きょうの素問 玉機真蔵論篇 第十九(5) 2024/1/4

玉機真蔵論篇の五回目です。
年をまたいでしまいましたが、まだしばらく続くので、この長い篇を着実に読んでいきましょう。


是故風者百病之長也 今風寒客於人 使人毫毛畢直
皮膚閉而為熱 當是之時 可汗而發也
(是の故に風なる者は百病の長なり。今、風寒、人に客すれば、人をして毫毛ことごとく直ち、皮膚閉じて熱をなさしむ。是の時に當りて、汗して發すべきなり。)

※ 風者百病之長
王冰の解説。
「風が百病の病因の第一に列せられることをいう。」
六淫(風火暑湿燥寒)の筆頭が風。

『素問』風論篇
風中五藏六府之俞亦為藏府之風 各入其門戶所中 則為偏風
風氣循風府而上 則為腦風
風入係頭 則為目風眼寒
飲酒中風 則為漏風
入房汗出中風 則為內風
新沐中風 則為首風
久風入中 則為腸風飱泄
外在腠理 則為泄風
故風者 百病之長也

『素問』骨空論篇
黃帝問曰 余聞風者百病之始也 以鍼治之 柰何

『素問』生氣通天論
風者 百病之始也
清靜則肉腠閉拒 雖有大風苛毒 弗之能害 此因時之序也

『霊枢』五色
雷公曰 小子聞風者 百病之始也 厥逆者 寒濕之起也 別之奈何

※ 毫
長くとがっている細い毛。
細かい、わずかの意味もある。


或痺不仁腫痛 當是之時 可湯熨及火灸刺而去之
弗治 病入舍於肺 名曰肺痺
(或いは痺し、不仁し、腫痛す。是の時に當りて、湯熨及び火・灸刺してこれを去るべし。治せざれば、病入りて肺に舍る。名づけて肺痺と曰う。)

※ 湯熨及火灸
湯熨は熱湯もしくは薬物による温シップ。
火は抜火缶もしくは吸い玉療法。

※ 弗
もとる、おさめる、のぞく、憂う、ほのか、などの多様な意味があるが、
ここでは「あらず」の打消しの意味。「弗治」を「治せざれば」と読んでいる。

發欬上氣 弗治 肺即傳而行之肝 病名曰肝痺 一名曰厥
脇痛出食 當是之時 可按若刺耳
(欬を發し上氣す。治せざれば、肺即ち傳えてこれを肝に行る。病名づけて肝痺と曰い、一に名づけて厥と曰う。脇痛みて食を出だす。是の時に當りて、按じ若しくは刺すべきのみ。)

弗治 肝傳之脾 病名曰脾風 發癉 腹中熱 煩心出黃
當此之時 可按可藥可浴
(治せざれば、肝これを脾に傳つ。病名づけて脾風と曰う。癉を發し、腹中熱し、煩心して黃を出だす。此の時に當りて、按ずべく、藥すべく、浴すべし。)

※ 脾風 發癉
呉崑の解説。
「癉は熱中のことである。」
王冰の解説。
「肝気は風・木に応じており、相剋関係で考えれば脾土に勝ち、土は風の気を受ける。だから脾風というのである。思うに、風の気は肝と通じているので、(病が肝から脾に伝わったときの名として)風を用いたのである。脾が病むとよく黄癉となる。だから癉を発すというのである。」

弗治 脾傳之腎 病名曰疝瘕 少腹冤熱而痛 出白
一名曰蠱 當此之時 可按可藥
(治せざれば、脾これを腎に傳う。病名づけて疝瘕と曰う。少腹、冤熱して痛み、白を出す。一に名づけて蠱と曰う。此の時に當りて、按ずべく、藥すべし。)

※ 疝瘕
①風邪が熱と化して下焦に伝わり、湿と相結しておこるもの。
②風寒と腹内の気血が相結しておこるもの。

※ 冤熱
馬蒔の解説。「煩い悶えて熱を出す。」
つまり、高熱を出して煩悶している状態。

※ 出白
呉崑の解説。「白は淫濁である。」
痿論篇に「発」すると筋痿となりまた白淫となる」とあり、すなわち小便が白く濁ることをいう。

※ 蠱
呉崑の解説。
「病邪が体内深く侵入し、人の意志を喪失させることをいっているのであろうか。」
『周易』に山風蠱の卦がある。
蠱 剛上而柔下 巽而止 蠱
蠱 元亨 而天下治也
利涉大川 往有事也。
先甲三日 後甲三日 終則有始 天行也
(蠱は剛上りて、柔下る。巽(したが)いて止まるは蠱なり。
蠱は元いに亨りて、天下治まるなり。大川を涉るに利ろしとは、往きて事あるなり。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終れば始あり、天行なるなり。)

弗治 腎傳之心 病筋脈相引而急 病名曰瘛 當此之時
可灸可藥
(治せざれば、腎これを心に傳う。病筋脈、相い引きて急なり。病名づけて瘛と曰う。此の時に當りて、灸すべく、藥すべし。)

※ 瘛
丯(カイ)は骨片や木片に刻み目をつけた形。
刀で刻み目を入れること。
王冰の解説。
「心に至って氣極まるときは則ち是の如きなり。若しくは復た伝え行くこと当に下説の如くなるべし。」

弗治 滿十日 法當死 腎因傳之心 心即復反傳而行之肺發寒熱 法當三歲死 此病之次也
(治せざれば、十日に滿ちて法、當に死すべし。腎因りてこれを心に傳う。心即ち復た反りて傳えてこれを肺に行れば、寒熱を發す、法、當に三歲にして死すべし。此れ病の次なり。)

※ 三歳
滑寿の解説。
「三歳は三日とすべきである。」

然其卒發者 不必治於傳 或其傳化有不以次 不以次入者
憂恐悲喜怒 令不得以其次 故令人有大病矣
(然して其の卒に發する者は、必ずしも傳に治せず。或いは其の傳化、次を以てせざることあり。次を以て入らざる者は、憂・恐・悲・喜・怒、其の次を以てを得ざらしむ。故に人をして大病あらしむ。)

因而喜大虛則腎氣乘矣 怒則肝氣乘矣 悲則肺氣乘矣
恐則脾氣乘矣 憂則心氣乘矣 此其道也
(因りて喜びて大いに虛すれば、則ち腎氣乘ず。怒れば則ち肝氣乘ず。悲しめば則ち肺氣乘ず。恐るれば則ち脾氣乘ず。憂うれば則ち心氣乘ず。此れ其の道なり。)

故病有五 五五二十五變 及其傳化 傳 乘之名也
(故に病に五あり。五五二十五變、其の傳化に及ぶ。傳とは乘の名なり。)

病の伝わり方には様々なパターンがある、というまとめでこの段落が終わりました。
「玉機真蔵論」はまだまだ続きますが、今回はここまでとなります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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