【小説】 夕闇に告ぐ 【ショートショート】
生まれたはずであるこの街の、少し駅から離れた踏切の向う側の景色を実は彼女はあまり良く知りませんでした。
見破られないように、見透かされないように。
群れを成す彼女らの話題に合わせて、さも楽しそうに、嬉しそうに、通ったことがあるかのように一緒になって雑貨屋の話で盛り上がっております。
「錆色の看板が渋くていいよね」なんて。
別の群れから聞きかじった情報で情景を思い描きながら。
今うまく笑えてたかな、ちゃんと目まで笑えていたかな。
と心の奥で無意識に舵を取りながら、です。
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