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京都怪談商店代表、ホラープランナー・Cocoが綴る怖すぎる実話心霊譚『怪談怨霊館』著者コメント&収録話「足音」試し読み

書くインフルエンサーが語る戦慄の実話


あらすじ・内容

「後ろの正面だーあぁーれ」
暗い部屋で後ろにいたのは、赤黒いべっとりとした液体を纏わりつかせた、ぐずぐずの―― (「かごめ唄」より)

フォロワー20万人超のTikTokerが書き下ろす本当にあった怖すぎる心霊譚

怖い体験談を買い取る「京都怪談商店」などをプロデュースする、新進気鋭のホラープランナーCoco。怪談師としても活躍する彼女が極上の恐怖を求めて蒐集してきた怪談から選りすぐりを披露。
・エレベーターの中にいたはずの男の子はどこに?「見えるようになったきっかけ
・テレワークの中、物音を立てると隣室から壁を叩く音がするのだ
が…「おとなりさん
・子供の頃、とある神社で行うおまじないが流行ったのだが…「つくし様の願いごと
・屋根裏部屋で一人遊んでいたら見知らぬ子供たちに囲まれ…「かごめ唄
――など45話とライフワークでもある心霊スポット探訪から最ヤバな6か所をピックアップ収録。

著者コメント

 こんばんは、Cocoです。
 本書は、私が運営していた怪談専門店のお客様からいただいた体験談がほとんどを占めています。
 観光都市である「京都」に店舗を置いていたおかげもあってでしょうか。
 日本全国から様々な恐怖譚、怪異譚が続々と集まりました。
 そのなかから、私が特に印象に残ったもの、ゾクッと感じたものを厳選しています。
 体験者さんには若い方もいれば、ご高齢の方もいましたし、怖がりの方もいれば、怪談ジャンキーもいました。
 普段通りの日常が、なんの前触れもなく非日常へと変貌する、これは誰にでも起こりうる話なのです。
 ぜひ、物語の当事者になったつもりで、じっくり想像しながら読み進めてみてください。
 より一層、本書をお楽しみいただけることと思います。

Coco

試し読み1話

足音

 勤務中に間に合わなかった仕事を自宅へと持ち帰り、夜を徹して働いていた時のこと。
 作業に行き詰まったアダチさんは一息入れるべく、夜食を食べようと思い立った。
 昨今コンビニスイーツのレベルが格段に上がっているという話を聞き、気になっていた彼は、早速最寄りのコンビニへ足を運ぶことにした。
 寒い冬も終わり、少しずつ暖かくなってくる季節ではあったが、夜風はやはり少し肌寒い。それでも日頃の運動不足のことを考え、徒歩で向かっていた。家からコンビニまでは十分ほどの距離である。
 コンビニへ入り、スイーツコーナーを覗き込む。そこには和菓子から洋菓子まで多様なスイーツが棚いっぱいに並んでいた。その中から定番であろうロールケーキを一つ取り、甘いものと合うようにとブラックコーヒーも一緒にレジを通した。
 買い物を終えたアダチさんが、買ったばかりのスイーツを楽しみに家路を急いでいると……。
 ぺちゃ、ぺちゃ、ぺちゃ。
 アダチさんの背後を付いてくるように足音が聞こえてきた。それは、水気を含んでおり、素足のような音だったという。最初のうちは気にも留めていなかったのだが……。
 ぺちゃ、ぺちゃ、ぺちゃ、ぺちゃ、ぺちゃ、ぺちゃっ。
 コンビニから歩き始めて、もう五分以上経っているにもかかわらず、依然として足音は後ろから響いていた。
(後ろの奴、道いっしょすぎじゃね? てかそういえば、足音おかしいし)
 自分の後を付いてきていることを確信し、その行動や音を不審に思ったアダチさんは思い切って後ろを振り返った。
 そこには誰もいなかった。等間隔に設置された街灯が暗闇を明るく照らしている。壁際には打ち捨てられた自転車、電信柱に設置されたゴミ集積ネットの周りには空き缶やコンビニ弁当の空箱が散乱している。そして、片方だけになったボロボロの靴が転がっていた。
 瞬時に隠れられそうな場所はなかった。しかも、アダチさんは後ろにいる者に予測されないよう、あえて突然振り向いたのである。
 アダチさんは一気に背筋が冷たくなり、心臓の鼓動が高まっていくのを感じた。
 とうとうこの状況に耐えきれなくなった彼は、一目散に走って帰宅した。走っている間は必死だったからか、逃げ切れたからか、その足音は聞こえてこなかったという。
 息を切らしながら玄関扉を開け、急いで鍵を閉める。我が家に無事帰宅できたアダチさんが安心感からハァーという大きなため息をついた。その瞬間。
 ぺちゃ、こつっ。
 背後から、自分の存在感を誇示するかのような大きな足音が響いた。音からしてそいつはもう玄関に入ってきてしまっている。
 恐る恐る振り向くと、今入ってきた玄関扉が見えた。視線を下へ向けると──。
 そこには膝から下だけの足が二本立っていた。
 青白く血色の悪い色をしており、藍色の血管が浮き上がっている。片方は傷だらけの素足、片方は道端に捨てられていたあのボロボロの靴を履いていた。
 愕然とするアダチさんのすぐ真横をその足は通り過ぎ、リビングの方へ歩いて行った。
 足はそれっきり、一切行方知れずだという。

―了―

◎著者紹介

Coco (ここ)

京都府出身。「お化け屋敷 京都怨霊館」「怪談専門のお店 京都怪
談商店」代表。怪談師兼ホラープランナー。
TikTokのフォロワー数は21万人。SNSの総フォロワー数は30万人を超える。怪談最恐戦2019大阪予選に出場。

好評既刊

京都怪談 猿の聲

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