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【睡眠こそ最強の解決策である】さあ、今日から7〜9時間睡眠を実践しよう。

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜なぜ、人間は眠るのか〜

原題は「WHY WE SLEEP」。
要するに本書は、人間はなぜ眠らなければならないのか、について科学的エビデンスを基にその重要性を説くものである。

テレビやネットで「睡眠」に関する様々な情報が飛び交うが、どれが本当でどれが間違いなのか、あまりにも多くの中から選択するのが難しい。
本書はそんな「睡眠」に関する真実と誤解を区別する基準となるだろう。
正直、本書で紹介されている事例は半分ぐらいが研究途中ではあるが、データとして睡眠不足の恐ろしさはあらゆる方面で確認出来る。

「恐ろしさ」と書いたが、本書で読む限り睡眠不足による弊害は軽く見れないものばかりだ。
仕事の効率や日常生活の判断力が失われるのはもちろんのこと、精神疾患や免疫力の低下も引き起こし、アルツハイマー病や糖尿病などの健康リスクを引き上げ、寿命にも大きく影響を与える。

逆に言えば、適切な睡眠が取れていれば、あらゆる病のリスクを軽減するし、記憶力や創造力、認知力などが向上してすべてのパフォーマンスが高まる。
まさに睡眠こそすべての解決策になる、のだそうだ。

脅迫されたような気持ちにもなるが、これを読めば、今日から7〜9時間睡眠を実践したくなること間違いなしだ。


〜適切な睡眠時間を習慣にしなければならない〜

とはいえ、多くの人が「睡眠を十分にとらなければ、認知能力や健康に悪い影響を与える」ということを、なんとなく理解しているだろうと思う。
僕も、同じような認識で睡眠を疎かにしているつもりは無く、この本を読む事で大きく考えが変わることはないだろうと思っていた。

しかし、本書で衝撃的な事実を知ることとなる。

「1日の睡眠不足の影響は1日では取り戻せない」

おそらく多くの人が「今日一日寝なくても、明日その分多く寝れば大丈夫」だとか「今週はあまり眠れる日が無かったから、休日にまとめて寝れば大丈夫」と考えているだろうが、実はこれが大きな間違いなのだという。

睡眠は単なる足し算引き算じゃない。
普段7時間寝ている人が、少し夜更かしして5時間しか寝なかった翌日に9時間寝たからリセット、というわけではない。
一回の睡眠不足による脳や免疫力への影響は1日たくさん寝たからといって、それだけでは元には戻らない。元の正常な状態に戻るまでは、部位によるが最低でも3日以上はかかる。
いわゆる「寝だめ」は無意味なのである。
日常的に適切な睡眠をとらなければ意味がないのである。


また、世の中には「睡眠時間が短くても大丈夫」という人がごまんといるが(そして、それを自慢げに話す)、それは誤りなのだということがわかる。
日常的に短時間睡眠の人は、恒常的に睡眠不足の状態であり、認知能力や判断力が下がった状態で定常化している。そして、自分が睡眠不足だということに気づいていないのだ。
ちなみに、本書では少しではあるがショートスリーパーについても言及している。
ショートスリーパーは生まれもった特性であり、後天的にショートスリーパーになるのは不可能である。そして、あなたがショートスリーパーである確率は雷が直撃する確率よりも低い。

総じて、本書では「成人は概ね7〜9時間の睡眠が必要であり、またそれを習慣とする必要がある」と述べている。


〜本書を悪用する人に注意〜

睡眠が何よりも重要であることは理解出来るし、人々の睡眠時間を増やす取り組みを国家レベルで行う必要があるという著者の主張にも賛成である。
本書の内容は広く人々に知られるべきだと思うし、睡眠の重要性を多くの人が理解すべきだろう。

しかしながら、巷ではまだまだ睡眠の重要性が認識されていないのも事実である。

そして、そんな中で本書を悪用する人もいる。
実は、僕がこの本を手にとった理由はその人が原因である。

その人は会社にやたらと遅刻してくる。そして、勤務時間中に居眠りをよくしている。
そして、それを指摘するたびにその人は「僕遺伝的に夜型なんで起きてられないんですよ」だとか「睡眠が取れないことで僕の仕事のパフォーマンス下がったらどうするんですか」だとか、いろいろと屁理屈を言ってくる(その人の仕事ぶりに関しては人によって評価が変わるのでなんとも言えないが、その人自身は自分がこの職場になくてはならない存在だと思っている)。おそらくだが、その人は本書(または、これに似た本)を読んで自分にとって都合の良いように知識を使っているのだと思われる。

たしかに、すべての人が適切な睡眠時間や活動時間をとるためには朝型夜型に合わせた勤務時間を企業が設定したり、社会全体の始業時間を変える必要はあるし、その重要性は高い。

ただ、現状はそうなっていない。

単純な話である。国民全体の慢性的な睡眠不足は社会で取り組むべき課題であるが、あなたの遅刻や居眠りを容認するものではない。

それを主張するなら、会社の制度を変えるように働きかければいい。というか、実際にフレックス制度が会社にあるのだからそれを使えばいいものの、面倒だからそれもやらない。

そうなるとその人に言えることは一つである。
「夜、早く寝ろ」


と、最後は愚痴のようになってしまったが、この手の社会の常識を覆そうとするような本が反響をよぶと、世の中や周りを変える努力はせずに自分の身勝手を正当化する盾として悪用するどうしようもない人が少なからず現れる。
「睡眠」は怠惰ではないが、周りに働きかけることをせず身勝手に振る舞うのは怠惰である。

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