この後の記述は発作が

      • きょうの素問 瘧論篇 第三十五(4) 2024/2/22

        瘧論篇の4回目です。 これまで、「瘧」の特徴的な病態がどのように形成されいるのかについての考察が行われてきましたが、今回はそれを受けて、ではどのように治療したら良いのかについて述べられています。 さっそく読んでいきましょう。 帝曰 夫經言有餘者寫之 不足者補之 今熱為有餘 寒為不足 夫瘧者之寒 湯火不能溫也 及其熱 冰水不能寒也 此皆有餘不足之類 當此之時 良工不能止 必須其自衰 乃刺之 其故何也 願聞其說 (帝曰く、夫れ經に言う、有餘なる者はこれを寫し、不足なる者はこれを

        • きょうの素問 瘧論篇 第三十五(3) 2024/2/15

          瘧論篇の3回目です。 熱が出たり、引っ込んだりする「瘧」の病態がどうしてできるのかについてさらに黄帝と岐伯が議論を深めていきます。 考えてみますと、顕微鏡も無いし、免疫学説も全くない2000年もの昔に、「間欠熱」という病態を説明する、というのはかなり困難な作業ではないでしょうか。その困難さに正面から取り組んだ当時の臨床家や医学者に想いを馳せながら読んで頂ければと思います。 帝曰 夫子言衛氣每至於風府 腠理乃發 發則邪氣入 入則病作 今衛氣日下一節 其氣之發也不當風府 其日作

        きょうの素問 瘧論篇 第三十五(6) 2024/3/7

          きょうの素問 瘧論篇 第三十五(2) 2024/2/8

          瘧論篇の2回目です。 前回は瘧の病態が、どうして間欠熱のような、発熱と平熱を繰り返すのか、その仕組みについての考察の部分でした。 確かに、通常の病気であれば、発症初期から症状は徐々に重くなり、そのまま悪化して死を迎えるか、あるいは症状のピークを過ぎた後徐々に回復して良くなる、という経過をたどるはずですが、瘧の場合、短期間のうちに、発熱と平熱を繰り返すという点で特徴的であり、どうしてそうなるのか、という考察の対象になったことが伺われます。 今回はその点を黄帝がさらに詳しく岐伯に

          きょうの素問 瘧論篇 第三十五(2) 2024/2/8

          きょうの素問 瘧論篇 第三十五(1) 2024/2/1

          瘧(ギャク、おこり)について詳しく論じている篇です。 病だれの中にある「虐」の字は上側が「虎」で下の「E」の部分は爪でひっかくのを表しており、虎が人を爪でひっかくさまが転じて、「ひどい、はげしい」の意味を持つようになったそうです。そこから、激しい症状が出るやまい、今でいう所の「マラリア」(およびその類似疾患)を指しているものと思われます。 古代の人がこの病をどのように論じているか、さっそく読んでいきましょう。 ※ 瘧 間歇性の悪寒戦慄、高熱、出汗を特徴とする疾病。古人はこの

          きょうの素問 瘧論篇 第三十五(1) 2024/2/1

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(8) 2024/1/25

          長かった玉機真蔵論も8回目にしてようやく最後になりました。 今回は、病の予後、時節に応じない脈象、虚実の不一致といったてーまについて論述されています。 それでは見ていきましょう。 黃帝曰 凡治病 察其形氣色澤 脈之盛衰 病之新故 乃治之無後其時 形氣相得 謂之可治 (黃帝曰く、凡そ病を治するに、其の形氣色澤、脈の盛衰、病の新故を察して、乃ちこれを治せば、其の時に後るることなし。形と氣と相い得る、これを治すべしと謂う。) ※ 形氣色澤 脈之盛衰 病之新故 病気の予後を診るた

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(8) 2024/1/25

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(7) 2024/1/18

          なかなか終わらない玉機真蔵論ですが、今回で7回目です。 ヘッダの写真があるときは私が発表を担当している回ですが、ない時は医師の先生に講義をして頂いている会で、私も勉強させて頂いております。 というわけで、今回は勉強させて頂いた内容をまとめている回です。 それでは読んでいきましょう。 真肝脈至 中外急 如循刀刃責責然 如按琴瑟弦 色青白不澤 毛折 乃死 (真肝脈至ること、中外急に、刀刃を循づるが如く責責然として、琴瑟の弦を按ずるが如く、色、青白にして澤しからず、毛折るるは乃ち

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(7) 2024/1/18

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(6) 2024/1/11

          早いもので、年明け2回目の投稿となりました。 今回も玉機真蔵論を読んでいきます。 さて、前回は病が五臓間を伝変するには様々なパターンがある、ということが述べられていましたが、それを受けてこの段落は、具体的な病証・病態に落とし込んで、病の伝変を確認しなおしているような感じがします。 恐らく、ある一つのパターンに着目して、その伝わり方の例を示していると思われるのですが、なぜか五臓配当については全く伏せられています。 後世の人に、これが分るかな?と挑戦を突き付けている感じもしますが

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(6) 2024/1/11

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(5) 2024/1/4

          玉機真蔵論篇の五回目です。 年をまたいでしまいましたが、まだしばらく続くので、この長い篇を着実に読んでいきましょう。 是故風者百病之長也 今風寒客於人 使人毫毛畢直 皮膚閉而為熱 當是之時 可汗而發也 (是の故に風なる者は百病の長なり。今、風寒、人に客すれば、人をして毫毛ことごとく直ち、皮膚閉じて熱をなさしむ。是の時に當りて、汗して發すべきなり。) ※ 風者百病之長 王冰の解説。 「風が百病の病因の第一に列せられることをいう。」 六淫(風火暑湿燥寒)の筆頭が風。 『素問

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(5) 2024/1/4

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(4) 2023/12/21

          年内最後の「きょうの素問」になります。 玉機真蔵論篇の4回目。 今回は「病の伝変」がテーマになります。 さっそく読んでいきましょう。 五藏受氣於其所生 傳之於其所勝 氣舍於其所生 死於其所不勝 病之且死 必先傳行至其所不勝 病乃死 此言氣之逆行也 故死 (五藏は氣を其の生ずる所に受け、これを其の勝つ所に傳う。氣は其の生ずる所に舍り、其の勝たざる所に死す。 病の且に死せんとするや、必ず先ず傳え行きて、其の勝たざる所に至りて、病乃ち死す。此れ氣の逆行を言うなり。故に死す。)

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(4) 2023/12/21

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(3) 2023/12/14

          早いもので、12月も真ん中に近づきました。 そして、玉機真蔵論も3回目となります。 今回、この篇の名前の由来となった部分が華々しく登場しますので、ご期待ください。 それでは読んでいきましょう。 帝曰 四時之序 逆從之變異也 然脾脈獨何主 (帝曰く、四時の序、逆從の變異なり。然して脾の脈獨り何れをか主どる。) ※ 四時之序 前段までで述べてきた季節(四季)に応じた脈のこと。 ※ 逆從之變異 季節に応じていない病的な状態の脈。「逆從」としているが、前段までの内容からすれば「

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(3) 2023/12/14

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(2) 2023/12/7

          玉機真蔵論の2回目です。前回は四時の脈と、病的な脈(太過、不及)と、その症状のうち、春と夏について読みました。 今回はその続きで、秋と冬の脈について見ていきます。 帝曰 善 秋脈如浮 何如而浮 (帝曰く善し。秋の脈は浮の如し。何如なれば浮なるや。) ※ 浮 『説文解字』では「氾(うか)ぶなり」または「濫(はびこ)るなり」とあって、氾濫するの意味があるが、浮漂や浮流のように、水上で漂い流れることをいう。 右側の「孚」は、『易経』坎為水の卦辞「習坎 有孚 維心亨」にあるように

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(2) 2023/12/7

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(1) 2023/11/30

          今回から、玉機真蔵論を読んでいきます。 この篇のタイトルについて、張景岳は「玉機とは璇璣玉衡(渾天儀)であって、これによって天道を窺うことができるが、(同様に)この篇のすぐれた理論からは人道を窺うことができる。したがって、玉機と真蔵とを並べ称したわけで、その真意は真蔵脈を重要視することを表しているのである」と解説しています。 今までになく長い篇なので、前後の文脈に注意しながら読んでいきたいと思います。それでは、本文を見ていきましょう。 黃帝問曰 春脈如弦 何如而弦 (黃帝問

          きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(1) 2023/11/30

          きょうの素問 診要經終論篇 第十六(3) 2023/11/16

          診要經終論の3回目です。 今回は急に話が変わって、「十二経脈を流れる脈気が尽きたらどうなるか」の話です。今までの話の流れはどこへ行った。(笑) では、気を取り直してみていきましょう。 今回は様々な病態を表す表現が出てきますが、『素問』や『霊枢』などの他の篇でどのように取り上げられているかを主に見ていきます。 帝曰 願聞十二經脈之終 奈何 (帝曰く、願わくは十二經脈の終わるやいかなるかを聞かん。) ※ 終 『説文解字』では「きゅうしなり」とあり、糸を締める、末端を結んで終結

          きょうの素問 診要經終論篇 第十六(3) 2023/11/16

          きょうの素問 診要經終論篇 第十六(2) 2023/11/9

          診要經終論篇の2回目です。 今回は、四時(季節)に応じない刺入深度で施術してしまった時の誤治について主に論じている部分を読んでいきます。 まず、前回論じられた四季に応じた刺入深度(部位)についての確認です。 春:散兪(経脈の兪)と分里(分肉の腠理)を刺す 夏:絡兪を刺す 秋:皮膚や循理(肌肉の分理)を刺す 冬:兪竅を分理に刺す これを仮に浅いところから深いところまで並べ変えてみます。 秋(金・肺):皮膚や循理(肌肉の分理)を刺す 夏(火・心):絡兪を刺す 春(木・肝):

          きょうの素問 診要經終論篇 第十六(2) 2023/11/9